<度肝抜く、刺身三点盛>
「お待たせしました」
右の背後から手が伸びてきて、大きな皿がカウンターに置かれた。
一瞬、通電したスタンガンに触れたように身体がのけ反り、目が点になった。次いで顎がはずれた。(ような気がした)
<ぎょぎょぎょォ~! こんなにいっぱい、嬉しい~>
さかなクンだったらバンザイして笑みくずれてそう言うと思うのだが、わたしはただただ唖然とするばかりだ。
「こ、こ、これってわたし頼みましたっけ?」
「はい、ご注文いただいた三点盛りでございます」
三点・・・じゃあねえじゃねーかよ。
一(鯛)、二(鰹)、三(鮪)、四(スズキ)、五(鰯)、六(サーモン)、七(蛸)、の七点盛りじゃんか。
せっかく少なめな「宝石箱」のほうをお薦めしたのにあえてチョイスしておいてなにかご不満でも、と言いたげな店員は口辺に不敵な笑みを浮かべて去っていく・・・。
「申し忘れましたが、白身の魚は付け合わせの薬味と一緒に葉っぱで包み、そちらのタレを付けて召しあがってください」
耳元で言われ、思わず背筋が伸びて「はい!」と答えてしまう。
(あーっ、ビックリした。まだいたのかよ)
盛り場で歩いていて偶然にその店「魚金」の看板をみつけると反射的に入ってしまった。
仕事場で隣の課が十数名で歓送迎会をこの店でやったそうで、刺身、毛蟹の甲羅詰め、ガーリックチャーハンがことのほか美味しかったと聞いた。その時以来、店の名前とわたしの好物であるガーリックチャーハンを覚えておいたのだ。
予約なしの飛び込みだったのだが、七時予約のカップル客が来るまでならということでカウンター席に座ることができた。二時間弱だから、一時間半でオーダーストップだな。
「へしこ、お待たせしました」
あ、いけね。大好物のへしこがメニューにあって刺身と同時に注文してしまったのだ。また新たな荷を背負わなくてはならなくなった。
あとで「カニ味噌バター」を追加して、締めは「ガーリックチャーハン」にするかと皮算用していたのが遥か遠い昔のような気がする。
六時を過ぎると混み始め、カウンター席もわたしの右横に若いカップル、ひとつ置いた左にも中年のカップルで埋まった。
刺身は半分、へしこが二つ、突き出しのポテサラは殆どを残して、残念ながら手持ちの時間が切れ、勘定をすることになった。というか、時間が有限で助かったといえよう。
酒は芋焼酎の水割りを三杯、地酒を三つの銘柄でそれぞれ五勺づつ呑んだが、食べるほうに忙しくて酔ってはいない。食べた感はあるが、呑んだ気がしない。
両側のカップルたちの刺身もなかなか減らないのをみて、すこし安堵する。分厚い玉子焼きも半分くらいで箸がとまったようだ。
ここはすべて盛りが多い。もしも六点盛りを頼んだら、あの倍か・・・と思うと背筋が寒くなる。このショックから立ち直って再訪するようになるには時間がかかりそうである。経験上、次は絶対に三名以上がいいだろう。
「なんか・・・もう一軒呑みなおそうかな。つまみは乾きものでいいから」
荷を降ろした脱力感からか、肩を落としてぶつぶつ呟きながら、夜の盛り場の雑踏に消えていくわたしであった。
→「オリーブのガーリック・ピラフ」の記事はこちら
→「名古屋、ロジネコ食堂のへしこ」の記事はこちら
「お待たせしました」
右の背後から手が伸びてきて、大きな皿がカウンターに置かれた。
一瞬、通電したスタンガンに触れたように身体がのけ反り、目が点になった。次いで顎がはずれた。(ような気がした)
<ぎょぎょぎょォ~! こんなにいっぱい、嬉しい~>
さかなクンだったらバンザイして笑みくずれてそう言うと思うのだが、わたしはただただ唖然とするばかりだ。
「こ、こ、これってわたし頼みましたっけ?」
「はい、ご注文いただいた三点盛りでございます」
三点・・・じゃあねえじゃねーかよ。
一(鯛)、二(鰹)、三(鮪)、四(スズキ)、五(鰯)、六(サーモン)、七(蛸)、の七点盛りじゃんか。
せっかく少なめな「宝石箱」のほうをお薦めしたのにあえてチョイスしておいてなにかご不満でも、と言いたげな店員は口辺に不敵な笑みを浮かべて去っていく・・・。
「申し忘れましたが、白身の魚は付け合わせの薬味と一緒に葉っぱで包み、そちらのタレを付けて召しあがってください」
耳元で言われ、思わず背筋が伸びて「はい!」と答えてしまう。
(あーっ、ビックリした。まだいたのかよ)
盛り場で歩いていて偶然にその店「魚金」の看板をみつけると反射的に入ってしまった。
仕事場で隣の課が十数名で歓送迎会をこの店でやったそうで、刺身、毛蟹の甲羅詰め、ガーリックチャーハンがことのほか美味しかったと聞いた。その時以来、店の名前とわたしの好物であるガーリックチャーハンを覚えておいたのだ。
予約なしの飛び込みだったのだが、七時予約のカップル客が来るまでならということでカウンター席に座ることができた。二時間弱だから、一時間半でオーダーストップだな。
「へしこ、お待たせしました」
あ、いけね。大好物のへしこがメニューにあって刺身と同時に注文してしまったのだ。また新たな荷を背負わなくてはならなくなった。
あとで「カニ味噌バター」を追加して、締めは「ガーリックチャーハン」にするかと皮算用していたのが遥か遠い昔のような気がする。
六時を過ぎると混み始め、カウンター席もわたしの右横に若いカップル、ひとつ置いた左にも中年のカップルで埋まった。
刺身は半分、へしこが二つ、突き出しのポテサラは殆どを残して、残念ながら手持ちの時間が切れ、勘定をすることになった。というか、時間が有限で助かったといえよう。
酒は芋焼酎の水割りを三杯、地酒を三つの銘柄でそれぞれ五勺づつ呑んだが、食べるほうに忙しくて酔ってはいない。食べた感はあるが、呑んだ気がしない。
両側のカップルたちの刺身もなかなか減らないのをみて、すこし安堵する。分厚い玉子焼きも半分くらいで箸がとまったようだ。
ここはすべて盛りが多い。もしも六点盛りを頼んだら、あの倍か・・・と思うと背筋が寒くなる。このショックから立ち直って再訪するようになるには時間がかかりそうである。経験上、次は絶対に三名以上がいいだろう。
「なんか・・・もう一軒呑みなおそうかな。つまみは乾きものでいいから」
荷を降ろした脱力感からか、肩を落としてぶつぶつ呟きながら、夜の盛り場の雑踏に消えていくわたしであった。
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