<栗林公園(2)>
「箱松」と呼ばれる整えられた松の一群。手間がかかっていそうである。
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北湖と西湖を結ぶ水路にかかっている「梅林橋」と呼ばれる赤い橋だ。
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前方をボランティアのガイドのおじさんと、女性が歩いている。
歩く速度が同じぐらいなので、何度かわたしも合流して説明を盗み聞きしている
うちになんとなく一緒にグループとして移動するようになってしまう。
ガイドのおじさんは六十代前半のどこかくらいで、肩から重そうなバッグを提げ
ていて、ときおり景勝地のいちばんいい季節の写真を見せてくれる。写真はいずれ
も構図とかしっかりしていて相当の腕前である。
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松の根元に奇岩がいくつか配されているのだが、これもそのひとつ。名前がある
のだが聞き取れなかった。
日暮亭(ひぐらしてい)と呼ばれる茶室である。
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江戸時代にあった日暮亭という茶屋跡に明治31(1898)年に石州流の茶室を再建
された。
一般のひとでも使用することもできるらしい。
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入り口の門もなかなか雰囲気がある。
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紅葉の季節には、この茶室付近はさぞ素晴らしいことだろう。
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「あのォ、ひとつ質問してよろしいでしょうか」
先ほどからわたしはずっと気になっていることがあって、恐る恐る、ガイドの
おじさんに訊いた。
「なんなりと、どうぞ」
ガイドのおじさんが足をとめて、振り返った。柔和な顔をみて安心する。
「ここは栗林公園というのに、入り口からいままで松ばっかりですが、栗の木は
ないんでしょうか」
「それはですね。その名前の由来の通りに栗の木が多かったのですが、鴨猟の邪魔
だというので嘉永3年(1850)に切り払われてしまったのですよ」
おじさんは、よく聞いてくれましたとばかりに即答で説明をしてくれた。いくば
くかの栗の木は残っているとのことである。
「はああ・・・なるほどそうですか。それで納得できました。ありがとうござい
ます」
西湖を新日暮亭に向かっていくと、石壁(赤壁)があった。
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可憐なハスの花が咲いている。
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石壁の一部、桶樋滝(おけどいのたき)と呼ばれる箇所で足をとめた。
「お殿様がここを、滝の前あたりを通るときを見計らって、運び上げた水を崖の
上にいる家臣たちがタイミングよく滝の上から、いかにも自然の滝のようにみせて
落としたそうです。いまなら携帯電話などで連絡できますが、たいへんでしたで
しょうね」
「・・・・・ふうむ、それは正しくたいへんですねえ」
どえらい力仕事である。殿様が見えなくなるまで、せっせと桶で何十杯も水を
汲み滝に落とす家臣たちの苦労を想像して、ほとほと感心してしまう。
「そのころと違い、現在の滝は人工的にポンプで汲み上げた水を流すようになって
います」
―(3)へ続く―
→「栗林公園(1)」の記事はこちら
「箱松」と呼ばれる整えられた松の一群。手間がかかっていそうである。
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北湖と西湖を結ぶ水路にかかっている「梅林橋」と呼ばれる赤い橋だ。
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前方をボランティアのガイドのおじさんと、女性が歩いている。
歩く速度が同じぐらいなので、何度かわたしも合流して説明を盗み聞きしている
うちになんとなく一緒にグループとして移動するようになってしまう。
ガイドのおじさんは六十代前半のどこかくらいで、肩から重そうなバッグを提げ
ていて、ときおり景勝地のいちばんいい季節の写真を見せてくれる。写真はいずれ
も構図とかしっかりしていて相当の腕前である。
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松の根元に奇岩がいくつか配されているのだが、これもそのひとつ。名前がある
のだが聞き取れなかった。
日暮亭(ひぐらしてい)と呼ばれる茶室である。
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江戸時代にあった日暮亭という茶屋跡に明治31(1898)年に石州流の茶室を再建
された。
一般のひとでも使用することもできるらしい。
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入り口の門もなかなか雰囲気がある。
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紅葉の季節には、この茶室付近はさぞ素晴らしいことだろう。
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「あのォ、ひとつ質問してよろしいでしょうか」
先ほどからわたしはずっと気になっていることがあって、恐る恐る、ガイドの
おじさんに訊いた。
「なんなりと、どうぞ」
ガイドのおじさんが足をとめて、振り返った。柔和な顔をみて安心する。
「ここは栗林公園というのに、入り口からいままで松ばっかりですが、栗の木は
ないんでしょうか」
「それはですね。その名前の由来の通りに栗の木が多かったのですが、鴨猟の邪魔
だというので嘉永3年(1850)に切り払われてしまったのですよ」
おじさんは、よく聞いてくれましたとばかりに即答で説明をしてくれた。いくば
くかの栗の木は残っているとのことである。
「はああ・・・なるほどそうですか。それで納得できました。ありがとうござい
ます」
西湖を新日暮亭に向かっていくと、石壁(赤壁)があった。
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可憐なハスの花が咲いている。
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石壁の一部、桶樋滝(おけどいのたき)と呼ばれる箇所で足をとめた。
「お殿様がここを、滝の前あたりを通るときを見計らって、運び上げた水を崖の
上にいる家臣たちがタイミングよく滝の上から、いかにも自然の滝のようにみせて
落としたそうです。いまなら携帯電話などで連絡できますが、たいへんでしたで
しょうね」
「・・・・・ふうむ、それは正しくたいへんですねえ」
どえらい力仕事である。殿様が見えなくなるまで、せっせと桶で何十杯も水を
汲み滝に落とす家臣たちの苦労を想像して、ほとほと感心してしまう。
「そのころと違い、現在の滝は人工的にポンプで汲み上げた水を流すようになって
います」
―(3)へ続く―
→「栗林公園(1)」の記事はこちら
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