<つくしんぼとほんのび饅頭>
なんと、土筆の群生だ。
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しかも、恐ろしいほど大量のつくしんぼである。
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はかまを取って灰汁抜きし、出汁で煮付けたり、佃煮にして食べる。
子どものころだったら狂喜乱舞して、両手に持てる限り摘んで、走って母親とか仲良しの友だちを呼びにいったことだろう。
ここは柏崎インターから山側に二十キロ、車で約三十分ほど走った、新潟高柳の「じょんのび村」という施設で、「ほんのび饅頭」という土産を買いたくてここに来たのだ。
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小高い丘に広がるかなり大きな施設なのだが、この日は超満員の盛況であった。
じょんのび村の温泉施設には前に一度泊まったことがあるのだが料金は手ごろで、とても温泉はいい。どちらかというと、北海道は十勝川のモール温泉のような泉質である。
温泉施設の土産売り場で、ばらでほんのび饅頭をまず一個買い求めた。
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代金九十円也を払って、いきなり包みをあけてひとくち頬張ろうとした瞬間、「店のなかでの飲食はやめてください」と店の人になかば叱り飛ばすように言われた。
その勢いに追い出されるように外に出た。たしかに行儀が悪いが、わたしにすればほんとに美味しければ、いくつか箱単位で買い求めようと思っただけで悪気はない。すこし商売気がないのではないか。
外であらためてほんのび饅頭味わう。
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うん、饅頭の黒糖色の皮の部分が、もちっとしてまるで大福餅のような新食感である。なんとも旨い饅頭だ。中の餡も甘みを抑えている。とても美味しい。でも食べ終わるとやっぱり酒呑みにはちょっと甘いかな。
「ほんのび」とは、食べた詩人が「ほんのり甘みがある」と「じょんのび」を合成して命名したそうだ。「じょんのび」とは、「ゆったり、のんびり、芯から気持ちがいい」という意味の方言だ。
店の中に戻って、箱単位で買いたいというと、今朝仕入れた分は売り切れてしまって追加注文したのがそろそろ届くころであるが、急ぐなら、製造している店は近いので直接行って求めたほうがいいという。忠告に従って製造している店で買うことにした。
丘の上の便利な駐車場がいっぱいで、下の駐車場の外の道路に止めた車に戻る。
黒姫山だろうか、雪山が美しい。
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視線を転じると、駐車場に下る坂道沿いの土手が土筆だらけであったのだ。
これだけの大量の、旨そうな春の土筆をみると思わず興奮してしまう。
子どものころ、よく見た夢を思いだした。
朝靄ただよう、どこかの名刹の、鬱蒼とした巨木が続く長い参道。中央部分が石畳になっている。
石畳を歩いているのは、半ズボンを穿いたわたしただひとりである。
はるか前方にも、振返っても誰もいない。
おや・・・。 道の脇の落葉が掃き寄せられたあたりで、ピカリと光るものがある。
屈みこんで見ると、泥にまみれた五百円玉である。なんと。それもよくよく見ると三、四枚あるではないか。急に胸がどきどきしてくる。賽銭が、運ぶ途中でどうかしてこぼれたのだろうか。
(ラッキー!)
これだけあれば、欲しかったプラモデルも買えるし、大好きなお好み焼きも食べられるぞ。
拾いあげて泥を払うと、慌てて半ズボンのポケットに落とし込む。
参道を見回すが、いまだ人の気配はない。
(もしかしたら・・・)
その格好のまま、眼を凝らすと、すぐ前方にも微かに光るものが見えた。
今度は五百円玉だけではなく、百円、五十円、十円と硬貨が混ざっている。五百円玉と百円玉を選んで、拾いあげてポケットに・・・。
こちら側だけでなく、向こう側にもあるぞ。胸のどきどきが止まらず、喉が渇いてくる。
参道の両側を中腰でいったりきたり、すこしづつ進みながら、銀貨を見つけてはポケットに押し込んでいく。
やがて、半ズボンの両側のポケットと尻ポケットがずっしり重くなって、ずり下がりはじめる・・・。
毎度、この辺で眼が覚めてしまうのだ。フロイト流に言えば、一攫千金(一攫十金くらいかな)まる出しの欲望を表す不埒な夢なのかもしれない。
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土筆の大群生をみて、つい狂喜し、ひとに喋ったことのない恥ずかしい夢まで思わず披露してちょっと失敗した・・・かなあ。
そうそう、戻りの国道沿いの「大和屋」でひと箱無事にゲットできた。大勢の客が店に押し寄せていたが、饅頭だけではなく洋菓子を買っている客も多かった。
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→「続・温海温泉(2)」の記事はこちら
なんと、土筆の群生だ。
