ある休日のこと。『アオイホノオ』第2刊・p.11にある
「999,ドラマ編 ドラマ編ってなんやの」
というトン子さんのセリフを思い出していた。そうだ,たしかこのLP,姉貴がもっていたんじゃないかと。
果たしてその休日,偶然姉貴がやってきた。そして,LPレコードの有無を聞くと「あそこにしまったはず」という。
捜すと出てきた。写真の通りの品質状態で,レコードBOXにしっかり入っていた。日焼けもないし,これはスゴイ。姉貴いわく,カセットにバックアップして普段はカセットを聞いていたという。そうだよ レコードは消耗品だから,テープで普段は聞くんだったよな。
購入したのは,1979年9月28日,とジャケットの裏面角に書いてある。左のTV番のLPは,1978年12月24日購入と記してある。
劇場版『999』。つい先日,DVDで録画してあったものを久々に見て感動していた。やっぱりアニメは「ドラマ」なんだと。見た目ももちろん重要だけど,そんなものを超えるのはやっぱり物語じゃないかと。3Dとか,そんな小手先の技術じゃないんじゃないかと。感動のあまりちょっと涙が出てしまったほどだ。はじめてみた小学生のときには「TVと違うな...」ぐらいにしかわからなかったが,姉貴にはわかっていたのであろう。
それにしても高価な商品だ。ドラマ編に至ってはLP2枚組で3600円,TVサントラ版でさえも2600円だ。消費税のない時代・メイドインジャパンがほこらしかった時代のものだが,オズマの当時お小遣いが月額500円ほどだったから,姉貴はどうやってお金を貯めていたのだろう。まさか親が買ってくれるはずのものではないし。姉貴はたぶん中学生のころだ。それでも3~4ヶ月のお小遣いを貯めて買ったのだろう。
しかし,これを再生しようにもレコードプレーヤーがない。したがって,CDへのバックアップもできない。音楽に浸りながらドライブすることなぞ夢の世界だ。どうしたものか....。どこかにないだろうか。こういうレコード音源をCD化してもらえる業者って。普通の音楽ならいくらでも復刻版があるのでたやすい。いまでも数十年前の音楽をCDで聞くことは簡単だ。レンタル屋にもあるしね。しかし,これはちょっとないぞ。
劇場版『999』は,いうまでもなく,それまでのアニメ映画の常識をことごとく覆す名作だった。
たしかに調べると,アニメが子供向けと言われていた時代に,まさにアニメブームの夜明けを宣告するかのような興行成績を残している。このレコードもそうとう売れたようである。それだけでなく,文部省推薦作品だ。「機械化帝国を破壊する」=「グローバリゼーションの崩壊」といまはとらえている自分にとってこれは意外だ。国力に余裕があったせいなのだろうか。
うっかりしていたが,これらレコード内部の説明書き,いや,解説書がこれまたいい。頭に焼き付いていた記憶が蘇ってくる。そうだよ,俺も,松本零士作品では『999』が一番だよ。池田昌子さん=メーテルの声にいつもうっとりしていたよ。鉄郎=野沢雅子さんの名演にいつも感動していたよ。
そして気がつくと,かおりくみこ「やさしくしないで」の詩が心に染み入るのだった。
『巨人の星』だけじゃなかったジャン,オズマのアニメ。自分でもびっくりしたのだった。