新携帯灰皿デビュー

　　＜　新携帯灰皿デビュー　＞

　物持ちがいいほうである。
　安いものでも大事に使うし、それになかなか失くさない。



　この携帯灰皿（右側のほう）もそうである。使いこんだから手のアブラで表面に
あった文字も跡形もなくつるつるになってしまったが、道東の牧場のなかにある
ホテル「うらかわ優駿ビレッジAERU」で泊まった翌朝に、引き馬でない乗馬を初め
てしたものだから記念の意味もあって買ったものだ。楽しかった・・・だから愛着
もひとしおあるのである。

　折からのまるで魔女狩りのような嫌煙ブームの到来で路上や駅での灰皿がとっぱ
らわれ、吸殻の投げ捨てなどしたら射殺されそうな剣呑な雰囲気に、喫煙者には
携帯灰皿が必需品になった。まったくもって外を歩くときは手放せない。

　だからわたしのこの携帯灰皿もこの数年、大活躍となったわけである。
　それってピルケースですか、ケータイ（電話）ですか、ついには検便の容器です
かとまで言われ始めたので、泣く泣く新しいの（左側）に交代することにしたの
だ。

　新品の灰皿デビューの日、出勤途中のコンビニのゴミ箱に「ご苦労、さらばじ
ゃ！」エイッと投げ入れようとしたがなぜか、なぜかできず、会社の机のなかに
いれてしまった。
　意外と女性より男性のほうが思い切りよく捨てられなかったりするのかもしれな
い。（意外ではないか・・・）

　煙草を吸いながら、初めて使った携帯灰皿の中身を捨てていたら、同僚が言っ
た。
「特用の龍角散？」
　とにかくうちの会社の連中はクチが悪い。

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