温泉クンの旅日記

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懐かしの東京ラーメン (2)

2011-10-19 | 食べある記
  <銀座 萬福>

 長い旅をして帰ってくると、自分なりの儀式のようなものをする。

 長距離を車で走り続けて自分のホームグラウンドである横浜とか東京に、事故なくトラブルなく帰ってきて、頭では帰還したことをすぐに理解するのだが、わたしの身体のどこかが「旅」をしばらく引きずるのだ。
 こういうときには胃の腑を含めた身体が「横浜とか東京に帰ってきたぞ」と納得するものを食べるに限る。いつも呑むところで一杯やるのもいい。「儀式」と言っても「ようなもの」だから、それほどたいしたものではないのである。

 たとえば九月の九州旅(福岡、大分、宮崎、鹿児島、熊本)のときには、東京らしいラーメンを食べにいったのだ。

 有楽町で降り、交通会館とイトシアの間をプランタンに向けて歩く。
 道順は、あとはひたすら真っすぐである。迷うことはない。
 中央通りを渡り、場外馬券売り場の横を通って、昭和通りを渡れば見えてくる。歩くのが嫌いなら東銀座駅が一番近い。



「萬福」である。
 有名で、超老舗であるがゆえになんとなく敬遠し続け足が向かなかった。
 六月に北に、九月に南にロングな旅をしたわけで、今回はここしかないだろうとやってきたのだ。



「中華そばをひとつ」
 テーブルに座ると、躊躇も迷いもいっさいなく注文する。



 レトロな店内は、ラーメン屋らしからぬ清潔感がただよっている。
 昼の時間に喫煙はできないが、どうやら夜の居酒屋風の営業時間帯は酒も供されるのでだいじょうぶそうである。

 運ばれてきた「中華そば」は、バッチリ想像通りのものでつい嬉しくなってしまう。



 薄切りの三角の卵焼きが、彩りのアクセントになっている。
 大正時代に屋台からスタート、昭和四年現在の場所で店舗創業以来、材料と調理方法、具の配列までまったく変えていないという頑固さがすこぶるいい。
 出しゃばらない味の麺は、濁りのない透明でシンプルなスープによくよく合っている。高血圧を気にしていつもスープを大量に残すのだが、ついつい進んでしまうやさしい味である。中華そばというより、どちらかというと「支那そば」の感じに近い。

 満足したぞ。東京に帰って来たぜ、という気分をバッチリ、満喫した。

 さてさて、中華そばの値段の六百五十円だが、「やっぱり・・・ちょっと銀座値段だな」と思うのはわたしひとりだろうか。


  →「懐かしの東京ラーメン」の記事はこちら

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