■ 顔を洗うと考える ■
私は毎朝顔を洗う時に考える事があります。
それは、「お湯がなかなか出てこない」という事。
カラスの様にチャッチャと洗面を済ませる私は、
給湯器からお湯が蛇口に到達する頃には、
顔を洗い終えています。
給湯配管の中に溜まった、バケツ1杯はあろうかというお湯は、
ただ配管の中で冷めてゆきます。
夏場は、室温を上昇させます。
洗顔はお湯を使いたいという明確な意思でお湯を使いますかが、
例えばトイレの後、ちょっと手を洗う時も、給湯器が作動します。
何故か・・・それは我が家の水栓がシングルレバーの混水栓だからです。
私がエコマニアですから、なるべく温度調整を「水」だけの方にしておきます。
しかし、家族の他の誰かが使用した後は、「温水」になっています。
うっかり蛇口をひねると・・「ボッ」っと給湯器が意味無く作動します。
■ 2栓式なら ■
「お湯」と「水」にコックが分かれた2栓式なら、
この無駄は省けます。
確かにシングルレバーの混水栓は便利ですが、
全国の家庭や、オフィスのトイレや、ホテルで
意味も無く「お湯」が浪費されるとすると、
どのくらいの浪費になるのでしょうか?
■ 家庭での給湯のエネルギー ■
家庭での給湯のエネルギーは意外に大きく、
家庭の消費エネルギーの28%と言われています。
実は、自然エネルギーを一番活用出来るのは「給湯」です。
即ち、太陽熱温水器の活用です。
■ 太陽電池の2倍のエネルギー効率 ■
太陽熱温水器は昔からあります。
私が子供の頃には、瓦屋根の上に温水パネルが設置されている光景よ良く見ました。
オイルショックの後で、省エネよりも、経済性で導入した家庭が多かったと思います。
実は、太陽熱温水器のエネルギー効率は高く、
最新式では50%近くになります。
太陽電池の変換効率が10-19%なのに比べれば2倍以上です。
さらに、温水はエネルギーの蓄積性に優れています。
断熱されたタンクに温水を溜めておくだけ。
これが、太陽電池ですと、蓄電池が必要となります。
電気自動車を例に取るまでもなく、
蓄電池は高価で、さらに寿命があります。
今回、経済産業省は10年間の時限処置として、
太陽光発電の電力を1KWh当たり50円で買い取る決定をしました。
電力会社の電力が25円ですから、ほぼ倍の金額です。
太陽電池発電は高コストで、発電によって電力会社から買う電力を削減するだけでは
イニシャルコストを回収出来ません。
ですから、余った電力を、高額で買い取る事が普及への条件となります。
電力会社が太陽光発電の電力を買い取るお金は、
電気の使用者が負担します。
国の資産では、1家庭で1ヶ月250円程度になるとしています。
太陽光パネルを設置した家庭は、電気をあまり買いませんので、
負担は太陽光パネルを持たない家庭の負担になります。
なんともスッキリとしない話です。
■ なぜ、太陽熱温水器でなくて太陽電池なのか ■
では、なぜ、エネルギーの変換効率の高い、太陽熱温水器ではなく
太陽光発電を政府は推進するのでしょうか?
先ず、太陽熱温水器の導入は、ガス会社の売り上げを圧迫します。
夜間電力を利用した電気温水器の普及も妨げます。
太陽熱温水器は構造が簡単なので、中小の会社も参入出来ます。
逆に言えば、大企業のメリットの薄い技術です。
一方、太陽電池は半導体で出来ています。
製造には大掛かりなプラントが必要となり、
当然、大きな会社がその製造を担います。
蓄電池も最新の蓄電池は、高い製造技術を要します。
そして、何よりも現在の半導体不況で、
半導体メーカーは太陽電池の需要増加に期待しています。
■ 時間軸を無視した省エネ ■
太陽電池のイニシャルコストの回収には、長い時間を要します。
従来の電気の買取り金額では、15年経っても償却は無理でした。
蓄電池も太陽電池パネルも経時劣化してゆきます。
15年後に満足な発電量を維持出来るかは疑問が残ります。
イニシャルコストを回収する前に、蓄電池を交換するケースもあるでしょう。
要は現在の発電効率では、
太陽電池発電は、製造時に大量のエネルギーを投下する事で、
二酸化炭素の排出を、一時的に増やしてしまう可能性の方が大きいのです。
自然エネルギーの促進議論には、
時間的概念が欠落しています。
15年後、20年後にエネルギー収支がゼロになる技術は、
現在における二酸化炭素の発生を増大させます。
地球温暖化防止が危急の問題と言いながら、
実際取られる対策では、二酸化炭素を多く発生させてしまうのです。
■ 正のフィードバック ■
温暖化論者は「正のフィードバック」と口にします。
「今対策を怠ると、排出された二酸化炭素の正のフィードバックにより
修復不能な事態に陥る危険性が高まる・・・。」と。
もし、それが本当ならば、
将来的な15年、25年の二酸化炭素を、
製造時に排出してしまう太陽電池の様な技術が、はたして有効なのでしょうか?
プリウスも全く同じ問題を抱えています。
蓄電池やモーター、インバーターの製造に大量の二酸化炭素を排出します。
短い人で5年、長い人で10年プリウスに乗って、
初めて、エネルギー収支がつりあいます。
営業車のように、街中をチョコチョコと、
しかも長時間走り続ける用途にこそハイブリットは適しています。
サンデー・ドライバーが購入する場合は、10年以上乗り続ける覚悟が必要です。
■ ローテクこそ最大のエコ ■
温水栓をシングルレバーから、ダブルレバーに変える。
太陽光発電では無く、太陽熱給湯を選択する。
プリウスに乗って、燃費にチャレンジするくらいなら、自転車で買い物に行く。
結局、ローテクこそが究極のエコロジーです。
ローテクを楽しむ心よ豊かさを教育する事が、環境教育ではないでしょうか。