旅行から帰って来るとSACDプレーヤーが届くように手配しておいた。明け方ベットに入ったところだが、午前八時前に目覚ましを設定しておいた。予定通り荷物を受け取る。想像していたより軽い感じである。その印象は、睡眠不足を伴って最初の音出しにも共通していた。デノンDCD1510AEと称する日本で1500SEとして知られている欧州向けの商品である。32bit7192kHzのコンヴァーターの素子AK4399は旭化成が作っているとは知らなかった。
つまり所詮デジタル機器などはアナログ回路で音の質を変えるだけでそれだけという、とてもこじんまりとした印象を受けた。特に弦楽器などは、玩具のように、つや消しのようにちゃちに響いた。エージングの問題があるので、週末中集中的に鳴らした。最も審査で重要になるのはスタジオで知っている「生音」のCDがどのように鳴るかである。原音に忠実に鳴るかであって、そこでは一切の音作りは否定的な要素となる。要するにモニター的な比較である。
弦楽四重奏を鳴らしたが、とても素晴らしく細かな部分も聞き取れるのに反して、ソニーのDATのDAを繋いだ方がより新鮮でスタディオモニターもしくは卓台を通した原音に近い感じがした。暫くそのまま聞いていると、なるほどCDドライヴが優れているのかとても高品質で生々しい音が響くのだが、そのうちに高弦などに量子化歪が感じられるようになった。なるほどこれで鋭く突き刺さるような音になっているのだと気が付いた。そしてプレーヤーのDAに切り替えるとその歪が取れてとても素直な音になった。反面、鋭さが無い分暈けた引っ込んだ感じになるのだ。
この手で最も一般的なのは中音域をイコライザーで下げたような感じで所謂欧州トーンを作る方法である。するとJBCのような張り出した音にならずタンノイサウンドとなるのである。もう一つ面白いと思ったのは残響の響き方で、お気に入りのザビーネ・マイヤーのEMI録音はなにか残響が後ろに逃げるように聞こえる。若干人工の残響を加えていてそれが目立つようになった可能性もありえる。
スタジオ機器はレヴォックスが多いのでそれらとは全く機械的に比較の対象とならない。特にトレー周りの堅牢性や早送りや頭だしの速度、十分の一秒単位のディスプレーは放送局などでは欠かせない。要するにオーディオマニアが求める音楽性やHIFIなどとはまた違う基準ということでもある。勿論アフターサーヴィスを含めての業務機器を個人の居間に持ち込む価値は無い。それでもトレーの出し入れの機械音や駆動はもう少し質が高くても良いと思うが、トレーの塗装などは如何にも振動などに拘っている感じで印象は悪くない。
さてここに来て初めてピュアダイレクトという機能を使ってみた。取扱説明書に詳しくないのだが、どうもデジタル出力とディスプレーなどを遮断することでHIFI的に純粋な音を追及するというものらしい。これを押してみて、消えたディスプレーの背後に鳴る音を聞いて瞬時に理解した。全く上の篭ったような引っ込んだサウンドが表に出てきて、まさに録音中のモニターの音を髣髴させた。少なくとも24BITマスターの音は再現できている感じである。それ以前に念のためにヘッドフォーンも使って比較したが、これならばヘッドフォーンで確認するまでのことが無く原音に近い。
久しぶりにマスター相当の音を聞いて、その録音風景や感覚が蘇り、テーク毎の出来不出来などさえ記憶に戻ってきた。そしてその出来上がりの良さに改めて驚愕した。この録音ならSACDで聞いてみたいと思わせるのだが、それ以上に制作自体が素晴らしく、恐らく曲によっては現存する最も優れた録音に違いないことを再認識した。
ここまで異なることにも驚愕したが、一般にはそれを感じさせないような作りになっているということはデジタル出力自体がかなり質の高いもので、DATのDAがかなり上質に鳴っていたことが実証された。逆に歪のように感じられたのはデジタル処理の問題なのだろうか。
