温泉クンの旅日記

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下仁田温泉 群馬・下仁田

2006-12-23 | 温泉エッセイ
  < 紅梅の宿 >

 わたしの温泉旅もまったくの無目標ではない。

 かなりの行き当たりばったり、出たとこ勝負であることはまあ間違いないが、
目標はあるのだ。千湯達成、それと秘湯の制覇である。
 秘湯とは「秘湯を守る会」に属する宿の温泉であるが、こっちのほうは完全制覇
でなくても構わないとおもっている。あまりにも不便なところはマッピラ敬遠した
いし、塩素ぶち込みすぎの秘湯など願い下げだ。
 近々千湯を達成できるのは確実なので、新たな目標を考える日が近い。楽しみ
である。(筆者注:千湯は2003年秋に達成)
 
 下仁田温泉「清流荘」。群馬の秘湯のひとつである。
 看板をみて、国道から下仁田駅方面に折れる。途中までの路が整備されて、道幅
が広くなっていた。旅館までの残りの500メートルほどが、まだ狭くくねった道
だ。高知県の道のように、ときおりダンプカーが轟音をあげて迫ってくるので心臓
麻痺に要注意である。

 車を駐車場にとめて荷物を持ち、鉄製の細い橋で石ころだらけの渓流をわたる。
 池のある庭園のなかに本館、温泉棟、離れ、露天風呂、それに山女と鯉が泳ぐ
コンクリートの四角い池が点在している。
 ご主人自ら案内してくれた本館の二階の部屋は、最新式のトイレ付きで、まずま
ずといったところであった。窓のすぐ下の屋根がフロントだ。一泊二食14,000円。

 外壁のない廊下を歩いて温泉棟にいく。棟のそばに四角い露天風呂が両側に、
と思ったら山女の小さいのが群れで泳いでいた。
 古代檜の内風呂は三人はいればイッパイだが、幸いだれもいない。



 浴槽横の広いガラス窓の前にある、紅梅が美しい。
 檜の幹を利用した注ぎ口が、強酸を浴びたビニール製品のように恐ろしく醜く爛
れ変形している。泉質は炭酸水素塩泉、泉温が低いので沸かしているが効能はかな
り強そうである。

「効能が失われないような温度で沸かしているので、ぬるめとなっています。ゆっ
くりじっくり入浴してください」
 ご主人の言葉を思い出して、ゆっくり湯の中から紅梅を鑑賞することにする。
温泉の匂いはコダイヒノキの匂いに打ち負かされていて、ほとんどしない。

 古代檜とは説明文によると、直径2メートル余りの巨木で、海抜二千五百メート
ル以上の地に樹齢二千年を数え地殻変動・地震等で生木のまま倒木し更に百五十年
も 二百年も眠り続けた檜で、神木というべき貴重な材木だそうだ。
 浴槽に使用しても黒ずまず、古代檜から摘出される精油中には、血行の新陳代謝
を促進し、神経を安めるなどの森林浴と同じような効果があるらしい。よくわから
んが、身体によさそうだ。

 部屋の前を素通りして、露天に向かう。



 こちらも石畳の回廊でいける巨石組みの露天風呂は、寒いが、温泉の香りはい
い。やはり効能が強いのか、温泉がながれでる部分の巨石の表面が、黄色い漣(さ
ざなみ)のように変形している。鍾乳石かサンゴ礁のようにもみえる。内風呂の
爛れた注ぎ口とくらべると、こちらのほうが芸術的である。湯の中の巨石は、ふや
けたアイボリー色に変わっていた。

 夕食は猪鹿蝶がテーマの料理がならぶ。鯉の洗いと鯉の卵にはまいった。いのし
し鍋とこんにゃく料理、雉の吸い物。
「ここは、いつ電話してもいっぱいですね」
「それはそれは、あいすみませんねえ。なにぶん、離れと本館とあわせて12部屋ほ
どしかありませんから」

「離れは、なかなかよさそうですね」
「今日みたいに寒い日は、内風呂にちかいこちらのお部屋のほうが・・・」
 てきぱきと夕食を運ぶ仲居さんは、なかなかの答えぶりである。あとのほうに
出た新鮮な鹿の刺身と下仁田ネギのあつあつの掻き揚げがうまかった。

 また、内湯でゆっくりと入浴する。静かである。ここでは時間も、ことさらゆっ
くり過ぎていくようである。



 帰りに気がついたが、道の向こう側にも梅林があった。紅梅がきれいだが、白梅
もあるらしい。もうすこしすると、梅林も庭園もすべて咲きそろうとの話である。
 それほど街の喧騒から遠く離れていないのだが、あわただしい都会の日常をひと
とき忘れさせてくれる宿であった。

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