Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

葡萄の地所の名前

2006-01-21 | ワイン
ヘッセン州の知事ローランド・コッホは、有力政治家であり、表向きはアンゲラ・メルケル首相の後見人となっている。今週もシュプレンガー出版の独禁法違反メディア吸収合併に支持を表明している。保守政党の闇献金疑惑やスイスやルクセンブルクでのマネーロンダリングへの関与に拘らず、その政治力は衰えず今もってポスト・メルケル候補でもある。

その政治姿勢は、ご多聞に漏れず青年保守政治出身そのもので民営化と市場原理の導入を掲げたものである。ヘッセン州議会選挙を前にして、幾らか話題になっているのが有名な州立ワイン醸造所の民営化である。この醸造所は、ショーン・コネリー主演の「薔薇の名前」のロケの場所となったエバーバッハ修道院で有名である。19世紀の初めの世俗化に伴いナッサウ家の手に渡り更にプロイセン王家に渡っている地所など、またヘッセン・ダルムシュタット公爵の所持から州の所持へと移行された地所など、その歴史的に高名なワイン地所の数々はリューデスハイムからマイン河のホッホハイム、ダルムシュタットとハイデルベルクの間に位置するベルクシュトラーセのベンツハイムまで広がり、全て合わせてドイツで最大200ヘクタール規模の地所である。

さて、現知事が公爵気分でいるかどうかは判らないが、完全民営化する気持ちは無いようで、様々な改革を奨めている。その一つに現在のライン河畔の町エルトヴィッレの本醸造蔵が老朽化しており、エバーバッハ修道院に近い名ワイン地所のシュタインベルクの斜面の地下に近代的な醸造設備を完備させようとするものである。これは、トスカーナ地方でよく行われているような方式らしいが、ドイツでは殆んど見かけないだけでなく、環境面での憂慮がされている。しかし、反対する地元のワイン農家等の団体の本音は州の醸造所の近代化による競争力の相対的な変化にあるようで、利害関係が真っ向から衝突する事になるので容易に解決されない問題であろう。

全体の状況は皆目分からないのであるが、このような州立の機関の合理化は何よりも必要であるが、それでも公の機関として効率的なワイン生産が可能とは思われない。こうした公の仕事から、ラウエンタールやエバーバッハやアママンハウゼン等の歴史的に最も重要なワイン地所であっても、必ずしも最も素晴らしいワインが生産されるとは言い難い。よって、自らは出来る限り生産規模を抑えながら、一等の地所を管理して、力のある生産者へと地所を貸与して行く事が重要であろうか。

年間五十万から百二十万ユーロの赤字額は尋常ではない。それが、2001年からの組織の民営化で解決されるものではなく、積極的な近代化による市場への参入を通して解決しようとしている。しかし、ワイン作りは決して工業製品ではないので、設備投資と原料の厳選だけでは解決出来ない多くの問題がある。つまり、現在考えられているような方策では、尚の事質の低下を招く恐れがあり、商業的にも厳しくなるのではないだろうか?先ず何よりも徹底した合理化を自らの組織に施して行くべきで、真実の民営化の道を歩んで貰いたい。

その規模や地所からして、ドイツワインの将来への影響は大きく、その利害関係も絡まって地方選挙戦に大きく影響する話題となりそうである。
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