■ アメリカで医療保険改革法案が可決 ■
最近オバマ大統領の顔が詐欺師の顔に見えてしょうがないのは私でけではないでしょう。
アメリカで医療保険制度改革の法案が可決されましたが、オバマ氏に騙されたと思っているのは、民主党のリベラル派ではないでしょうか?
オバマ氏は”CHANGE"を合言葉に、大統領選挙を繰り広げました。その最重要課題が「医療保険制度改革」です。先進国では当たり前の「国民皆保険制度」をアメリカでも導入しようとしたのです。「国民皆保険制度」はアメリカの貧民の悲願でもあり、民主党リベラル勢力の悲願でもありました。
しかし、今回可決された法案は、先進国の「国民皆保険制度」とは大きく異なるものとなってしまいました。
■ アメリカの医療保険制度の問題点 ■
アメリカの医療保険制度の問題点は、医療費にお金が掛かりすぎる事です。
病院は高額な医療を薦めた方が儲けに繋がります。
医療保険会社は高額医療を受けられる、高額な医療保険を販売した方が儲かります。
結果として、医療サービスが過剰になり、医療費の水準を押し上げてしまいました。
ちなみに・・・
盲腸の手術代の場合
日本…手術代64200円、最高レベルのサービスを受けた場合の入院費1日12000円
アメリカのニューヨークの場合…手術代243万円、入院費が高いので平均入院日数は1日。
ニュウヨークのマンハッタン地区の場合…初診料150~300ドル(専門医の場合は300~500ドル)入院費(部屋代のみで)1日2000~3000ドル。
出産の場合…入院出産費用15000ドル。(入院すると一日4000~8000ドルと入院料が高いので日帰り出産が多い)
脳卒中の場合…1日100万円ほどかかる。だから平均入院日数が7日以内と短い。
といった具合だそうです。
基本的に全額自己負担ですが、医療保険に加入している人は保険で負担分を賄う事になります。
ちなみに企業の保険の提供率は65%、残りは民間の保険会社に加入するしかありあません。高齢者にはメディケアー、年収家族4人でで2万ドル(180万円)以下の家庭にはメディケイドという保険制度がありますが、全ての国民を網羅するものではありません。
現在アメリカには4600万人程度の無保険者が存在していると言われています。
アメリカ人全体では莫大な医療費を負担しながら、医療サービスを受けられない人が4600万人もいるという信じられない矛盾が存在するのです。これは、医療制度が不効率である以外の何物でもありません。
■ 新型インフルエンザ程度で死ぬアメリカ国民 ■
アメリカの医療保険制度の問題点が浮き彫りになったのは、今回の新型インフルエンザ騒動でしょう。日本では大騒ぎした割りに、ほとんど死者を出すことの無かったこの「近年稀にみる弱毒ウィルス」によって、アメリカ国民は日本の10倍近い致死率を記録しています。
これは、新型インフルエンザがアメリカ人にのみ高い毒性を示したのでは無く、アメリカの貧しい人たちは、重症化するまで病院に行くことが出来なかったと考えられています。
ちょっとの風邪でも病院に掛かる日本人と異なり、アメリカの無保険者は風邪やインフルエンザごときで病院に掛かると、高額な医療費を請求される為、病院に行く事を躊躇するのです。
アメリカは「自己責任」という残酷な言葉があたりまえの国です。医療費が払えなければ、働かない本人の責任とされます。
■ 骨抜きにされた医療保険改革 ■
民主党の掲げた医療保険改革は、最初は先進国なみの公的保険組合を目指していました。しかし、民間の医療保険会社が黙っているはずはありません。活発なロビー活動によって、提出された法案からは、パブリックオプションは削除されてしまいました。
しかし、下手にパブリックオプションが存続して、民間の医療保険と二本立てになると、貧乏人や高額医療者や高齢者が公的保険に押し付けられる事態を招く恐れがありました。
