<三朝温泉(1)>
城崎温泉を早朝に出発した。
温泉街の、まだひとがまばらな目抜き通りを抜けて、山越えして、日本海側の道
を鳥取方面に一路走る。
しばらくいくと、余部(餘部)鉄橋が目の前に現れた。
(おぉー、なんと・・・まだ原形をとどめているぞ!)
一年前と比べると、あちこちにクレーンが架かっていて工事中だが、その鉄橋
付近までいくと朝早いのにもかかわらず鉄道ファンが屯していた。いずれコンクリ
ート橋になるのだ。
湯村温泉への曲がり口を横目で懐かしく見ながら、さらに走り、途中のコンビニ
で簡単な朝食を食べる。
鳥取県にはいると、突然に渋滞が始まった。
海側の道に迂回したが途中で臨時の通行止めになっていて、ターンしてまた渋滞
の国道に戻るはめになる。
渋滞も迂回路の通行止めも、砂丘フェスティバルのせいである。
これといった他の迂回路もないので、あきらめてチビチビと進むことにする。
(それにしても・・・昨夜のカワハギは不味かったなあ)
止まったり前進したりをうんざりするほど繰り返していると、頭を使わないので
忘れようとしてることを思い出してしまう。
城崎温泉での夕食にとはいった店で、メニューにカワハギの活きづくりを見つ
け、喜び勇んでオーダーしたのだが、これが失敗だった。
キモは濃厚とはほど遠く、身も青臭くてダメ。思い出すと腹が立つ。カワハギが
旨ければ、他に食べたいものもいっぱいあったのだが、結局、酒だけガンガン呑ん
で酔っ払い、宿に帰るとすぐに寝てしまった・・・。
ようやく渋滞が解消し始めた。
ナビで再計算すると、途中の信号を左折しろと言う。拡大表示してみると、海側
の道をとらずに内陸の道をとって三朝温泉に連れていくつもりのようだ。
まあ、いいか。このナビは山越えが好きだからそうなるかもしれないが、まあ
今日はつきあうとしよう。
(やっぱり、山越えか!)
しばらく田園風景を走っていると、右折して三徳山(みとくさん)という山に
登っていった。標高900メートルくらいだから、ちょうど箱根の山みたいなもの
だ。
途中の峠で一服する。
下りの道の途中、バス停があるあたりで、夥しい車が駐車していてびっくりし
た。お祭か、と思ったがどうもそうでもないようで、相当なご利益がある寺院が
あるようである。
見覚えのある、三朝温泉の町にはいった。
「三徳山」を帰ってから調べてみてアッと驚く。かなり有名なのである。
三徳山の名前は「法身(美しい)」「般若(にごりのない)」「解脱(働きの
ある心)」の三つの徳に由来している。その全山が国の名勝・史跡に指定されて
いる。
山の全域が三徳山三仏寺の境内となっていて、中腹の断崖に浮かぶように建つ
国宝・投入堂は特に有名だ。
ただし、投入堂にたどり着くには、頑健な体力と強靭な精神力が必要だ。それに
危険がいっぱい。
登山道は投入堂までの一本のみであり、山頂まで登ることはできない。
三徳バス停から急な石段を登り三仏寺の本堂に着く。本堂裏手が登山口になって
いて、すぐに難所として知られるカズラ坂、むき出しとなった木の根を伝ってよじ
登る難所だ。さらに岩石の断崖に設けられた鎖をよじ登ると文殊堂に着く。
ここからは岩場の尾根道となり、危険な箇所が連続する、馬の背・牛の背を通
る。傾斜がなだらかで、樹木に覆われているから難所に見えないが左右両側とも
切り立った断崖絶壁で、過去に滑落事故や死亡事故が何度も発生している。
牛の背を過ぎ、狭い断崖の道を回り込むと、投入堂の優美な姿が忽然と現れる。
ただし投入堂は眺めるだけ、許可なくして立ち入り禁止である。
下山は来た道をそのとおりに戻るのだが、登りより下りの方が数倍危険だそう
だ。
(これは、相当危険ないじめか、罰ゲームではないのか・・・)
だいたい、投入堂までたどり着くほどの体力と精神力がある人間に、「家内
安全」とかなんて祈る、そんな一途な信仰心が必要なのであろうか。そもそもたど
り着けるのはバリバリ「無病息災」の鉄人だけであろう。
わたしは百万円積まれても、こんな登山はしたくない。
― 続く ―
→2008年「余部(餘部)鉄橋」の記事はこちら
→「湯村温泉(1)」の記事はこちら
→かわはぎの記事が載る「読んだ本 2009年2月」はこちら
城崎温泉を早朝に出発した。
温泉街の、まだひとがまばらな目抜き通りを抜けて、山越えして、日本海側の道
を鳥取方面に一路走る。
しばらくいくと、余部(餘部)鉄橋が目の前に現れた。
(おぉー、なんと・・・まだ原形をとどめているぞ!)
