夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

リメイク お気に入りの作品 日本の美 三味線 中村貞以筆 その1

2025-02-27 00:01:00 | 掛け軸
掛け軸の保管場所が無くなってきたので、作品を整理しようと整理している作品に本日の作品が混じっていました。あらためて作品を鑑賞すると、「この作品はいい!」と感じ入り、処分する作品から除きました。



リメイク お気に入りの作品 日本の美 三味線 中村貞以筆 その1
絹本水墨淡彩軸装 金襴三段表装 一文字は本竹屋町金襴 
軸先象牙 共箱二重箱
全体サイズ:縦1358*横577 画サイズ:縦380*横420



中村貞以は明治33年に生まれ、昭和57年に没(1900年~1982年)に没しています。享年は81歳です。大阪に生まれ、はじめ長谷川貞信に、のち北野恒富に師事していいますが、幼児に両手に火傷を負い、指の自由を失ったため、絵筆を両手に挟む「合掌執筆」により描いています。情緒豊で優美な美人画から、戦後は現代的風俗を内面性豊に捉えた人物画を描いています。
院展理事。芸術院賞受賞。



前述のように幼時期にて両手に大やけどを負い、指の自由を失ったため、以後絵筆を両手ではさんで描んでいますが、そのようなことを感じさせない絵の出来栄えですね。 



美人画の歴史を語るにおいて中村貞以の存在は欠くことのできない存在とされますが、大阪画壇特有のエグみとでも言うべき要素が殆ど見られません。これは師である大阪画壇の雄、北野恒富の影響から脱して自立しようとする思いからもしれません。



美人画という言葉を余り好まなかった貞以は、装飾された女ではなく、生の女のリアルな姿をすくい取りたい、という彼ならではの絵画的誠意とでも言うべきものに基づいて画業を進めたように思われます。美人画という形式よりも何気ないリアルさに画風が変化する半ばの作品であろうと推定されます。
 


三味線をひく女性の髪の結や着物姿も簡素な女性を実にリアルに表現しています。そのリアルさは主に動きに表現されています。

口ずさんでいる表現・・??



三味線を弾く手の動きの表現もうまい。



三味線の弦を絞る強さも手に表現されています。



全体にうすいシミが発生していますが、まだ「締め直し」するほどでもありません。

掛け軸は表具もその鑑賞のひとつです。



表具師にはその絵に合った表具が求められます。当方では風鎮もその鑑賞のひとつだと思っています。



時にはその落款と印章さえも鑑賞の対象となります。



二重箱の塗箱に納まっています。題字カバーや二重箱から抜き出す際に使う引手もきちんと施されています。

 

箱書も鑑賞の対象ですし、指物師による箱の出来栄えも鑑賞のひとつです。

 

掛け軸は日本古来の美意識が凝縮された芸術品です。なぜ最近はこれほど人気がないのでしょうか?

とある方は掛け軸を「黴臭い」と評されて当方の掛け軸の蒐集を貶されましたが、かなりのショックを受けました。



保管や取り扱い、飾り方によっては、絵自体がむき出しの掛け軸は痛みますが、「黴臭い」とは・・・。なんと言われようと直接鑑賞できる掛け軸は日本文化が凝縮された美術品ですので、これからも大切にしていこうと思います。








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