温泉クンの旅日記

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松江しんじ湖温泉(1)

2016-07-24 | 温泉エッセイ
  <鯛めしの老舗宿(1)>

「おはようございます!」
 一階でエレベーターの扉が開いた途端に、朝の爽やかな挨拶で出迎えてくれた。次々とかかる挨拶でまるで誘導されるように朝食会場である「庭園茶寮」に入っていく。



 磨きこまれたガラスの向こうは、宍道湖を借景とした枯山水式の湖畔庭園である。



 案内されたテーブルに着くと、夕食であるような小ぶりで横長の紙に書かれたメニューが置かれているのに気づく。
 湯布院とかいくつかの宿ではあったように思うが、バイキング全盛の朝食の宿が殆どのなかでなかなか珍しい。

 調理長の名前が書かれた朝食のメニューをそのまま書き写す。
「おのみもの 緑野菜 ヨーグルトジュース」と、「焼物   鱈西京漬け 十六島海苔わさび和え」。





「鍋仕立て  松江伊藤豆腐店 茶碗豆腐 薬味・生姜醤油」。


  
「冷し鉢  彩り野菜サラダ 皆美館特製ノンオイルドレッシング」。



「蓋物  茄子揚げびたし」。


 
「朝食でございますがこの宿の名物の『鯛めし』になります。召し上がったことはございますでしょうか」
 縦長の土鍋の炊きたてのご飯を、丁寧に天地返しをしながらわたしに訊いた。初々しさがたっぷり残る、着物が良く似合う可愛い仲居さんである。
「いえ、まったく初めてです」
 良く冷えたジュースを楽しんでいたわたしは正直に答える。

「鯛めし」というと愛媛の、土鍋で鯛のお頭付きを丸ごと炊きこむヤツをイメージするがそれとは全く違う。
 松江藩七代目藩主松平治郷(はるさと)公、別名不昧公のエピソードから皆美館の初代料理長が考案したという。
 茶道不昧流の祖でもある不昧公は長崎などで流行った西洋料理や、「汁かけ飯」や「そば具」を好まれていたそうで、それらを基に作りあげた料理だそうだ。

「ではお作りしますね」
 茶碗に上品に盛りつけたご飯は「東の魚沼コシヒカリ、西の仁多米」といわれるほどの出雲のブランド米の仁多米(にたまい)である。
「ご飯に、それぞれの具を半分ずつ載せていきます」





 具材はふわふわな卵の白身、そぼろ状にした鯛、裏ごしした卵の黄身、海苔、大根おろし、わさび、葱などの七種類だ。
 それに鯛の骨、鰹、昆布などを加えた門外不出のレシピの出汁をかけた。



 最後のメニューの「食事 奥出雲延命水で炊きあげた仁多米 不昧公好み家伝『鯛めし 縁盛り』 香の物 五品盛り」と、「椀物 宍道湖七珍 大和蜆赤だし椀」だ。

「よく混ぜて召しあがりください」



(ふむ、あまり、旨そうにみえないが・・・)

「うわっ、なにこれ、旨い!」
 絶妙に旨い出汁が、具材を細かくしたことで混然一体となってご飯と一緒にサラサラと味わえる。
 よしよし、具材が半分残っているからもう一杯楽しめるぞ。それに、宍道湖名物の蜆の味噌汁もお代り自由である。


  ― 続く ―


   →「松江の珈琲」の記事はこちら



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