温泉クンの旅日記

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ラクーア

2006-12-20 | 旅エッセイ
  < ラクーア >

 かなりの温泉キチガイだから、ウィークディでも行きたくてたまらなくなること
がある。

 たいていは、もうすこしもうすこしだからと、なんとか週末までなだめすかして
しまう。
 ところが、どうにもなだめすかせない週があって、思い切って都心にある温泉
施設にいってみることにした。行くと決めるとこんどは定時が待ちきれずに、
メチャクチャな苦しい言い訳をして1時間ほど早退してしまった。空いている時間
のうちに、温泉にただただゆっくりはいりたかったのだ。



 温泉施設「ラクーア」は巨人戦の中継でおなじみの東京ドームの横にあった。
 入場料は入浴料込みの大人2,565円であるが、はいるときには取られない。すべ
て精算は帰りに行う。(朝6時まで滞在するとプラス1,890円) 

 ここではフロントで渡される、時計のようなリストバンドが重要なアイテムで
ある。飲み食いにも、ロッカーを開けるのにもこのリストバンドが必要である。
 時計にあたる部分に数字がはいっており、なにか仕掛けがある。リストバンドと
ともに渡された、きらきらするプラスチックの薄手の板状のものは、ロッカールー
ムの入り口で渡して、大小のタオルと着替えが入ったバッグを受け取る。

 例のリストバンドを鍵のセンサー部分に近づけることで開錠施錠できる木目調の
ロッカーで、裸になりタオル一本持って浴室に向かう。

 内風呂は一言でいうと、バブル絶頂時の熱海の超巨大温泉といった趣である。
ほんのすこし塩素くさい。泉質はナトリウム塩化物強塩泉。東京にありがちな黒い
温泉でないのが嬉しい。三万年以上前の氷河期の海水が地中に閉じ込められたもの
だそうだ。

 庭園風の大中の露天風呂。細かな石を埋め込まれた道は、足の裏に食い込む。
囲いのすぐ向こうからジェットコースターの落下音とともに若い女性の悲鳴が聞こ
えてくる。



 温泉で温まり満足したら着替えて施設の中を探索する。着替えは、サウナのアロ
ハを品良くしたような肌触りのいいベージュの半袖シャツとズボン。洋風のお手軽
作務衣といった感じである。

 温泉フロアの階下、レストランゾーンにある和食の食事処にいってみた。
 板張りに掘りごたつ風の大きな和食レストランのテーブルはまだ空いていた。
低いボリュームでジャズが静かに流れている。

 珍しいきびなごの刺身、と思って頼んだら炙ったきびなごだった。関あじの
刺身。ぴりからポテト。焼酎の水割り。メニューをみて適当にオーダーした。
 箸でつまんだ活きのいい関あじの刺身をクチに抛りこむと、焼酎の水割りをグビ
リと喉の奥に放り込む。冷たいアルコールが、湯上りの火照った身体のなかを滑り
落ちていく。
 いまはまだ、金曜日の午後六時前である。うーむ、小さな幸せがともる。満足。

 となりのテーブルに若い女性三人組が座った。みな、レイのお手軽作務衣を着て
いる。
 わたしと同じようにメニューを吟味している。静かである。

(どこかで見たようなシーンだな・・・)

 なんだっけ。映画のシーン? テレビドラマ? 小説か? うーん。
 おっ、閃いた。あれだあれ、囚人だ! 女囚の食事シーンじゃないか。もっとも
女囚がメニューをみることはないけど・・・。

 ふふふ。なんか可笑しくなって顔をそむけ声を殺して笑った。
(しかし、となりが女囚なら、そう言うわたしもおなじ囚人か。それも高級な関あ
じなんか食べているオレって、最後の晩餐をとっている死刑囚・・・?)

「もう一杯お代わりしたら、仕上げに『電気椅子』のお世話にでもなるか・・・」
 至極、当然の権利でもあるな。ぶつぶつ小さく呟く。



 なんでも同じフロアのリラクゼーションゾーンの奥に、無料の全身マッサージ機
があったのである。

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