(承前)シュトックハウゼンの1996年のダルムシュタットでのセミナーのそれとハースの想いは異なっていた。68歳になっていた二十世紀後半のモダーンを代表していた作曲家とは、つまり生活と芸術が乖離したような所謂現代音楽が社会的な意味合いを持ち得ることはないという観想である。
そのような乖離は、ラッヘンマンにもノイヴィルトにも無いとしている。リゲティの「マカーブル」における懐疑は、時には露出狂的だが、あまりにも現実的なものである。
音楽は人のエロを描いているのではないが、その思い通りにならない苦を描いている。シューベルトにおいてもその通りで、チャイコフスキーの同性愛もその通りだ。
そして、目の前にいる若しくは理想の聴衆を思い描いているとも語っているハースは、自分が聴衆の様に先ず聴いているという。そしてその効果を問いかける。今回の「ブルートハウス」の展開の部分にも短く映画音楽のように響くパッセージも出てくる。しかしそれとは最も異なるのはライヴで演奏されているという事になるようだ。
OBSERVATIONS: BLUTHAUS - Behind the scenes zum neuen Festival JA MAI
ハースの三部作をして、技術的な困難を乗り越えることで今後劇場のレパートリーになるだろうとする批評の根本はここにある。
その心は、既に言及した作曲家の最新インタヴューの「痛みを分かち合う」ことを可能とする音楽劇場への創作態度であり作曲作法となっている。これが二十世紀後半ではなくして今漸くこうして創作された背景であり、その歴史的な視線とも一致する。
恐らく多くの聴衆にとっては、百年前のアルバン・ベルク作曲「ヴォツェック」以降のリヒャルト・シュトラウスなどのエピゴーネンとされる復古的な楽劇の数々や戦後のアロイスツィムマーマン作曲「ディゾルダーテン」、アンティオペラの「ルグランマカーブル」そして最早オペラではないメシアン作曲「サンフランソワダシス」に、モンテヴェルディからモーツァルト、ヴァ―クナーを経て突然音楽劇場の頂点としてハースの三部作が輝くとされても中々理解できないかもしれない。
それが、今回の企画の核であった。ドルニー支配人のアイデアとされるハースの三部作をオペラの最初の頂点にあったそれを組み合わせた。そしてこれでハース作の音楽劇場が二十世紀後半のモダーンを越えてきたことが知らされるのだが、当夜のプログラム冊子には今回の企画として同様に重要なモンテヴェルディについてハイデルベルク大学の音楽研究所の前ディレクターが重要な文章を出している。(続く)
参照:
芸術音楽で可能となること 2022-05-19 | マスメディア批評
モーツァルト所縁の劇場 2022-05-21 | 音
そのような乖離は、ラッヘンマンにもノイヴィルトにも無いとしている。リゲティの「マカーブル」における懐疑は、時には露出狂的だが、あまりにも現実的なものである。
音楽は人のエロを描いているのではないが、その思い通りにならない苦を描いている。シューベルトにおいてもその通りで、チャイコフスキーの同性愛もその通りだ。
そして、目の前にいる若しくは理想の聴衆を思い描いているとも語っているハースは、自分が聴衆の様に先ず聴いているという。そしてその効果を問いかける。今回の「ブルートハウス」の展開の部分にも短く映画音楽のように響くパッセージも出てくる。しかしそれとは最も異なるのはライヴで演奏されているという事になるようだ。
OBSERVATIONS: BLUTHAUS - Behind the scenes zum neuen Festival JA MAI
ハースの三部作をして、技術的な困難を乗り越えることで今後劇場のレパートリーになるだろうとする批評の根本はここにある。
その心は、既に言及した作曲家の最新インタヴューの「痛みを分かち合う」ことを可能とする音楽劇場への創作態度であり作曲作法となっている。これが二十世紀後半ではなくして今漸くこうして創作された背景であり、その歴史的な視線とも一致する。
恐らく多くの聴衆にとっては、百年前のアルバン・ベルク作曲「ヴォツェック」以降のリヒャルト・シュトラウスなどのエピゴーネンとされる復古的な楽劇の数々や戦後のアロイスツィムマーマン作曲「ディゾルダーテン」、アンティオペラの「ルグランマカーブル」そして最早オペラではないメシアン作曲「サンフランソワダシス」に、モンテヴェルディからモーツァルト、ヴァ―クナーを経て突然音楽劇場の頂点としてハースの三部作が輝くとされても中々理解できないかもしれない。
それが、今回の企画の核であった。ドルニー支配人のアイデアとされるハースの三部作をオペラの最初の頂点にあったそれを組み合わせた。そしてこれでハース作の音楽劇場が二十世紀後半のモダーンを越えてきたことが知らされるのだが、当夜のプログラム冊子には今回の企画として同様に重要なモンテヴェルディについてハイデルベルク大学の音楽研究所の前ディレクターが重要な文章を出している。(続く)
参照:
芸術音楽で可能となること 2022-05-19 | マスメディア批評
モーツァルト所縁の劇場 2022-05-21 | 音