■ ハイブリットカーの真実 ■
私はハイブリットカーがどうしても好きになれません。
ガソリン自動車としても中途半端だし、
電気自動車としても中途半端な感じかしてなりません。
両方の良い所を取っているようで、
実は最適化が非常に難しく、
いろいろ複雑な装置や技術を使って、
綻びを修正している事を進化と勘違いしているように感じられてなりません。
3代目プリウスなんて、ここから1%、あそこから1%と効率化を積み上げて、
38Km/ℓという10-15モード燃費をようやく達成しています。
その為に、普通は必要としないパーツが随分と増え、
資源消費型の、エコとは言えない奇妙な車になってしまっています。
■ 「ハイブリットカーは本当にエコなのか」という本 ■
そんな私の疑問にぴたりの本がありました。
「ハイブリットカーは本当にエコなのか」 宝島新書出版 両角岳彦 著
とりあえず、これ1冊を読めば、ハイブリットの問題点が理解できます。
■ ドイツ車の環境性能の向上 ■
ガソリン車やディーゼル車に改善の余地が残されています。
フォルクスワーゲンを初め欧州の自動車メーカーは、
現在、この点をじっくりと研究開発し、実績を積み上げています。
① エンジンの高能率化
② ミッションの伝達効率の向上(機械式クラッチの性能向上)
③ 高性能ディーゼルエンジンの開発
この3点を地道に改善した結果が以下の数字です。
① フォルクスワーゲン ゴルフ 2ℓディーゼルターボ
170馬力 最高時速 222km/h 18.9km/ℓ(欧州燃費テスト)
② フォルクスワーゲン ポロ 1.2ℓ ディーゼルエンジン
30.3km/ℓ(欧州燃費テスト)
何だ、3代目プリウスの38km/ℓには遠く及ばないじゃないかとお思いでしょうが、
この本によると、プリウスの燃費データは、実走行状態では7割程度まで落ちるそうです。
これは、10-15モード燃費テストが実走行状態から乖離している為です。
さらに、10-15モード燃費テストは車台の上で測定されますが、
車重の影響を考慮する為に、台車に車重相当の負荷を掛けて測定が行われます。
実は、この補正のステップが粗く設定されていて、250Kg刻みとなっています。
プリウスはエンジンルームの遮熱材や、床下マットの無い軽量化した車格でテストを受けています。
この車は車重は、250Kg刻みの上限値ギリギリだそうです。
悪く言えば250Kgのサバを読んで、好成績を収めた事になります。
3代目プリウスの燃費は、欧州試験では27km/ℓ程度で、ポロに劣ります。
■ プリウスは環境付加価値を高めて、環境負荷が大きい ■
プリウスは技術とコストと材料を投入して、環境付加価値を追及した車です。
しかし、結果的には資源を浪費そて、環境負荷の高い車になっています。
これは、日本のファミリーカーが「走る居間」と化していった経緯に似ています。
家族4人やその友人が快適に移動できる車を追求した結果、
日本のワンボックスカーは独自の進化を遂げて行きました。
様々なシートアレンジ、収納の数々・・・。
その結果、運転手を尻目に、子供と奥さんが菓子を食いながらDVDを見るという、
日本の家族の家庭内の姿が、外を走り回るという事態に到りました。
プリウスも省エネの本質を忘れて、
「ハイブリットはここまで出来る」という事を無駄に追求する奇形車と化しています。
■ 忍び寄る中国ハイブリット車 ■
ハイブリット車の技術的心臓部は蓄電池です。
プリウスはコスト面から、出来るだけ小さな容量の蓄電池を上手に使って
高い環境性能を実現しています。
しかし、大容量のリチウムイオン電池を大量に搭載出来れば、
プリウスのチマチマした技術など不要になります。
中国にBYDという電池メーカーがあります。
現在、リチウムイオン電池お生産量で世界一を誇る会社です。
潜水艦の電池の納入実績もあり、アメリカからの技術支援もあって、
今後が有望視される会社です。
このBYDに、ファンドの帝王バフェット氏が出資して、
10%の株を取得しました。
BYDは自動車メーカーを買収し、ハイブリット車市場に参入しています。
http://kunisawa.txt-nifty.com/kuni/2008/12/post-5c14.html
その性能は不明ですが、トヨタも市場投入していないプラフイン・ハイブリットです。
■ 安価な電池の脅威 ■
プリウスもプラフイン化の話はありますが、実現していません。
ニッケル水素電池の容量が小さいので、プラグイン化のメリットが少ないのです。
しかし、BYDのハイブリット車は、容量の大きなリチウムイオン電池を使用しています。
携帯電話や、三菱の電気自動車に利用される電池です。
リチウムイオン電池は、ニッケル水素電池よりも充電容量が大きく、小型化が可能で、
さらに、急速充放電の性能もニッケル水素電池よりも優れています。
しかし、電極に使用されるコバルトは算出量も限られており、
未だに高価な電池です。
このリシチウムイオン電池を大容量搭載して、
なんと日本円で200万円の価格だそうです。
日本では、電池だけでこの値段になってしまいます。
性能の程は不明ですが、(電池の性能によりますが)
大容量もリチウム電池は、回生ブレーキの電力を充分溜める事が出来、
充放電特性に優れる事から、容易に高性能なハイブリットカーを実現出来ます。
トヨタがテンコモリの技術で解決した問題を、
中国車は、電池の物量で解決してしまいます。
世界最大のリチウムイオン電池メーカーですから、
コストが採算ラインに乗るのも夢では無いでしょう。
■ 国内でこそ一人勝ちのプリウスだが ■
国内でこそワゴンRを抜いて一人勝ち状態のプリウスですが、
エコカー減税に支えられて売り上げ台数とも言えます。
さらに、破格のプライス設定で、薄利の商品となってしまっています。
トヨタは余剰生産力を抱え、プリウスのバックオーダーも抱えていますので、
既存ラインをプリウスのラインしたいのでしょうが、
電池の生産が追いつかないとも言われています。
しかし、私は、儲けの出難いハイブリットの増産に、
トヨタ社内にも危機感を持つ社員が多いのではないかと思います。
プリウスは欧州では、高性能ディーゼル車に対してメリットを主張出来ません。
アメリカは未だに、実体経済が地を這い、購買力は復活しません。
さらに、広大な土地を高速で移動するアメリカや、
アウトバーンを高速で移動するヨーロッパでは、プリウスが苦手とする使用状況です。
先の原油高騰の折、アメリカでもプリウスの販売は好調でしたが、
今、アメリカ人はもっと安くて燃費の良い車を求めています。
結局、私達はプリウスの国内販売をだけを見て、
トヨタは今は不調だけど、世界一のハイブリット技術で必ず復活すると思い込んでいます。
しかし、プリウスこそが、日本の携帯電話と同様に、車の技術のガラパゴスであり
進化の袋小道に陥った車ではないでしょうか?
トヨタはプリウスで危機に陥る・・・そんな予感がしてなりません。