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しかも、恐ろしいほど大量のつくしんぼである。
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はかまを取って灰汁抜きし、出汁で煮付けたり、佃煮にして食べる。
子どものころだったら狂喜乱舞して、両手に持てる限り摘んで、走って母親とか仲良しの友だちを呼びにいったことだろう。
ここは柏崎インターから山側に二十キロ、車で約三十分ほど走った、新潟高柳の「じょんのび村」という施設で、「ほんのび饅頭」という土産を買いたくてここに来たのだ。
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小高い丘に広がるかなり大きな施設なのだが、この日は超満員の盛況であった。
じょんのび村の温泉施設には前に一度泊まったことがあるのだが料金は手ごろで、とても温泉はいい。どちらかというと、北海道は十勝川のモール温泉のような泉質である。
温泉施設の土産売り場で、ばらでほんのび饅頭をまず一個買い求めた。
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代金九十円也を払って、いきなり包みをあけてひとくち頬張ろうとした瞬間、「店のなかでの飲食はやめてください」と店の人になかば叱り飛ばすように言われた。
その勢いに追い出されるように外に出た。たしかに行儀が悪いが、わたしにすればほんとに美味しければ、いくつか箱単位で買い求めようと思っただけで悪気はない。すこし商売気がないのではないか。
外であらためてほんのび饅頭味わう。
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うん、饅頭の黒糖色の皮の部分が、もちっとしてまるで大福餅のような新食感である。なんとも旨い饅頭だ。中の餡も甘みを抑えている。とても美味しい。でも食べ終わるとやっぱり酒呑みにはちょっと甘いかな。
「ほんのび」とは、食べた詩人が「ほんのり甘みがある」と「じょんのび」を合成して命名したそうだ。「じょんのび」とは、「ゆったり、のんびり、芯から気持ちがいい」という意味の方言だ。
店の中に戻って、箱単位で買いたいというと、今朝仕入れた分は売り切れてしまって追加注文したのがそろそろ届くころであるが、急ぐなら、製造している店は近いので直接行って求めたほうがいいという。忠告に従って製造している店で買うことにした。
丘の上の便利な駐車場がいっぱいで、下の駐車場の外の道路に止めた車に戻る。
黒姫山だろうか、雪山が美しい。
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視線を転じると、駐車場に下る坂道沿いの土手が土筆だらけであったのだ。
これだけの大量の、旨そうな春の土筆をみると思わず興奮してしまう。
子どものころ、よく見た夢を思いだした。
朝靄ただよう、どこかの名刹の、鬱蒼とした巨木が続く長い参道。中央部分が石畳になっている。
石畳を歩いているのは、半ズボンを穿いたわたしただひとりである。
はるか前方にも、振返っても誰もいない。
おや・・・。 道の脇の落葉が掃き寄せられたあたりで、ピカリと光るものがある。
屈みこんで見ると、泥にまみれた五百円玉である。なんと。それもよくよく見ると三、四枚あるではないか。急に胸がどきどきしてくる。賽銭が、運ぶ途中でどうかしてこぼれたのだろうか。
(ラッキー!)
これだけあれば、欲しかったプラモデルも買えるし、大好きなお好み焼きも食べられるぞ。
拾いあげて泥を払うと、慌てて半ズボンのポケットに落とし込む。
参道を見回すが、いまだ人の気配はない。
(もしかしたら・・・)
その格好のまま、眼を凝らすと、すぐ前方にも微かに光るものが見えた。
今度は五百円玉だけではなく、百円、五十円、十円と硬貨が混ざっている。五百円玉と百円玉を選んで、拾いあげてポケットに・・・。
こちら側だけでなく、向こう側にもあるぞ。胸のどきどきが止まらず、喉が渇いてくる。
参道の両側を中腰でいったりきたり、すこしづつ進みながら、銀貨を見つけてはポケットに押し込んでいく。
やがて、半ズボンの両側のポケットと尻ポケットがずっしり重くなって、ずり下がりはじめる・・・。
毎度、この辺で眼が覚めてしまうのだ。フロイト流に言えば、一攫千金(一攫十金くらいかな)まる出しの欲望を表す不埒な夢なのかもしれない。
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土筆の大群生をみて、つい狂喜し、ひとに喋ったことのない恥ずかしい夢まで思わず披露してちょっと失敗した・・・かなあ。
そうそう、戻りの国道沿いの「大和屋」でひと箱無事にゲットできた。大勢の客が店に押し寄せていたが、饅頭だけではなく洋菓子を買っている客も多かった。
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→「続・温海温泉(2)」の記事はこちら
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