朝ランの途中、ヴィクトリアステーション小樽住吉店の前を通りかかると、看板を大きな爪がつかんでいた。
40年の長きにわたり営業していたお店の閉店は寂しい限りだ。
このヴィクトリアステーションといえば、思い出す話がある。
学生時代、友人がバイト終わりに腹ペコでこの店にきた。
下宿生活で普段ろくなものを食べていない彼にとって、ここのハンバーグは滅多に食べることのできないご馳走だった。
お目当てのハンバーグを注文した彼は、さっそくおかわり自由のスープを取りに行った。
スープの味はコンソメ、コーン、中華と3種類、どれも美味しく彼の口に合った。
お腹が空いていることもあって、おかわりをしまくり、20杯ぐらい飲んだところで、満を持してハンバーグが席に届けられた。
湯気の上る熱々のハンバーグを目の前にして歪んだ表情を浮かべた彼は、スープではちきれんばかりのお腹を擦りながら、こう叫んだ。
「腹いっぱいで、もう食えねぇー」