<砂銀で塩うどん>
馬喰町で都営新宿線に乗り換えて、西大島駅で降りる。地上に上がって、明治通りを夢の島方面に歩く。
このあいだ呑んだとき、うどんの話題にひとしきりなった。讃岐から始まってあちこちのうどんの話で盛りあがり、なかのひとりが、
「ところで『塩うどん』って知っているか」
とみんなに訊く。
誰も一様に知らない。わたしもうどんに相当に詳しいのだがまったくの初めて、だった。語感がいかにも旨そうだ。詳しく教えてくれと頼んだ。
砂町銀座の店で出しているうどんだそうで、それは誰もしらないはずだと一同納得する。
若いころ近くに住んでいたので、よくそれを食べに砂銀に行った。うどんの味付けが塩と砂糖だけだそうで、関東なのに醤油は使わない。しょっぱいがほんのり甘い、安くて美味しいうどんなんだよ、と彼は遠い眼つきをして懐かしげに語った。
砂銀には行ったことがない。行きたいがちょっと遠い。半日は潰れてしまう。ただのふつうの商店街だったりすると、がっかりの無駄足になってしまう。
その安くて美味しい塩うどんとやらを食べに砂銀に行ってみよう。と、やっと出かける気になったのである。
砂町銀座入口交差点。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/15/51/e7b1c1496e59b40ddefc657f60ccde2d.jpg)
商店街入り口に入ると、初詣の参道みたいな賑わいである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/9d/18409e3caa8b42ff97651b89a40bc7e6.jpg)
昭和の匂いがぷんぷんただようわたし好みの下町の商店街だ。閑散とした商店街が多い東日本だが、この活気は大阪にも決して負けていない。この砂銀、自転車は容認されているようだが、車が通れない広さがいいのかもしれない。
あとでわかるのだが、月に一度の「ばか値市」と呼ばれる大安売りの日だったのだ。
歩きだしてすぐの左手に「梅むら」があった。
どうやら、店の奥のほうに食べられるスペースがあるようである。店の前に陳列された甘味やうどんやらに群がる、黒山の人だかりを掻き分けて店内に潜り込む。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/e5/a50cf828ef132eec71e552e65f044874.jpg)
いろいろメニューがあり、嬉しいことにどれも安い。力うどんにおおいに心を動かされるも、シンプルな「塩うどん」を注文した。そう、昨日も大酒を食らっているのだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/6d/02625fb0d28de11e8063915889107d3d.jpg)
運ばれたいかにも熱そうなうどん・・・なんとも旨げな景色である。
つゆはいかにも熱そうなので後にして、うどんからいった。これも熱かった。けど旨い。伊勢うどんよりは固めで博多うどんを思わせる柔らかな麺である。きっと「讃岐が一番だ」みたいなひとには合わないだろう。
透き通ったつゆは、ほどよい塩味にほのかな甘みで抵抗はまったくない。美味しい。先代秘伝の塩味スープだそうだ。
はふはふいいながら、あっと言う間に食べきった。軽い二日酔いには覿面に効きそうだ。汗がじんわり浮かんでくる。次回は力うどんを食べよう、と頭の隅にメモする。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/da/1644d9272081fca60fcf52064d528c55.jpg)
なかほどにあったおでん吉田屋で、好きな「ちくわぶ」を串にさしてもらう。五十円也。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/5a/db9c3f95497d04e3f238cb0ff144e697.jpg)
味がよく滲みて、煮込み具合も柔らかさもほどよい。
もう一軒のおでん屋で食べ比べをしようと思ったが、客が多すぎるので復路に買い求めることにする。
商店街の端の丸八通りまでいき、ゆっくり戻る。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/cf/e46894c1b3c9dbc54e5c3fea20eb9101.jpg)
缶ビール片手に群がっている焼鳥屋には、なんとなく吸い寄せられるような強い磁力を感じてしまう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/97/446c4812c927ad9ec3ef245bc54d6fd9.jpg)
さきほどのおでん屋「増英かまぼこ店」に戻って、列にならんだ。店先に熱々の「中華揚げ」が大量に運ばれてきて、そういえばこれも旨いと言っていたなと思いだす。
いろいろな具材(タマネギ・ねぎ・にんじん・もやし・キャベツ・ニラ)とイワシのすり身を一味唐辛子とコショウを効かせて配合し、揚げたもので、おでんの具にもいいが、揚げたてをそのまま食べても絶品だと聞いた。
おでんの列なのだが、この中華揚げを一枚買って列から抜け出す。七十三円だったか七十四円だったか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/f5/10c23182488ce70f2e3a2677170e7c2f.jpg)
さっそくひと齧りして、すぐに酒店を目指す。これはそのまま食べてもいいが酒に肴にもってこいのぴり辛い味である。
裏通りに見つけた小さな公園で、中華揚げを齧り、辛口の冷えた菊水をちびりと呑む。満足このうえなし。
復路では、梅むらの前の人だかりがあらかたなくなっていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/87/6457d8f5bf96ae0cdaf8a992275ee7f2.jpg)
あとで知ったが、砂町銀座商店街が日本全国「行ってみたい商店街」のベスト三位、というのがしっかりなるほどと納得できた。
馬喰町で都営新宿線に乗り換えて、西大島駅で降りる。地上に上がって、明治通りを夢の島方面に歩く。
このあいだ呑んだとき、うどんの話題にひとしきりなった。讃岐から始まってあちこちのうどんの話で盛りあがり、なかのひとりが、
「ところで『塩うどん』って知っているか」
とみんなに訊く。