USB-A を使った入力を試してみた。手元には上質のMP3音源が無いので試しにYOUTUBEやライヴストリーミングをダウンロードした。楽劇「ヴァルキューレ」が全曲で30メガほどにしかならないのでこれでは話にならないと思った。実際それをこのプレーヤーで鳴らしてみるとなるほど実況録音の程度ならばそれほど違和感は無いのだが、かつてのデジタルやアナログのラジオ生中継と比べると話にならない。音楽家なども喜んでアイポットなどを使っているが、もしこれで十分だとしたら全くSACDどころかCDでさえ要らない。なるほどオーディオメーカーが軒並み店じまいして行く筈で、そもそもHIFIなどは特殊な趣味で、結局はラジカセの大市場がこれに移ったに他ならないと認識する。
MP3の音質がこの程度なら、SACDなどに興味を持つ市場も今後も限られて結構厳しいと感じる。なるほど生録音の臨場感が全てだと感じる市場も大きく、所謂録音芸術だとかが顧みられることがなく、ラディオ放送も手薄になっていることから、複製芸術としてのメディアはもはやあまり重要視されなくなってきているようだ。技術の発展が全く其処に寄与しなくなってきているのは面白い。
さて、購入決定前に気になっていた批判点、例えばCDの読み取りに時間が掛かりすぎるなどの欠点は、使ってみると全く問題なく、こうして時間を置いた方が昔のLPの儀式に似て、じっくり聞く機会を与えるかもしれない。兎に角、SN比がCDとは思えないほど大きく感じるので、スピーカーから音が浮き上がってくる瞬間は生演奏におけるアウフタクトと同じような効果がある。また、あまり使い勝手の良くないと書かれるリモコンは事実で、これは致し方ない。
連邦共和国内で数台出ていた棚卸のシルヴァー色の商品価格640ユーロの価値は無いことはない。なぜか黒色は人気が無いようでその後440ユーロまでに落ちている。明らかにシルヴァーの方が高級感がありそうで、高値安定しているようだ。後継の商品1520AEは、デジタル入力が付いているが一部ではなぜか音質に関してあまり評判が良くないのは回路が複雑になっているからだろうか?若干改善されていると言う評価もあるが、標準価格への上積みの価値は疑わしい。
SACDディスクの安売りなどを調べたが、価格は一枚5ユーロ以下でも、ジンメルン指揮のトーンハレ管弦楽団のマーラーでは態々ハイファイテストに購入しても殆ど鳴らすことが無いように感じた。いづれもっと興味深いディスクが安売りになれば試してみたい。
参照:
チャイナ製の昔の名前など 2014-07-25 | テクニック
理のある変換とその転送 2006-04-20 | テクニック
骨董化した空間のデザイン 2005-04-03 | 文化一般
究極のデジタル化 2004-11-29 | テクニック
つまり所詮デジタル機器などはアナログ回路で音の質を変えるだけでそれだけという、とてもこじんまりとした印象を受けた。特に弦楽器などは、玩具のように、つや消しのようにちゃちに響いた。エージングの問題があるので、週末中集中的に鳴らした。最も審査で重要になるのはスタジオで知っている「生音」のCDがどのように鳴るかである。原音に忠実に鳴るかであって、そこでは一切の音作りは否定的な要素となる。要するにモニター的な比較である。
弦楽四重奏を鳴らしたが、とても素晴らしく細かな部分も聞き取れるのに反して、ソニーのDATのDAを繋いだ方がより新鮮でスタディオモニターもしくは卓台を通した原音に近い感じがした。暫くそのまま聞いていると、なるほどCDドライヴが優れているのかとても高品質で生々しい音が響くのだが、そのうちに高弦などに量子化歪が感じられるようになった。なるほどこれで鋭く突き刺さるような音になっているのだと気が付いた。そしてプレーヤーのDAに切り替えるとその歪が取れてとても素直な音になった。反面、鋭さが無い分暈けた引っ込んだ感じになるのだ。
この手で最も一般的なのは中音域をイコライザーで下げたような感じで所謂欧州トーンを作る方法である。するとJBCのような張り出した音にならずタンノイサウンドとなるのである。もう一つ面白いと思ったのは残響の響き方で、お気に入りのザビーネ・マイヤーのEMI録音はなにか残響が後ろに逃げるように聞こえる。若干人工の残響を加えていてそれが目立つようになった可能性もありえる。
スタジオ機器はレヴォックスが多いのでそれらとは全く機械的に比較の対象とならない。特にトレー周りの堅牢性や早送りや頭だしの速度、十分の一秒単位のディスプレーは放送局などでは欠かせない。要するにオーディオマニアが求める音楽性やHIFIなどとはまた違う基準ということでもある。勿論アフターサーヴィスを含めての業務機器を個人の居間に持ち込む価値は無い。それでもトレーの出し入れの機械音や駆動はもう少し質が高くても良いと思うが、トレーの塗装などは如何にも振動などに拘っている感じで印象は悪くない。
