夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

蜀機道図 吉嗣拝山筆 その2

2015-03-31 04:24:08 | 掛け軸
地震で右手をうしない左手だけで絵を描いたので「左手拝山」と称されました画家の作品です。題名の「蜀機道」は与謝蕪村の作品で著名です。この与謝蕪村の作品は現在サントリー美術館で開催中の『若冲と蕪村』展に出品されており、今週の日経新聞にも掲載されていました。90年間行方が解らなかったらしいということは有名な話です。 「繪にしても何にしても、具さに人生の辛酸を嘗めて來た後でないと、實際の味は出て來ないもので、容易にまたその味に食ひ入ることも出來ぬものである。」という言はこの作品を描いた年の言葉です。 辛酸を嘗めた者・・、そう苦労人したことのない人ばかりが世に出るこの頃はつまらないことばかり、疲弊だけを繰り返す。 . . . 本文を読む

山水図 伝青木夙夜筆 その2

2015-03-27 05:06:52 | 掛け軸
落款には年号の記載のあるものは物議を醸し出すことがあります。本作品の落款には「乙卯夏日写 余夙夜 押印(□□余氏)」とあり、「乙卯」というのは1795年(寛政7年)であると考えられますが、青木夙夜は没年が不詳で1802年、1781~1789年という二つの記載があり定かではないようです。本作品が新作で1795年の作とすると前者の1802年が正しいということになるかもしれませんが、逆に1789年に没していると贋作となります。真贋は不明ゆえに断定できませんが興味深い年号のある作品です。 . . . 本文を読む

絵唐津 呼継向付 その2

2015-03-23 05:22:27 | 陶磁器
「古唐津は幕末頃から一部のお茶人の間で人気が出始め、少しずつ発掘が始まった。窯場の側には物原(ものはら)といって、失敗作を捨てたゴミ捨て場がある。そこを掘り返して使えそうな作品を見つけ出すのである。骨董の世界では、幕末に物原から拾われて伝世した古唐津を「発掘伝世」とか「中途伝世」と呼んでいる。さらに戦後になって古唐津人気が高まると、自治体が条例などで禁止しても窯跡の盗掘が後を絶たなくなった。それまではゴミに過ぎなかった物が金目の物に変わったのである。」という話 . . . 本文を読む

海老之図 倉田松涛筆 その16

2015-03-19 06:18:03 | 掛け軸
イセエビの語源の一つに「兜の前頭部に位置する前立(まえだて)にイセエビを模したものがあるように、イセエビが太く長い触角を振り立てる様や姿形が鎧をまとった勇猛果敢な武士を連想させ、「威勢がいい」を意味する縁起物として武家に好まれており、語呂合わせから定着していったとも考えられている。」という説があります。 . . . 本文を読む

老松苔石小点図 伝椿椿山筆 その2

2015-03-16 05:05:44 | 掛け軸
松は日本よりも中国で徳を現し、「秦の始皇帝が狩で大雨にあい ちいさな松の木の下に雨宿りしたところ その松はにわかに大木となり葉を繁らせ 帝を雨から守りました。帝は大夫の位を松に与え 以来松は大夫と呼ばれます。」ということのようです。老松は「千代に八千代にさざれ石の巌となりて苔のむすまで大君に栄えあるように御守せよ。」と言われています。 . . . 本文を読む

風雨牧童図 寺崎廣業筆 その33

2015-03-14 00:27:49 | 掛け軸
牛と牧童を描いた作品は「十牛図」が代表的で「人間が本来持っている仏性、真実の自己を牛に喩え、路頭に迷う童子がやがて聖なる笑いへ至る為の修行の道程を 十枚の絵に表したもの」という意図で描かれる作品で、数多くの画家が描いています。その中で牛の背に乗って山を下り帰路の着く題材は牧童が笛を吹く姿で描かれることが多い。本作品もなんらかの意図で「十牛図」という題材に縁のある絵柄であろうと推察されます。 . . . 本文を読む