<横濱橋界隈、昔ながらの喫茶「カメヤ」>
埼玉屋食堂が運悪く休みだったので三吉橋商店街をぶらぶらしていて見つけた、小さな喫茶店「カメヤ」に入ってみた。

近くに懐かしい惣菜店があったので帰りに覗いてみようと決めた。

「いらっしゃいませ」
カウンター越しの厨房にいる品のいいマダム風女性店主から声がかかる。


小体な店で、すぐ左に四人掛け卓が、右側に特注だろうか長めに設えたソファ席があり、ソファの前に小さな卓が二つと大きめな卓が一つ置かれていた。
「ここって煙草は吸えますか」
念のため訊いてみると「大丈夫です」との返事が返ってくる。禁煙ならあっさりあきらめるつもりだった。すこし先にあった焼きそばとおでん「勝村屋」は訊いたら禁煙だったのだ。

坐ったソファ席の正面、壁に掲げられたメニューをみて瞠目してしまう。

注:消費増税(2019年10月)前のメニューである
チェーンのコーヒー店ではなく、個人営業の喫茶店なのである。いまから三十年以上前ごろ、昭和六十年代(1985年~)の値段ではないか。ウィスキーの水割りなんかあったら最高なのだが。
すべてが安すぎるメニューである。あれはあくまでも<壁飾り>で、メニューは別に持ってくるのかもしれない。
水と灰皿が運ばれてきた。とすれば、やはりあの壁のメニューが活きているのだろう。
たしか今はなき喫茶「マツモト」で私立探偵の濱マイクが愛した「カフェ・オレ(メニューではミルクコーヒー)」も、ある。

なんでもコーヒーと牛乳の割合が、カフェ・オレは四対六、ミルクコーヒーは二対八だそうだ。
「ご注文は?」
好みの美人画のように見とれまくっている視線を強引に剥がす。
「コーヒーをお願いします」
煙草に火を点けて一服していると、入口扉が開き、「おはようございます」と掛けられた声にわずかな頷きで応えた年配客の男性が、静かに入ってきてスポーツ新聞を手に取るとソファ席の奥に坐り、新聞を広げて読み始める。
注文したコーヒーが運ばれてくる。

コーヒーは値段以上に上等で旨い。
注文した気配がまったくないのに、奥の年配客にお汁粉が運ばれていく。歳をとると甘党になるというが、モーニング汁粉か・・・。

「ハムトーストもお願いします」
小腹が空いてきたので追加注文することにした。
「えっ! 餡トーストですか?」
たしかに<アンコトースト>がメニューにあった。
いえ、ハ、ム、です。一語づつ発音しても母音が一緒だから「ア、ン」と聞こえなくもない、と心配になる。
アブナイ危ない、わたしは生粋の浜ッ子で甘党の名古屋人ではないのだ。
そういえば、さきほど業者に定例注文の電話を、まるで似合わぬ大声でしていた。多少耳が遠くなってきているのかもしれない。
もう一杯お代りいかがと勧められる。断るのも悪い。
「じゃあ、すみませんが、ちょっとだけ」
ちょっとではなく、たっぷり注がれて驚いてしまう。


運ばれてきたハムトーストは、思ったとおり満足できる上モノの味である。パンの焼き具合もわたしの好みにバッチリだ。
「ありがとうございました」の声に思わずコーヒーカップから顔をあげると、ひたすら無口なお汁粉オジサンが勘定を払わずに静かに出ていくところだった。
きっと毎日通って来るようなツケの常連客なのだろう。あるいは決まって火・木(寡黙)だけとか。
お代りの丸々一杯のコーヒーはサービスであった。なんか、いつまでもこのままでと思わせる、とても不思議な雰囲気で居心地のいい店である。
→「横浜三吉橋、埼玉屋食堂」の記事はこちら
→「横濱橋界隈、酔來軒のいかパッチン」の記事はこちら
→「横濱橋界隈、高橋うどん」の記事はこちら
埼玉屋食堂が運悪く休みだったので三吉橋商店街をぶらぶらしていて見つけた、小さな喫茶店「カメヤ」に入ってみた。

