■ アバターを観に行きました ■
アカデミー賞受賞作品を避けるようになって30年になりますが、「アバター」がアカデミー賞を逃したので、俄然興味が沸きました。
仕事帰りに久しぶりにシネマコンプレックスに立ち寄りました。5時台の開演時間だったので観客は20人程度。意外とガラガラで驚きした。
■ オ!3D映画なんだ ■
入り口で偏光眼鏡を手渡されたので、どうやら3D映画の様です。
3D映像なんて、ディズニーランド以来です。
バブルで博覧会花盛りの頃は、良くパビリオンで見たものですが、何となく鼻の頭がむず痒いような、違和感を覚またものでした。
さて、最新の3D技術はどのくらい進歩しているのでしょうか、興味津々です。
■ 何故立体に見終えるの? ■
ところで3D映画の上映方式には、昔からの「偏光方式」、「液晶シャッター方式」、「RGB位相差方式」と3種類がありようです。
ちなみに3D映画は、距離によって左右の目に写る対象物の位置がずれる事(視差)によって人間が距離を知覚する原理を応用した立体映像です。ですから、右目と左目に異なる映像を見せる必要があります。
■ 一番古い偏光方式 ■
偏光方式は光の波に縦方向の波と横方向の波がある事(偏光)を利用した方式です。サングラスに似た偏光眼鏡は左目が縦ならば、右目は横の光しか通さない偏光フィルターがセットされています。左目に入る映像は縦方向の偏光、右目に入る映像は横方向の偏光で投影すれば、左右の目に異なる映像を同時に知覚させる事が出来ます。
ところが、一般の布などの拡散性の素材は、投影された映像の偏光を保持する事が出来ません。そこで偏光を保持する特殊な素材のスクリーンが必要となり、一般の映画館では偏光式の3D上映は出来ません。
私は光学を専攻していましたので、大学の学園祭で3Dのスライドを上映した事があります。この時最も大変だったのがスクリーン探しです。当時から偏光用のスクリーンは販売されていましたが、5万円以上していました。
そこで色々な素材にチャレンジして、アルミ箔の裏側が偏光を保持する事を発見しました。ところが、アルミ箔をピンと伸ばして、皺無く張っていく事が難しく、悪戦苦闘した事を覚えています。
■ 結構昔からある液晶シャッター方式 ■
この様に偏光式の3D映像は上映設備が限定されてしまいますので、その次に開発されたのが液晶シャッター式の3D映像です。これも20年以上前に家電メーカーがTVとして発売していましたが、スクリーンに右と左の映像を高速で交互に投影し、右の映像の時は右のシャッターが、左の映像の時は左のシャッターが開く眼鏡を装着して映像を見ます。この時シャッターとして用いられるのが液晶です。
実は液晶シャターも偏光を利用した技術です。
液晶は液体と固体結晶の両方を性質を持った物質で、電圧を掛けると結晶の方向が揃う性質を持っています。こ結晶が液晶シャッターの役目を担います。
90度角度のずれた偏光フィルムの間に液晶を挟みます。液晶に電圧を掛けない状態では入射した光は液晶によって90度回転されます。この特、液晶パネル全体は在る方向の光だけが通過します。
次に液晶に電圧を掛けて、液晶の方向性を揃えます。そうすると光は偏光の方向を変える事なく通過します。射出側の偏光フルターの角度が90度ずれているので、全ての光は液晶パネルを通過する事が出来ません。
このように、液晶が電圧によって方向性を揃える性質と、偏光に性質を利用したのが得液晶シャッターです。
右目と左目の映像を順番に投影し、タイミングを合わせて右目と左目の液晶シャターを開閉して、右目と左目に別々の映像を認識させます。
液晶シャッターは偏光を用いますので、映像の明るさが半分になる欠点があります。
ただ、普通のスクリーン、1台の映写機で投影出来るので、液晶眼鏡を準備すれば従来の投影設備で3D映像が実現出来るメリットがあります。
