(承前)パロディーとしてのヴァルツァー、ハリー・クッパ―の演出は記念碑的なものだったようだ。スカラ座で15ユーロで購入したプログラムは今回新たに編集されていて新たに書き加えられているが、イタリア語ゆえにまだ目を通し切れていない。然し評にはシュテファン・ツヴァイク著「昨日の世界」を思い起こさせるとある。その舞台映像からでもあるのだが、20世紀初頭から観たハプスブルクの欧州がこの楽劇の主題でありホフマンスタールの作品だったことは間違いがない。
ネットに上がっている初日の批評をざっと目を通した。その中でもそれに関する即ちメスト指揮でもメータ指揮でも浮かび上がらなかったこの制作の本質的なところに言及してあるものがある。
それは既にここで言及したようなオペラブッファを引き継いだ叙唱風の音楽のつけ方であったりする完璧な反面、楽団の自由度の高い演奏によってテューバによって舞台が浮きたつというように作曲者シュトラウスが望んだ闊達で決して悉く制御されている様には感じられない指揮の卓越と更に今後のミラノでの発展を期待したいという評が的確である。
同時にグロイスベェックによる歌唱と演技が最早その役のキャラクターを越えてのオックスというこの演出における人物を描き出しているということと、既に言及したペトレンコが与えるアウフタクトにおける楽団側の若干のぎこちなさというようなものでの相乗効果であったことを再認識する。
ミュンヘンからの隣のおばさんの言うような「何時ものようにやればやるほど改善されていく」というそれとはまた質の異なるものを感じていたのを思い出す。それはこの作曲自体の秀逸さとあれだけの楽器編成における喜劇性の音楽への集大成であったのを認識させる。それもなるほど評にあるように「その調的な色彩感」ともあるのだが、本年こうして楽劇「エレクトラ」からその前には「影のない女」、「サロメ」と毎年の様に聴いてきて、三幕一景の舞台裏音楽などを使った音響的な対比とその作風自体がメタ楽劇となっていることを知らしめる。
それは舞台芸術的にも3D効果のプロジェクターや舞台上での当時のオールドタイマー、そして音を軋ませる舞台展開と、この作品への俯瞰を推し進めるには十分な効果を作っていた。
そこで、2014年のザルツブルクでの初演、スカラ座での公演と、その批評をも改めて目を通しておかなければいけなくなったのだが、今回の再演では何がそうした発見を導いたかということになる。
なるほど、歌手陣においてもマルシャリンを歌ったストロヤノーヴァは往年に比べると声が出なくなっていたようだが、それでもこれだけの舞台を少なくともミラノ程度の劇場では比類のないキャスティングだった。
そしてその評価をそして何よりも初演後百年を経て漸くこの作品の真価を舞台化して改めて名実共にしたのがペトレンコ指揮だったという評価は共通しているようだ。ここにペトレンコ指揮が音楽劇場においても超一流の腕を振るったのは間違いない。(続く)
参照:
Milano - Teatro alla Scala: Der Rosenkavalier, Ugo Malasoma, OperaClick Oct.20 2024
Milano, Teatro alla Scala – Der Rosenkavalier, Stefano Balbiani Recensioni, Connessi all'Opera 16 Ottobre 2024
Kirill Petrenko conquers La Scala with a splendid Rosenkavalier Laura Servidei, Bachtrack 14 Oktober 2024
開花するスカラ座の薔薇 2024-10-14 | 文化一般
再演「ばらの騎士」初日へ 2024-10-11 | 文化一般
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それは既にここで言及したようなオペラブッファを引き継いだ叙唱風の音楽のつけ方であったりする完璧な反面、楽団の自由度の高い演奏によってテューバによって舞台が浮きたつというように作曲者シュトラウスが望んだ闊達で決して悉く制御されている様には感じられない指揮の卓越と更に今後のミラノでの発展を期待したいという評が的確である。
同時にグロイスベェックによる歌唱と演技が最早その役のキャラクターを越えてのオックスというこの演出における人物を描き出しているということと、既に言及したペトレンコが与えるアウフタクトにおける楽団側の若干のぎこちなさというようなものでの相乗効果であったことを再認識する。
ミュンヘンからの隣のおばさんの言うような「何時ものようにやればやるほど改善されていく」というそれとはまた質の異なるものを感じていたのを思い出す。それはこの作曲自体の秀逸さとあれだけの楽器編成における喜劇性の音楽への集大成であったのを認識させる。それもなるほど評にあるように「その調的な色彩感」ともあるのだが、本年こうして楽劇「エレクトラ」からその前には「影のない女」、「サロメ」と毎年の様に聴いてきて、三幕一景の舞台裏音楽などを使った音響的な対比とその作風自体がメタ楽劇となっていることを知らしめる。
それは舞台芸術的にも3D効果のプロジェクターや舞台上での当時のオールドタイマー、そして音を軋ませる舞台展開と、この作品への俯瞰を推し進めるには十分な効果を作っていた。
そこで、2014年のザルツブルクでの初演、スカラ座での公演と、その批評をも改めて目を通しておかなければいけなくなったのだが、今回の再演では何がそうした発見を導いたかということになる。
なるほど、歌手陣においてもマルシャリンを歌ったストロヤノーヴァは往年に比べると声が出なくなっていたようだが、それでもこれだけの舞台を少なくともミラノ程度の劇場では比類のないキャスティングだった。
そしてその評価をそして何よりも初演後百年を経て漸くこの作品の真価を舞台化して改めて名実共にしたのがペトレンコ指揮だったという評価は共通しているようだ。ここにペトレンコ指揮が音楽劇場においても超一流の腕を振るったのは間違いない。(続く)
参照:
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