
源内焼は同じ型を使った作品で釉薬を替えている作品が数多くあります。本日紹介する作品もそのひとつです。本日紹介する作品も残存数は少ないものの同じ図柄の作品があります。

この程度の大きさになると源内焼でも大型の部類で、揃いで使用目的に製作するというより飾る目的で製作した部類の作品となります。

同時期に作られたというより、製作時期が少しずれて作られているようです。表面よりも背面の釉薬に大きな違いあります。

本日紹介する作品は下記写真の左の作品ですが、さらに同じ図柄でより大きな作品もあり、本ブログで以前に紹介した作品には下記の右写真のように緑釉一色の作品があります。

この作品とは裏側にも違いがあり、高台内まで全部釉薬が掛かっているのに比して、本日紹介する作品は眼鏡底のようになっていて、釉薬が掛かっていないものです。同じ文様ですが、大きさが小さくなっており、このような同じ図柄で、大きさの違う作りは他の源内焼では全く見たことがありません。この図柄が人気が高かったと思われます。

源内焼 三彩(西湖)山水図大皿(その2) その149
五島美術館出版「源内焼」同手掲載:作品番号15「黄釉山水図大皿」
口径270*高さ45 誂箱
下記写真は当方にて補修した後の写真です。

下記写真は補修前です。

下記の写真も修復後の写真です。

保管時に他の作品と重ねていたりすると、非常に脆い胎土なので、表面の釉薬に擦れが発生し作品がきれいに見えなくなります。

個人蔵の多い源内焼ですので、キチンした保存状態であるのかは危惧されています。

むやみに洗浄しても釉薬の剥離が進むだけですので、洗浄にも細心の注意が必要ですね。

うまく洗って元の美観を損ねないように金繕いすると見栄えは格段に良くなります。

縁も傷みやすく、この作品には口縁部には共色の補修跡があります。

ともか脆く、完全な状態で遺っている作品数は限りがあるので、保管にはかなりの配慮が必要となります。

他の釉薬の剥げは美観を損なわない程度に金繕いや漆塗しておきました。剥げをそのままにしておくとそこから釉薬の剥がれは進行する恐れはあります。

前述のように口径が違うもので文様が同じというのは他の源内焼の作品ではありません。同じ型から釉薬を変えるもの、手持ちの有無の違いは多数ありますが、おそらく本作品は縮小した型を作ったものでしょう。大きいほうが先か、小さいほうが先かは不明ですね。

冒頭のように同手の作品で緑釉一色のより大きな作品を本ブログにて紹介しています。こちらの作品は高台内にも釉薬がかかっています。
源内焼 緑釉(西湖)山水図大皿 その1
五島美術館出版「源内焼」掲載:作品番号15「黄釉山水図大皿」
口径323*高さ47 誂箱

大きさは32センチを超え、源内焼ではかなり大きな作品となります。

図集には同じ図柄の下記の作品が掲載されています。こちらは珍しい黄釉の一色となっています。
五島美術館出版「源内焼」掲載:作品番号15「黄釉山水図大皿」

図集に掲載の記事は下記写真のとおりです。

この作品の説明は下記のとおりです。本構図は中国の西湖を描いたもののようですね。

源内焼では、このような代表的な佳品は個人蔵が多いとされます。

美術品蒐集とは所蔵するのが目的ではなく、それを将来に伝える役目が目的だとか・・・。肝に銘ずべき言葉ですね。