夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

源内焼 三彩樹下仙人図高脚付鉢 その149

2025-02-19 00:01:00 | 陶磁器
当方にて蒐集対象としている源内焼は、江戸時代中期(1755年 宝暦5年)に平賀源内の指導によって讃岐国の志度(現在の香川県さぬき市志度)及びその周辺でにて始まったとされています。最近の源内焼の投稿でも説明していますように、大河ドラマでも話題の人物となっている「平賀源内が興した焼き物」です。

*下記写真は本日紹介する作品と最近紹介した「褐色釉獅子香炉文角皿」とを並べて展示しているものです。



技術的には桃山時代以降、中国の華南三彩と同系列の軟質の施釉陶器で、緑、褐、黄などの鮮やかな釉色が特徴であり、精緻な文様はすべて型を使って表され、世界地図、日本地図、欧米文字などの斬新な意匠が見られ、実用性よりも鑑賞本位に製作されました。

源内焼 三彩樹下仙人(人物)図脚付角鉢
誂箱
最大幅313*最大奥行253*最大高さ73
*五島美術館発刊
「源内焼(平賀源内のまなざし) 作品番号79」同型掲載
*財団法人平賀源内先生顕彰会発刊
「平賀源内先生遺品館企画展 作品番号64」同型掲載

下記の写真は入手時の写真で、汚れがある状態です。源内焼は意外に汚れている状況で出品されていることが多いのですが、洗浄すると驚くほどきれいになることが多々あります。

*ちなみに本作品の入手時の価格はほぼ10万円ですが、源内焼の価格としては高い方でしょう。



下記写真が洗浄後です。



平賀源内が源内焼についてどのような指導をしたのかの詳細は不明とされています。金森得水著『本朝陶器攷證』巻一に、宝暦5年(1755年)長崎に遊学した源内は「交趾焼の技術を学んだ」とありますが源内焼を興すよりかなり早い時期の記録となります。その後源内の書簡などから「故郷の讃岐国志度の産業振興のため新しい三彩釉の軟質陶器の製作を指導した」と推測されています。



源内焼については、生産窯址やその規模、陶工と平賀源内との関わり方など、まだ明らかになっていない部分が多く、また多くの作品が大名家や幕府高官などに収蔵されたため、近年に再評価されるまでほとんど世に知られませんでした。現在も美術館などより、個人が所蔵している作品が多いとされます。

*本作品を明治期の再興された源内焼と分類する方がおられるかもしれませんが、作風から間違いなく江戸期の源内焼と判断されます。

**下記写真は洗浄前



源内焼は見込みの主題に、七賢人、樹下仙人、鍾馗、詩文、寒山寺風景、西湖山水など中国古典を典拠とするものが多く認められる反面、平住専庵著・橘守国画『唐土訓蒙図彙』の「山水輿地全図」を元にした万国地図や行基図風の日本地図、源内が所持していた西洋の動物図譜を元にした作品など、東洋とも西洋とも分けられない独自の意匠も見られます。この幅広い知見のある趣からも平賀源内が関わったと推察されるようです。



*本作品は源内焼では非常に珍しい意匠の作品と思われます。源内焼そのものが軟陶器なので、個人所蔵が多い中で完全な状態で保存されている可能性が少ないとされています。本作品のように大きなもので、擦れも少なく完全な状態のものは少ないようです。


何に使うものでしょうか? 単なる飾り物なのかもしれませんね。



源内焼としては大型の作となり、底には印銘などはありませんが、かなり高級志向の作と推定されます。



脚にはちょっとしたデザインが施されています。



本作品のように少し高めの脚の付いた作品は源内焼では珍しいようです。当方の所蔵作品では下記のような作品を以前に紹介しています。

源内焼 褐釉竜宮文脚付鉢
共色補修跡有 台付 誂箱
幅280*奥行225*高さ50



この作品を図録で調べると下記のような作品がありました。



火鍋のような形をしたものを載せておく鉢であったようです。このような鉢で遺っている作品は説明にもあるように4点あるようです。補修跡はあるものの当方の作品で5点目となるのかな?

五島美術館発刊「源内焼(平賀源内のまなざし) 作品番号79」同型掲載は下記の作品です。



説明書には下記のように記されています。



財団法人平賀源内先生顕彰会発刊「平賀源内先生遺品館企画展 作品番号64」同型掲載の作品は下記の作品です。



両方の図鑑掲載の作品よりも本作品のほうが状態が良さそうです。源内焼は数が少ないこと、また個人蔵が多いこと、軟陶器ゆえ脆弱なこと、釉薬や胎土が剥離しやすいことから、状態の良い作品はどんどん少なくなっています。また紹介したふたつの図録意外に目立った図録がなく、世に知れる機会が少ないということもあります。



本作品はふたつの図鑑からもサイズが微妙に違うことから揃いではなく、一品ずつの鑑賞を目的とした作品と推定されます。

ともかく保管箱もない状態ですので、保管箱を誂えて大切に保管しておくことにしましょう。

源内焼は古九谷と同じようにもっと注目すべき作品群だと思いますが、意外に知らない人が多く、ただでさえ残存数が少ないのに、このままでは希少価値だけになってしまいかねませんね。











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