<志摩の国温泉(2)>
賢島にいくのをとりやめたわたしは、鵜方駅の界隈で昼メシを食べることにした。
30分ほど駅付近を探索したが、“喫煙ができる店“というのがネック(枷)になってこれという店がみつからない。それでも、駅に隣接したビルの2階に「杉の子」という喫茶店兼食堂を発見した。
「ここの店も、禁煙ですか?」
すっかり弱気になって訊くと、禁煙だけど店内にいる客が掃けたならばオッケー、との条件付きで手を打つことにした。みたところ食事だけの2組だから長引かないとみた。
食堂というよりは、小さなスナックみたいな店で、厨房との境には洋酒や焼酎の瓶が並んでいる。これみよがしに芸能人の色紙が壁にいっぱい飾られているが、これはあんまり信用できない。
席に腰をおろすと、食事はあとにしてとりあえず呑んでしまおうかという気になってしまう。
「焼酎の水割りと冷や奴を」を頼むと、「焼酎は『麦』でいいわね」と間髪いれずに畳みこまれ、勢いに負けて頷いてしまう。なにか店の都合があるのだろう。
(濃い・・・水割りだな)
やがて2組の客が帰ると、「どうぞ」と灰皿を置いてくれた。お礼代わりに水割りを追加して、麺類にしようかと迷ったが、昼メシはツマミにもなる玉子サンドに決めた。西の方へ旅すると、茹で玉子を潰したサンドより玉子焼きのサンドのほうが圧倒的に多いが、わたしは嫌いではない。
二食付きの宿泊のときの昼メシは軽くが、わたしのセオリーである。それに、どうやら料理自慢の宿でもあるらしいのだ。
夕食の時間が来て、1階の食事会場に向かった。部屋の名前をいうと、一番奥にある個室に通された。
卓に載っていた献立表はシンプル、ジツにあっさりとしたもので「これなら、なんとかなりそうだ」と安心したが、これが勘違いだとあとで思い知らされた。
食前酒は梅酒で、前菜の七種盛りはどれも凝った逸品が並んでいた。芋焼酎の水割りを注文した。
お造りは、厳選鮮魚の四種盛りに“あしらえ”一式。わたしはいつも、素材に手を加えていない刺身から食べ始める。
きれいな断面で見事に平造りされた刺身は、料理人の技量のほどを窺えさせる。通常の倍くらいの量があるのではないか。どれも新鮮で旨い。酒が進む。
焼き物は、パールポークのアスパラ巻き。出来たてで美味しく、量がなんともちょうど良かった。
「活き貝のブリフィクス活」という謎めいた献立だが、帆立、赤貝、大浅蜊、サザエ、ハマグリ、トコブシなどから好みの貝2種類選び、お造り、または焼き貝で調理してくれるという。
わたしは悩むことなく大好きなハマグリと、サザエを選び、どちらも「焼き」でお願いした。
桑名のハマグリだろうか、大ぶりだが甘みと滋味たっぷり、深い味わいがあってさらに酒が進む。サザエの肝の苦みもなんともいい味だ。サザエだけ刺身にすれば良かったかな・・・。
メインが肉(松坂牛)なのもいいが、新鮮な貝類なのもアリである。なるほど、ここが「料理自慢の宿」と称されるわけだ。
鍋物は、自家温泉水を使用した鯛のみぞれ鍋である。大ぶりな具材ばかり。このへんで腹がいっぱいになってきた。
― 続く ―
→「志摩の国温泉(1)」の記事はこちら
賢島にいくのをとりやめたわたしは、鵜方駅の界隈で昼メシを食べることにした。
30分ほど駅付近を探索したが、“喫煙ができる店“というのがネック(枷)になってこれという店がみつからない。それでも、駅に隣接したビルの2階に「杉の子」という喫茶店兼食堂を発見した。
「ここの店も、禁煙ですか?」
すっかり弱気になって訊くと、禁煙だけど店内にいる客が掃けたならばオッケー、との条件付きで手を打つことにした。みたところ食事だけの2組だから長引かないとみた。
食堂というよりは、小さなスナックみたいな店で、厨房との境には洋酒や焼酎の瓶が並んでいる。これみよがしに芸能人の色紙が壁にいっぱい飾られているが、これはあんまり信用できない。
席に腰をおろすと、食事はあとにしてとりあえず呑んでしまおうかという気になってしまう。
「焼酎の水割りと冷や奴を」を頼むと、「焼酎は『麦』でいいわね」と間髪いれずに畳みこまれ、勢いに負けて頷いてしまう。なにか店の都合があるのだろう。
(濃い・・・水割りだな)
やがて2組の客が帰ると、「どうぞ」と灰皿を置いてくれた。お礼代わりに水割りを追加して、麺類にしようかと迷ったが、昼メシはツマミにもなる玉子サンドに決めた。西の方へ旅すると、茹で玉子を潰したサンドより玉子焼きのサンドのほうが圧倒的に多いが、わたしは嫌いではない。
二食付きの宿泊のときの昼メシは軽くが、わたしのセオリーである。それに、どうやら料理自慢の宿でもあるらしいのだ。
夕食の時間が来て、1階の食事会場に向かった。部屋の名前をいうと、一番奥にある個室に通された。
卓に載っていた献立表はシンプル、ジツにあっさりとしたもので「これなら、なんとかなりそうだ」と安心したが、これが勘違いだとあとで思い知らされた。
食前酒は梅酒で、前菜の七種盛りはどれも凝った逸品が並んでいた。芋焼酎の水割りを注文した。
お造りは、厳選鮮魚の四種盛りに“あしらえ”一式。わたしはいつも、素材に手を加えていない刺身から食べ始める。
きれいな断面で見事に平造りされた刺身は、料理人の技量のほどを窺えさせる。通常の倍くらいの量があるのではないか。どれも新鮮で旨い。酒が進む。
焼き物は、パールポークのアスパラ巻き。出来たてで美味しく、量がなんともちょうど良かった。
「活き貝のブリフィクス活」という謎めいた献立だが、帆立、赤貝、大浅蜊、サザエ、ハマグリ、トコブシなどから好みの貝2種類選び、お造り、または焼き貝で調理してくれるという。
わたしは悩むことなく大好きなハマグリと、サザエを選び、どちらも「焼き」でお願いした。
桑名のハマグリだろうか、大ぶりだが甘みと滋味たっぷり、深い味わいがあってさらに酒が進む。サザエの肝の苦みもなんともいい味だ。サザエだけ刺身にすれば良かったかな・・・。
メインが肉(松坂牛)なのもいいが、新鮮な貝類なのもアリである。なるほど、ここが「料理自慢の宿」と称されるわけだ。
鍋物は、自家温泉水を使用した鯛のみぞれ鍋である。大ぶりな具材ばかり。このへんで腹がいっぱいになってきた。
― 続く ―
→「志摩の国温泉(1)」の記事はこちら
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