一年前と比べると、あちこちにクレーンが架かっていて工事中だが、その鉄橋
付近までいくと朝早いのにもかかわらず鉄道ファンが屯していた。いずれコンクリ
ート橋になるのだ。
湯村温泉への曲がり口を横目で懐かしく見ながら、さらに走り、途中のコンビニ
で簡単な朝食を食べる。
鳥取県にはいると、突然に渋滞が始まった。
海側の道に迂回したが途中で臨時の通行止めになっていて、ターンしてまた渋滞
の国道に戻るはめになる。
渋滞も迂回路の通行止めも、砂丘フェスティバルのせいである。
これといった他の迂回路もないので、あきらめてチビチビと進むことにする。
(それにしても・・・昨夜のカワハギは不味かったなあ)
止まったり前進したりをうんざりするほど繰り返していると、頭を使わないので
忘れようとしてることを思い出してしまう。
城崎温泉での夕食にとはいった店で、メニューにカワハギの活きづくりを見つ
け、喜び勇んでオーダーしたのだが、これが失敗だった。
キモは濃厚とはほど遠く、身も青臭くてダメ。思い出すと腹が立つ。カワハギが
旨ければ、他に食べたいものもいっぱいあったのだが、結局、酒だけガンガン呑ん
で酔っ払い、宿に帰るとすぐに寝てしまった・・・。
ようやく渋滞が解消し始めた。
ナビで再計算すると、途中の信号を左折しろと言う。拡大表示してみると、海側
の道をとらずに内陸の道をとって三朝温泉に連れていくつもりのようだ。
まあ、いいか。このナビは山越えが好きだからそうなるかもしれないが、まあ
今日はつきあうとしよう。
(やっぱり、山越えか!)
しばらく田園風景を走っていると、右折して三徳山(みとくさん)という山に
登っていった。標高900メートルくらいだから、ちょうど箱根の山みたいなもの
だ。
途中の峠で一服する。
下りの道の途中、バス停があるあたりで、夥しい車が駐車していてびっくりし
た。お祭か、と思ったがどうもそうでもないようで、相当なご利益がある寺院が
あるようである。
見覚えのある、三朝温泉の町にはいった。
「三徳山」を帰ってから調べてみてアッと驚く。かなり有名なのである。
三徳山の名前は「法身(美しい)」「般若(にごりのない)」「解脱(働きの
ある心)」の三つの徳に由来している。その全山が国の名勝・史跡に指定されて
いる。
山の全域が三徳山三仏寺の境内となっていて、中腹の断崖に浮かぶように建つ
国宝・投入堂は特に有名だ。
ただし、投入堂にたどり着くには、頑健な体力と強靭な精神力が必要だ。それに
危険がいっぱい。
登山道は投入堂までの一本のみであり、山頂まで登ることはできない。
三徳バス停から急な石段を登り三仏寺の本堂に着く。本堂裏手が登山口になって
いて、すぐに難所として知られるカズラ坂、むき出しとなった木の根を伝ってよじ
登る難所だ。さらに岩石の断崖に設けられた鎖をよじ登ると文殊堂に着く。
ここからは岩場の尾根道となり、危険な箇所が連続する、馬の背・牛の背を通
る。傾斜がなだらかで、樹木に覆われているから難所に見えないが左右両側とも
切り立った断崖絶壁で、過去に滑落事故や死亡事故が何度も発生している。
牛の背を過ぎ、狭い断崖の道を回り込むと、投入堂の優美な姿が忽然と現れる。
ただし投入堂は眺めるだけ、許可なくして立ち入り禁止である。
下山は来た道をそのとおりに戻るのだが、登りより下りの方が数倍危険だそう
だ。
(これは、相当危険ないじめか、罰ゲームではないのか・・・)
だいたい、投入堂までたどり着くほどの体力と精神力がある人間に、「家内
安全」とかなんて祈る、そんな一途な信仰心が必要なのであろうか。そもそもたど
り着けるのはバリバリ「無病息災」の鉄人だけであろう。
わたしは百万円積まれても、こんな登山はしたくない。
― 続く ―
→2008年「余部(餘部)鉄橋」の記事はこちら
→「湯村温泉(1)」の記事はこちら
→かわはぎの記事が載る「読んだ本 2009年2月」はこちら
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