温泉クンの旅日記

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峩々温泉(3)

2019-02-17 | 温泉エッセイ
  <峩々温泉(3)>

 かすかに聞こえてくるのは濁川のせせらぎだけ、まさに森閑とした深山幽谷の温泉宿である。静寂(しじま)に満ちた強い気のせいで世俗にまみれた心も洗われ、久しぶりに静穏をとりもどしたようだ。

 

 部屋で、鶴岡で買ってきた淡麗辛口の地酒「大山(おおやま)」を冷やでちびちび呑んでいるうちに、そろそろ夕食の時間となった。

 

 周りに温泉街もなにもない一軒宿だから、得意技の朝食付き宿泊(B&B)の選択肢はなかったのだ。玄関や温泉ある棟に下り、食事処に入っていく。わたしの嫌いな部屋食でないのはありがたい。

  
 
 テーブルの上には峩々温泉六代目主人と料理長の名が入った、達筆で書かれた「ご夕食のお献立」が置いてあった。
 前菜は山菜と珍味の盛り合わせである。葱、小さく切った茄子、シメジ、うど、みずわらび、チーズ、稚鮎などだ。
 旬のものは、三陸産秋鮭のホイル焼き。川魚じゃないところがこれも嬉しい意外だった。

 

 

 お刺身は三陸産の鮮魚でイカとクエ、まさか山奥で幻の高級魚クエと出逢うとは思わなかった。さきほどまで酒だったことだし、ここはやはり熱燗でいこう。酒の銘柄は白石の地酒「蔵王」の辛口である。
 杯に燗酒を注ぐと、迷わずクエの刺身に箸を伸ばす。

 

 さりげなく他のテーブルを見回すと、壮年男女の四人グループとカップルが一組だった。夕食が二部制でなければ宿泊客はそれがすべてとなる。人気宿だが、ど平日ならではの空き具合だ。
 蒸し物は松茸の茶碗蒸し。どちらかというと土瓶蒸しのほうがいいが、これもまあ好物だ。

 

 焼物は川崎町産の米ナスの丸ごとチーズ焼き。

 

 メインは蔵王高原野菜とベルツソーセージのせいろ蒸し。せいろにはソーセージ、アスパラ、ジャガイモ、シイタケ、南瓜、サツマイモ、舞茸、玉ねぎが入っていた。

 

 そして締めは、名物の宮城風芋煮汁とひとめぼれ一等米のご飯、手づくりのお新香だ。

 

 食事後に、デザートは談話室でご用意しておりますといわれ、移動した。
 ちょうど中秋の名月の夜ということで、団子と、枝豆と葡萄(マスカット、巨峰)と栗が大皿に盛られていて、好きなだけ食べてくれといわれる。

 

 団子と葡萄を少しだけいただいて、玄関の外に設置してある灰皿のそばで夜空を見あげながら一服していると、ぶ厚い雲がちぎれて風に流され、一瞬だが嬉しいことに名月が顔を出したのだった。
 バーラウンジに変わった談話室での峩々割注文はやめておいて、部屋でもう少し酒の続きをやるとするか。


  ― 続く ―


   →「峩々温泉(1)」の記事はこちら
   →「峩々温泉(2)」の記事はこちら
   →「白石城界隈(1)」の記事はこちら
   →「白石城界隈(2)」の記事はこちら

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