しかし、液晶シャッター駆動用の電池を眼鏡に内蔵させたり、液晶シャッターと映像のスイッチングを同期させる赤外線信号の受光部を眼鏡に内蔵させる為、眼鏡が大きく重く、さらに高価になるというデメリットも発生する為、3D映像の主流には育たないでしょう。
■ Dolby 3D ・・・素晴らしいアイディア ■
ドルビーという会社は素晴らしい会社です。私達の世代ではカセットテープの「サー」というヒスノイズを消す方法を編み出した会社です。ドルビーの発明するシステムは「言われてみればそうだよね」という、技術の盲点を突くものが多く、それだけに天才的な閃きを感じます。
さて最新の3D映像技術の「Dloby 3D」ですが、光の3原色を応用した方式です。
私達の眼の細胞は、赤(R)、緑(G)、青(B)の光に反応する3種類の視細胞と、明るさに反応する視細胞の組み合わせで出来上がっています。光はプリズムで分ける(分光)と分かるように、紫から赤までの連続的な色の集合で出来ています。視細胞はそのうちのRGBの光に反応して、脳がそれぞれの視細胞の刺激値から中間の色を生み出しています。従って、RGBの組み合わせであらゆる色を理論的に知覚できる事になります。
この点に着目したのが「dolby 3D」システムです。映写機の光源装置とフィルムの間にR1、G1、B1とR2,G2,B2という微妙に波長の異なるRGBフォルターを挿入して高速回転させます。R1,G1,B1とR2,G2,B2のフィルターはそれぞれ非常に狭い帯域の光のみを透過させ、それぞれの波長がオーバーラップする事はありません。R1,G1,B1の合成光も、R2,G2,B2の合成光も人の目には等しく「白色光」として知覚されます。
R1,G1,B1の光が投影される時は右目用の映像を、R2,G2,B2の光が投影される時は左目の映像が投影されるように、カラーホイールの回転とフィルムのコマ送りを同期させておきます。
次に右目にR1,G1,B1のみを透過するフィルターを、左目にR2,G2,B2のみを透過するフィルターを装着してスクリーンの映像を見ます。すると右目とには右目用の映像が、左目には左目用の映像だけが知覚されます。
「dolby 3D」のメリットは、偏光を用いないので専用スクリーンを必要とせず、さらに光量が半分になる事がありません。眼鏡に電気的な装置を必要としないので、眼鏡は軽く安価です。映写機も1台で済みます。カラーホイールの構造もシンプルです。
将に、簡単なのに効果絶大のシステムを生み出すのが、ドルビー社なのです。
■ 3Dなんて子供騙しさ・・・ ■
最も、私は映画は内容と監督のセンス重視派。CG映像なんてクソ食らえ派ですから3D映像なんて「要らぬオマケ」程度で邪魔なだけ。さらに偏光方式となると、映画が始まる前から鼻の頭がムズムズしてきます。
映画が始まって5分で、胸がムカムカしてきて偏光眼鏡を外してしまいました。字幕こそ2重に見えますが、映像の中心が2重にならないので、存外普通に見れてしまいます。
しかし・・・主人公のアバターが野獣に追われるシーンで3D眼鏡を掛けてビックリ。心臓がドキドキするような迫力と臨場感です。襲い掛かる牙から思わず身を捩って逃げてしまいます。
そうなるともうメガネは外せません。3時間近い長い上映時間でしたが、自分がパンドラの空を飛んでいるような錯覚を覚えながら、一気に見終わってしまいました。
■ 内容はともかく「アバター以前とアバター以後」になる ■
キャメロン監督のターミネーター2はCGがハリウッド映画を席巻する先駆けになりました。「T2以前とT2以後」では娯楽としての映画のあり方が完全に変質してしまいました。
同様にアバターの2D映像は「アバター以前とアバター以後」に映画を二分するでしょう。映画は映像作品では無く、体感アトラクションに変質したのです。
このような歴史的作品にアカデミー賞が与えられない事はやはり不思議です。
明日はその辺も含め、作品の内容について勝手に書きたいと思います。