温泉クンの旅日記

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大内宿と湯野上温泉駅

2020-07-19 | ぶらり・フォト・エッセイ
  <大内宿と湯野上温泉駅>

「これだ、これっ! 大内宿のこの写真が一枚撮りたかったんだ!」

 

 中央を貫く街道の両側に茅葺屋根の民家が連なる、その突きあたりにある山に登れば、大内宿の景観をこの構図で撮れるのはわかっていた。
 どん突きに、“止め石”のように建てられた横長の茅葺の民家があり、その脇に階段がある。その手造りめいた古くさい土と木の階段は恐ろしく急傾斜なのだ。二度ほど挑戦しようと思ったが、登りはいいとして下りの階段の危険さを考えて挫折してしまっていた。

 

 ところが階段を使わずに、正法寺を抜けるゆるやかな迂回路があると最近になって知ったのだった。

 さきほどまで駅でさんざん迷っていた・・・。

 

 

 湯野上温泉駅は会津鉄道会津線の駅で、いまでは貴重な茅葺屋根の駅である。
 茅葺の駅は他にもう一つ、JR九州の久大本線豊後中村駅もあるが近年(2010年)に建替え工事をしたせいもあって、こちらの湯野上温泉駅のほうがとても素晴らしい風情があると思う。

 

 駅舎のなかには茅の虫よけのための囲炉裏があって、火が入れられている。決して雰囲気づくりのためではなく実用的な存在なのである。 
 駅の脇には観光客のために足湯もつくられて無料で利用できて好評なようだ。ちなみに温泉好きのわたしだが足湯好きではないので空いていたが利用はしなかった。

 

「ここから大内宿までタクシーを呼ぶにはどうしたらいいでしょうか」
 タクシーは贅沢だが、歩けば一時間半でしかも上り坂だ。迷っていたのだが、ついに駅員に訊いてしまった。
 駅前のタクシー会社が廃業してしまったのでタクシーは呼べないが、駅から「大内宿」までは循環バスがあるという。きっと会津線とリンクしているのだろう、一時間に一本ペースのバスで往復千百円と手ごろで、それに飛びついたのだった。

 

 街道の両脇に立ち並ぶ民家だが、ほとんどが臨時休業である。新型コロナウィルスのせいで観光客がまだぜんぜん戻らないのだ。

 

 三澤屋にいくと、ちょうど開店したところであった。大内宿でここの蕎麦を食べずに帰るわけにはいかない。

 

 
 
 席に座ると、メニューを一応眺める。値段を確認するためで注文は決まっている。
 お茶を飲みながらじゃがいもを食べているとすぐに蕎麦が届いた。

 

 高遠そばとはなにか。三澤屋のHPには「会津の殿さまが信州で高遠藩で育ち、寛永二十年会津藩主になって以来、大根おろしそばを高遠そばと言っております(略)」とある。
 この”殿さま”とは高遠藩の藩主「保科正之」のことで、正之は二代将軍秀忠の四男、家康の孫であり三代将軍家光の異母弟、由緒正しい将軍の血筋である。

 何度も食べた蕎麦なので、前に書いた文章を引用しておく。

 

『さて、高遠蕎麦だが、ひと言で言えば、長葱一本を箸がわりにして食べるいわゆ
るぶっかけ蕎麦である。テレビなどによく出てくるからご存知のかたも多いと
思う。蕎麦も信州風の手打ちである。
 薬味の長葱一本で蕎麦を口元にすくいあげては啜り、ときおり薬味として葱を
齧るのだ。

 

 ほんのり甘みのある冷たい蕎麦ツユにひたされた信州風の蕎麦に、たっぷりの
大根おろしの辛味と、香ばしい鰹節が載っていて、加えて薬味のネギと混然一体、
絶妙な調和があり忘れがたい味をかもしだす。
 ふだん盛り蕎麦しか食べないわたしだが、この高遠蕎麦は別で、運ばれるやいな
や一気喰いしてしまう。

 長ネギ一本の箸で蕎麦を食べる自信がないというひとでも、最初にお茶と茶うけ
のお新香と割り箸がでるからまったく心配はいらない。
 だが、できれば長ネギを使って少しでも食べてほしいとは思うのだ。この高遠
蕎麦はそれでこそ、価値があると思う。』

 千三百二十円だったが、決して高くはない。この蕎麦、食べる価値ありだ。
 というよりも、わたしはもっぱらこの高遠蕎麦を目当てに訪れているのである。また必ず来るよ。約束する。



  →「三澤屋の高遠蕎麦」の記事はこちら
  →「湯野上温泉」の記事はこちら
  →「牛乳屋食堂と芦ノ牧温泉駅(1)」の記事はこちら
  →「牛乳屋食堂と芦ノ牧温泉駅(2)」の記事はこちら



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