(承前)遅れて劇場に到着。それでも二景には間に合った。先ずはトイレに行かせて貰って、景の変わり目を待とうとしたら、ここなら入れると言われた。音響が悪そうなので断り、もう少しよい2列目の場所に案内させる。ウサギの埋葬のところは、初日とは反対方向の近くであるとフランシスコが参列者に挨拶する様子なども観れた。やはり1列目の自分の席がいいと思ったのは、横に合唱団が入って来て舞台を隠して仕舞った時である。音楽的にも舞台の声を真っ直ぐの位置で聴くので言葉が明晰に。同時に奈落の中も近くよく見えるのが特等席に近い。しかしそれは3部であって1部は奈落は閉まっていて舞台の紗の奥に楽団が並んでいる。それはそれで紗が開いてから舞台の天頂が見えたりと面白い効果もあった。籟病者が出てくる三景で、プロジェクターがその黴状の菌を大写しにする。
初日の時は最初からそのボイスのウサギの存在が強すぎてあまりにも揺さぶられるものが多かったが、そこを抜くと動機の繰り返しなどは若干意味合いが薄くなっていたゆえか、寧ろ籟病者とのディアローグそして天使の声ととても感動的だった。
悦びの動機と下降動機、やはりとても上手に出来ているのだが、おばさんが初日の後に語っていたグレゴリオン聖歌とモードの繋がりがよく分かるのも、やはり必要な音が出ている事だと改めて認識する。それは今回改めて聴き直した初演で小澤征爾が抜群の指揮をしている。その後20回ほど上演されているようだが、その指揮を越えたことはなかったであろう。作曲家とも打ち合わせながら座付き楽団が可能なテムピを採用して無理なく正確な音化を心掛けていて、当時のインタビューでもメシアン先生がとんでもなく難しい曲を作ってとぼやいていたのだが、とても健闘していて、小澤の名前を残す歴史的な仕事となる。
しかしそれでも足りないのが十分なモードの色付けで、今回のエンゲルが最も精妙に出していた色である。やはり自らがダブルべースを爪弾いていたぐらいだかその辺りのバランス感覚が勝れていて、成程指揮者シャニなどとも共通点がある。但し全く鬱陶しい音にならないのはまさしく新しい音楽の初演魔の音感覚に違いない。それどころか、三部の別れの歌はまさにプッチーニの「ジャンニスキッキ」の歌でもあり、「パルジファル」だけではない影響が分かる。
そうした音感覚が人々を足元から揺さぶる音響表現としている。二部の野外での退場から数時間ぶりに再び今度は奈落に入ってくるととても強い拍手が起こった。このように熱狂的に迎い受けられることは珍しい ― ペトレンコ指揮のオペラ上演にはそういう劇場的な熱狂はない。如何に一部から二部へと全ての感動がここに繋がりフィナーレでの熱狂に向かったがよく分かるエピソードであった。(続く)
参照:
生中継される「三部作」 2022-08-14 | 文化一般
愛する者のみが赦される 2023-06-13 | 文学・思想
初日の時は最初からそのボイスのウサギの存在が強すぎてあまりにも揺さぶられるものが多かったが、そこを抜くと動機の繰り返しなどは若干意味合いが薄くなっていたゆえか、寧ろ籟病者とのディアローグそして天使の声ととても感動的だった。
悦びの動機と下降動機、やはりとても上手に出来ているのだが、おばさんが初日の後に語っていたグレゴリオン聖歌とモードの繋がりがよく分かるのも、やはり必要な音が出ている事だと改めて認識する。それは今回改めて聴き直した初演で小澤征爾が抜群の指揮をしている。その後20回ほど上演されているようだが、その指揮を越えたことはなかったであろう。作曲家とも打ち合わせながら座付き楽団が可能なテムピを採用して無理なく正確な音化を心掛けていて、当時のインタビューでもメシアン先生がとんでもなく難しい曲を作ってとぼやいていたのだが、とても健闘していて、小澤の名前を残す歴史的な仕事となる。
しかしそれでも足りないのが十分なモードの色付けで、今回のエンゲルが最も精妙に出していた色である。やはり自らがダブルべースを爪弾いていたぐらいだかその辺りのバランス感覚が勝れていて、成程指揮者シャニなどとも共通点がある。但し全く鬱陶しい音にならないのはまさしく新しい音楽の初演魔の音感覚に違いない。それどころか、三部の別れの歌はまさにプッチーニの「ジャンニスキッキ」の歌でもあり、「パルジファル」だけではない影響が分かる。
そうした音感覚が人々を足元から揺さぶる音響表現としている。二部の野外での退場から数時間ぶりに再び今度は奈落に入ってくるととても強い拍手が起こった。このように熱狂的に迎い受けられることは珍しい ― ペトレンコ指揮のオペラ上演にはそういう劇場的な熱狂はない。如何に一部から二部へと全ての感動がここに繋がりフィナーレでの熱狂に向かったがよく分かるエピソードであった。(続く)
参照:
生中継される「三部作」 2022-08-14 | 文化一般
愛する者のみが赦される 2023-06-13 | 文学・思想