結局、可決された法案は、中間所得者の医療保険負担率の低減と、メディケイドの適応拡大というものに留まりました。
これにより3200万人の無保険者が新たに保険に加入する事になりました。彼らは保険料を納付しますが、負担の多くは税金として国民に課せられる事になります。
■ 高齢化を迎えるアメリカ ■
アメリカは戦後のベビーブーマーの大量退職の時代を迎えつつあります。メディケアーの医療費負担は今後、年々増え続け、財政を圧迫します。
さらに、今回の法案で新たにメディケイドの保険料の負担が生じました。今後、日本同様にアメリカは保険料の財政負担が増えていく事でしょう。
現状では税的負担が正確にはどの程度になるか、詳しく見積もられていない様です。
■ 製薬業界とも取引 ■
今回の医療改革法案可決の為に、オバマは製薬業界と次の様な取引をしたようです。
<引用>
今年6月、オバマ政権と製薬業界の間でこんな合意があった。現行のメディケアでは低額の処方薬負担と一定以上の高額負担は保険でカバーされる一方、その間については全額自己負担という「ドーナツ現象」がある。そこで大手製薬会社は、このドーナツの穴を埋めるために10年間で800億ドルを提供する。また、医療保険改革を推進するキャンペーンに1億5000万ドルを投じる。
一方、ホワイトハウスは見返りとして、製薬会社にさらなる負担を強いたい議会を抑え込み、2つの改革案を阻止する。一つは安価な薬剤の輸入を認めること。もう一つは、薬価を抑えるために製薬会社と直接交渉する権利をメディケアに認めること。どちらも、まっとうな改革案だ。
<引用終わり>
1)安価な薬剤の輸入は、従来通り認めない。
2)薬価を抑える為の直接交渉権をメディケア側に認めない
従来通りといえばそれまでですが、医療保険加入者が増えて、薬価が据え置かれるのですから儲かるのは製薬業界です。
アメリカの薬価は高く、高齢者はバスツアーで薬価の安いカナダまで、薬の購入ツアーに出かけています。無保険者が保険に加入すれば」、これらの人々が税金負担でアメリカ国内で高価な薬を買う事になります。
私のメールには1日何通ものインターネットの薬の販売の広告が送られてきます。従来ネットで安価な薬を購入していた人達も、これからは保険で高価な薬を購入する事でしょう。
この様に、今回の医療改革法案の結末は、税金を使って製薬会社の取りこぼし、医療機関の取りこぼしをを無くした事でした。
■ 政治ショーとしたたかな計算 ■
今回の法案成立にあたては、民主党下院の反対議員を一人一人切り崩すという「政治ショー」が用意されました。アメリカ国民は固唾を飲みながら、法案可決の人数が揃う過程を見守りました。これは、銀行に公的資金をつぎ込む法案を可決した時の状況に良く似ています。
メディアは「数の政治ショー」に国民の関心を引きつけ、法案の中身を煙に巻いた可能性があります。
この手法は郵政民営化の際の日本のマスコミの戦略に良く似ています。マスコミによって衆愚政治と化した「民主主義」の悲しい現実を見る思いがします。
一方、オバマは初めから公的医療保険制度など成立させる気は毛頭無かったのではないかと私は考えています。共和党や医療保険会社の激しい反抗は当然予想されましたから、今回の落とし所は「想定内」であったでしょう。
いえ、むしろ「落とし所」こそががターゲットだったのかもしれません。
国民の税金で製薬会社や医療機関を潤わせる事が。
真の医療保険制度改革を目指した民主党の議員達は、今回の医療保険改革法案に反対しましたが、オバマやクリントンや民主党重鎮達の露骨な恫喝に一人、又一人と屈していきました。
民主党リベラル派の多くの議員が今回の件で目が覚めた事でしょう。
オバマやクリントンが本当は誰の味方か、骨身に染みた事でしょう。
それが決して国民で無い事は明らかです。