さてここに来て初めてピュアダイレクトという機能を使ってみた。取扱説明書に詳しくないのだが、どうもデジタル出力とディスプレーなどを遮断することでHIFI的に純粋な音を追及するというものらしい。これを押してみて、消えたディスプレーの背後に鳴る音を聞いて瞬時に理解した。全く上の篭ったような引っ込んだサウンドが表に出てきて、まさに録音中のモニターの音を髣髴させた。少なくとも24BITマスターの音は再現できている感じである。それ以前に念のためにヘッドフォーンも使って比較したが、これならばヘッドフォーンで確認するまでのことが無く原音に近い。
久しぶりにマスター相当の音を聞いて、その録音風景や感覚が蘇り、テーク毎の出来不出来などさえ記憶に戻ってきた。そしてその出来上がりの良さに改めて驚愕した。この録音ならSACDで聞いてみたいと思わせるのだが、それ以上に制作自体が素晴らしく、恐らく曲によっては現存する最も優れた録音に違いないことを再認識した。
ここまで異なることにも驚愕したが、一般にはそれを感じさせないような作りになっているということはデジタル出力自体がかなり質の高いもので、DATのDAがかなり上質に鳴っていたことが実証された。逆に歪のように感じられたのはデジタル処理の問題なのだろうか。
USB-A を使った入力を試してみた。手元には上質のMP3音源が無いので試しにYOUTUBEやライヴストリーミングをダウンロードした。楽劇「ヴァルキューレ」が全曲で30メガほどにしかならないのでこれでは話にならないと思った。実際それをこのプレーヤーで鳴らしてみるとなるほど実況録音の程度ならばそれほど違和感は無いのだが、かつてのデジタルやアナログのラジオ生中継と比べると話にならない。音楽家なども喜んでアイポットなどを使っているが、もしこれで十分だとしたら全くSACDどころかCDでさえ要らない。なるほどオーディオメーカーが軒並み店じまいして行く筈で、そもそもHIFIなどは特殊な趣味で、結局はラジカセの大市場がこれに移ったに他ならないと認識する。
MP3の音質がこの程度なら、SACDなどに興味を持つ市場も今後も限られて結構厳しいと感じる。なるほど生録音の臨場感が全てだと感じる市場も大きく、所謂録音芸術だとかが顧みられることがなく、ラディオ放送も手薄になっていることから、複製芸術としてのメディアはもはやあまり重要視されなくなってきているようだ。技術の発展が全く其処に寄与しなくなってきているのは面白い。
さて、購入決定前に気になっていた批判点、例えばCDの読み取りに時間が掛かりすぎるなどの欠点は、使ってみると全く問題なく、こうして時間を置いた方が昔のLPの儀式に似て、じっくり聞く機会を与えるかもしれない。兎に角、SN比がCDとは思えないほど大きく感じるので、スピーカーから音が浮き上がってくる瞬間は生演奏におけるアウフタクトと同じような効果がある。また、あまり使い勝手の良くないと書かれるリモコンは事実で、これは致し方ない。
連邦共和国内で数台出ていた棚卸のシルヴァー色の商品価格640ユーロの価値は無いことはない。なぜか黒色は人気が無いようでその後440ユーロまでに落ちている。明らかにシルヴァーの方が高級感がありそうで、高値安定しているようだ。後継の商品1520AEは、デジタル入力が付いているが一部ではなぜか音質に関してあまり評判が良くないのは回路が複雑になっているからだろうか?若干改善されていると言う評価もあるが、標準価格への上積みの価値は疑わしい。
SACDディスクの安売りなどを調べたが、価格は一枚5ユーロ以下でも、ジンメルン指揮のトーンハレ管弦楽団のマーラーでは態々ハイファイテストに購入しても殆ど鳴らすことが無いように感じた。いづれもっと興味深いディスクが安売りになれば試してみたい。
参照:
チャイナ製の昔の名前など 2014-07-25 | テクニック
理のある変換とその転送 2006-04-20 | テクニック
骨董化した空間のデザイン 2005-04-03 | 文化一般
究極のデジタル化 2004-11-29 | テクニック