■ アメリカで動き始めたグリーンバブル ■
今朝の読売新聞は一面で、アメリカが「新エネルギー大国」に舵を切った事を伝えています。
モハビ砂漠の風力発電施設の写真を掲載して、
2008年度にアメリカはドイツを抜いて世界一の風力発電大国になっと持ち上げています。
http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20091011-OYT1T00766.htm
この記事では、「オバマ大統領が温暖化対策を経済対策の柱と位置づけたのを機に
官民のマネーが流入。風力発電施設は建設ラッシュの様相だ」と伝えています。
■ オバマとは無関係な風力発電の隆盛 ■
次のグラフを見てください。
アメリカの風力発電投資は2004年頃から急速に拡大しています。
オバマが大統領戦に勝利したのが2008年11月ですから、
それ以前の風力発電への投資は、ブッシュ政権下で行われた事は自明の事実です。
むしろ、リーマンショック後の経済の混乱で、
環境分野の投資もほぼ凍結されていたはずです。
ここきて漸く、投資マネーが本格的に動き出す気配があります。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11895520091011
ロイターの記事ですが、ジョージ・ソロスが10億ドルを環境分野に投資するようです。
ただ、これもアドバルーン的な発表だと思います。
■ アメリカは風力発電に適している ■
アメリカは国土も広く、砂漠なども広がり、
安定した強風が吹く地域では、風力発電の適した国です。
ルート5をLAからサンフランシスコに向かって北上していくと、
サクラメントとの分岐点当たりで、車が真っ直ぐに走らなくなります。
何なんだろうと思いながら進んで行くと、丘の上に巨大な風車が林立しています。
とてもSF的な光景に、思わず息を呑みました。
写真を撮ろうとしましたが、車が安定しません。
何と、強烈な横風を受けていたのでした。
風力発電とは、まさにこんな場所に適しているのです。
LAから、東に砂漠を走っていても、風力発電は良く見かけました。
もう10年近く前の事ですが、当時からカルフォルニアは環境政策が盛んでした。
砂漠の風力発電所で気になったのは、壊れた風車の数です。
鉄塔から外されて地上に転がる巨大は発電機、
プロペラが外れた発電機、
さらに、回転していないプロペラなど、結構な数がありました。
正確ではありませんが、1割程度の故障率があるのではないでしょうか?
設備の一割が稼動しないというのは、投資としては如何なものかと思った事を思い出します。
アメリカはこの様に、10年以上前からテキサスとカリフォルニアを中心に
風力発電に投資をしてきました。
しかし、風力発電の電力は、アメリカ全土の消費電力の1%程度です。
逆に言えば、ヨーロッパに比べれば、大した事は無いのです。
これを、大々的に書き立てる読売新聞の記者は、数字の読み方を間違っています。
■ ジョージ・ソロスは儲かる分野に投資すると明言 ■
投資家のジョージ・ソロス氏は
「利益の出る投資機会を探すが、気候変動問題の解決に真に貢献できる投資も求めていく」
と言っています。
裏を返せば、温暖化などどうでも良いのです。
儲かればイイという事。
これからは環境分野のこのような投資マネーが群がってきます。
ドイツの環境ビジネスの成功の裏には、
儲からないビジネスをサポートする環境ファンドの様な地道な投資がありました。
利潤は低いが、環境に良いから投資するという姿勢です。
この様な投資では、投資額も限られていますから、
環境ビジネスが、実は環境に優しくなくても、その影響は限定的でした。
しかし、大手のファンドマネーや国家予算がこの分野に流れ込めば、
一時的にしろグリーンバブルが出現します。
ファンドマネーは利益に飢えています。
彼らは10年先を見越した投資をするでしょうか?
10年先にこの分野が隆盛を極めているかどうかリスクがある中では、
彼らの投資は短期的な投資、即ち排出権市場などに向かう事は明確です。
さて、この様な環境の中で、環境ビジネスがまともに育つでしょうか?
■ 儲かる=消費 ■
有史以来、経済価値の増大は、物質消費の増大と同義です。
国力を端的に比較したければ、発電量を調べれば良いと言われています。
実際、統計的に怪しい中国のGDPの類推に発電量を使うケースがあります。
もし、クリーンエネルギーが経済に貢献するのであれば、
それは、トータルのショウヒエネルギーの増大を意味します。
この例はハイブリッドカーや、エコ・ディーゼルを例に取っても分かります。
■ 石炭業者を悪者にする読売新聞 ■
読売新聞は風力発電の関連記事として、
石炭業者がクリーンエネルギーの推進に反対していると伝えています。
アメリカは石炭大国で、全世界の25%程の埋蔵量を誇ります。
発電の石炭依存も高く、当然、石炭産業の従事者も大勢います。
さて、もし地球温暖化がウソならば、
これら石炭産業従事者の雇用を奪う価値があるのでしょうか?
クリーンエネルギーブームが一時のバブルで終焉した場合、
石炭産業と、クリーンエネルギーの両分野から失業者が発生します。
クリーンエネルギーを声高に叫ぶ方達は、
あたかもグリーン・バブルを歓迎しているかの論調です。
しかし、バブルはいつか崩壊し、後には荒廃した産業が取り残されます。
エネルギー危機はいつかは訪れます。
しかし、未熟な技術に資金と資源を浪費するツケは必ず払う時がやってきます。
環境分野こそ、ゆっくりと、地道に熟成させる産業です。、
それを間違うと、将来の芽を摘むことになります。
80年代末のアメリカがそうであった様に・・・。
私の視点とは多少違いますが、
アメリカの環境投資の現状が分かり易い記事を見つけました。
グリーンバブルのグリーンシュートは確実に見られるようです。
http://money.quick.co.jp/pr/eco/report/us_vo4.html