近くに懐かしい惣菜店があったので帰りに覗いてみようと決めた。

「いらっしゃいませ」
カウンター越しの厨房にいる品のいいマダム風女性店主から声がかかる。


小体な店で、すぐ左に四人掛け卓が、右側に特注だろうか長めに設えたソファ席があり、ソファの前に小さな卓が二つと大きめな卓が一つ置かれていた。
「ここって煙草は吸えますか」
念のため訊いてみると「大丈夫です」との返事が返ってくる。禁煙ならあっさりあきらめるつもりだった。すこし先にあった焼きそばとおでん「勝村屋」は訊いたら禁煙だったのだ。

坐ったソファ席の正面、壁に掲げられたメニューをみて瞠目してしまう。

注:消費増税(2019年10月)前のメニューである
チェーンのコーヒー店ではなく、個人営業の喫茶店なのである。いまから三十年以上前ごろ、昭和六十年代(1985年~)の値段ではないか。ウィスキーの水割りなんかあったら最高なのだが。
すべてが安すぎるメニューである。あれはあくまでも<壁飾り>で、メニューは別に持ってくるのかもしれない。
水と灰皿が運ばれてきた。とすれば、やはりあの壁のメニューが活きているのだろう。
たしか今はなき喫茶「マツモト」で私立探偵の濱マイクが愛した「カフェ・オレ(メニューではミルクコーヒー)」も、ある。

なんでもコーヒーと牛乳の割合が、カフェ・オレは四対六、ミルクコーヒーは二対八だそうだ。
「ご注文は?」
好みの美人画のように見とれまくっている視線を強引に剥がす。
「コーヒーをお願いします」
煙草に火を点けて一服していると、入口扉が開き、「おはようございます」と掛けられた声にわずかな頷きで応えた年配客の男性が、静かに入ってきてスポーツ新聞を手に取るとソファ席の奥に坐り、新聞を広げて読み始める。
注文したコーヒーが運ばれてくる。

コーヒーは値段以上に上等で旨い。
注文した気配がまったくないのに、奥の年配客にお汁粉が運ばれていく。歳をとると甘党になるというが、モーニング汁粉か・・・。

「ハムトーストもお願いします」
小腹が空いてきたので追加注文することにした。
「えっ! 餡トーストですか?」
たしかに<アンコトースト>がメニューにあった。
いえ、ハ、ム、です。一語づつ発音しても母音が一緒だから「ア、ン」と聞こえなくもない、と心配になる。
アブナイ危ない、わたしは生粋の浜ッ子で甘党の名古屋人ではないのだ。
そういえば、さきほど業者に定例注文の電話を、まるで似合わぬ大声でしていた。多少耳が遠くなってきているのかもしれない。
もう一杯お代りいかがと勧められる。断るのも悪い。
「じゃあ、すみませんが、ちょっとだけ」
ちょっとではなく、たっぷり注がれて驚いてしまう。


運ばれてきたハムトーストは、思ったとおり満足できる上モノの味である。パンの焼き具合もわたしの好みにバッチリだ。
「ありがとうございました」の声に思わずコーヒーカップから顔をあげると、ひたすら無口なお汁粉オジサンが勘定を払わずに静かに出ていくところだった。
きっと毎日通って来るようなツケの常連客なのだろう。あるいは決まって火・木(寡黙)だけとか。
お代りの丸々一杯のコーヒーはサービスであった。なんか、いつまでもこのままでと思わせる、とても不思議な雰囲気で居心地のいい店である。
→「横浜三吉橋、埼玉屋食堂」の記事はこちら
→「横濱橋界隈、酔來軒のいかパッチン」の記事はこちら
→「横濱橋界隈、高橋うどん」の記事はこちら
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