誰も一様に知らない。わたしもうどんに相当に詳しいのだがまったくの初めて、だった。語感がいかにも旨そうだ。詳しく教えてくれと頼んだ。
砂町銀座の店で出しているうどんだそうで、それは誰もしらないはずだと一同納得する。
若いころ近くに住んでいたので、よくそれを食べに砂銀に行った。うどんの味付けが塩と砂糖だけだそうで、関東なのに醤油は使わない。しょっぱいがほんのり甘い、安くて美味しいうどんなんだよ、と彼は遠い眼つきをして懐かしげに語った。
砂銀には行ったことがない。行きたいがちょっと遠い。半日は潰れてしまう。ただのふつうの商店街だったりすると、がっかりの無駄足になってしまう。
その安くて美味しい塩うどんとやらを食べに砂銀に行ってみよう。と、やっと出かける気になったのである。
砂町銀座入口交差点。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/15/51/e7b1c1496e59b40ddefc657f60ccde2d.jpg)
商店街入り口に入ると、初詣の参道みたいな賑わいである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/9d/18409e3caa8b42ff97651b89a40bc7e6.jpg)
昭和の匂いがぷんぷんただようわたし好みの下町の商店街だ。閑散とした商店街が多い東日本だが、この活気は大阪にも決して負けていない。この砂銀、自転車は容認されているようだが、車が通れない広さがいいのかもしれない。
あとでわかるのだが、月に一度の「ばか値市」と呼ばれる大安売りの日だったのだ。
歩きだしてすぐの左手に「梅むら」があった。
どうやら、店の奥のほうに食べられるスペースがあるようである。店の前に陳列された甘味やうどんやらに群がる、黒山の人だかりを掻き分けて店内に潜り込む。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/e5/a50cf828ef132eec71e552e65f044874.jpg)
いろいろメニューがあり、嬉しいことにどれも安い。力うどんにおおいに心を動かされるも、シンプルな「塩うどん」を注文した。そう、昨日も大酒を食らっているのだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/6d/02625fb0d28de11e8063915889107d3d.jpg)
運ばれたいかにも熱そうなうどん・・・なんとも旨げな景色である。
つゆはいかにも熱そうなので後にして、うどんからいった。これも熱かった。けど旨い。伊勢うどんよりは固めで博多うどんを思わせる柔らかな麺である。きっと「讃岐が一番だ」みたいなひとには合わないだろう。
透き通ったつゆは、ほどよい塩味にほのかな甘みで抵抗はまったくない。美味しい。先代秘伝の塩味スープだそうだ。
はふはふいいながら、あっと言う間に食べきった。軽い二日酔いには覿面に効きそうだ。汗がじんわり浮かんでくる。次回は力うどんを食べよう、と頭の隅にメモする。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/da/1644d9272081fca60fcf52064d528c55.jpg)
なかほどにあったおでん吉田屋で、好きな「ちくわぶ」を串にさしてもらう。五十円也。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/5a/db9c3f95497d04e3f238cb0ff144e697.jpg)
味がよく滲みて、煮込み具合も柔らかさもほどよい。
もう一軒のおでん屋で食べ比べをしようと思ったが、客が多すぎるので復路に買い求めることにする。
商店街の端の丸八通りまでいき、ゆっくり戻る。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/cf/e46894c1b3c9dbc54e5c3fea20eb9101.jpg)
缶ビール片手に群がっている焼鳥屋には、なんとなく吸い寄せられるような強い磁力を感じてしまう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/97/446c4812c927ad9ec3ef245bc54d6fd9.jpg)
さきほどのおでん屋「増英かまぼこ店」に戻って、列にならんだ。店先に熱々の「中華揚げ」が大量に運ばれてきて、そういえばこれも旨いと言っていたなと思いだす。
いろいろな具材(タマネギ・ねぎ・にんじん・もやし・キャベツ・ニラ)とイワシのすり身を一味唐辛子とコショウを効かせて配合し、揚げたもので、おでんの具にもいいが、揚げたてをそのまま食べても絶品だと聞いた。
おでんの列なのだが、この中華揚げを一枚買って列から抜け出す。七十三円だったか七十四円だったか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/f5/10c23182488ce70f2e3a2677170e7c2f.jpg)
さっそくひと齧りして、すぐに酒店を目指す。これはそのまま食べてもいいが酒に肴にもってこいのぴり辛い味である。
裏通りに見つけた小さな公園で、中華揚げを齧り、辛口の冷えた菊水をちびりと呑む。満足このうえなし。
復路では、梅むらの前の人だかりがあらかたなくなっていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/87/6457d8f5bf96ae0cdaf8a992275ee7f2.jpg)
あとで知ったが、砂町銀座商店街が日本全国「行ってみたい商店街」のベスト三位、というのがしっかりなるほどと納得できた。
あんなに元気で活気のある商店街は、あまりないのではないかと思います。
わたしも、一度行って、すっかりはまり、リピーターになってしまいました。
いつかあの近くに住みたいくらいです。
端のほうにある「銀座ホール」もいいですよ~。
激しくお勧めです!!
砂銀、たしかに近所にあったら、最高ですね。
また梅むらに再訪して力うどんを食べようと思っていますので、そのとき「銀座ホール」に寄ってみます。
今回、ジツは寄ろうと思っていたのですが、「先代のころはあそこも良かったんだけどね・・・」と聞いていたもんですから寄りませんでした。
天気のいい日を選んで、また砂銀に行ってみます。