■ 2社で500兆円の負債!? ■
今回の金融危機の「エンジン役」は、住宅金融です。
アメリカの住宅金融においては今回の金融危機で諸悪の元凶とされる「大数の理論」が1930年代から活用されてきました。個々人では信用にバラツキの生じる住宅ローンを、大口で束ねてしまえばリスクが分散されると考えられたのです。
今話題のフレディーマックとファニーメイはこうした住宅市場に潤沢な資金を提供する為に設立されました。この2社はローンの直接買い付けはせず、金融機関から住宅債券を買い上げて、それを直接保有したり、あるいは証券化したMBSとして市場に流通させていました。
これらの仕組みは、住宅債券の2次市場と呼ばれ、住宅な資金を住宅ローン市場に供給すると供に、住宅ローンのリスクを低減すると考えられていました。
フレディーマックとファニーメイは民間企業ですが公的な性格が強く、その債権、証券はアメリカ国債に次ぐ信用力があるとかつては喧伝されていました。
サブプライムローン問題を皮切りにしたアメリカの住宅ローンの信用不安によてって、この2社だけで2008年7月時点で500兆円の負債を抱える、事実上政府がこの2社を保有する事で住宅市場の崩壊を食い止めました。
次の資料が簡単で分かり易くアメリカの住宅ローン市場を解説しています。
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/3siryou/oogaki.pdf
■ 政府保証は無い!! ■
これまで2社が発行する債券や証券には、政府保証が付いていると信じている人が大多数でした。しかし、この2社は民間企業であり、政府保証の対象外であるという発現はかねてより繰り返されています。
<2004年3月のロイターからの引用>
ワシントン 9日 ロイター] スノー米財務長官は9日、米連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)<FNM>と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)<FRE>について、政府は財務保証を行ってはいないとして、投資家に対するこれまでの警告を繰り返した。同長官は、銀行業界の会合での演説原稿で、「われわれは、大きすぎてつぶせないという理論は信じない。しかし現実には、市場は両社の債券に政府保証がついているかのように扱っている。このような考え方には、強く抵抗する」との見解を示している。さらに同長官は、「そのような認識は、健全なものではない。そのような認識を持っている人の誤解を解かなければならない。ファニーメイとフレディマックへの投資は、保証されたものではない」と主張。両機関には、強力で信頼でき、十分な予算を持つ監督機関が必要、との見解を示した。
<引用終わり>
同様な発現はグリーンスパン前FRB議長も繰り返しています。
■ 解決しない金融危機 ■
金融危機で住宅債券が大きく員損した為、これらの2社は事実上経営破たんし、政府の管理下で存続しました。政府が2社の債務を保証するという名目で住宅市場の崩壊を食い止めたのです。
さらに2社の保有するMBSをFRBが買い上げ、負債を2社からFRBに付け替えて行きました。しかし、この買取プログラムはFRBのバランスシートを大きく損ね、FRB自身が債務超過となる為に、3月末で買取は終了します。
さて、この間に2社の経営状態が改善したかと言えば、全然改善していません。MBS市場はFRBによって買い支えられていた市場で、FRBが買い取りを中止した時点で再び暴落するか、長期金利を積み増したジャンク債のような市場になってしまうでしょう。
そこで、2社の債権や証券を政府保証するという強いメッセージが求められますが、これを行うと、財政状態が急速に悪化するアメリカ政府自身が、持続不可能な赤字に見舞われる事になります。
■ フレディーマックとファニーメイを切り捨てろ!! ■
共和党議員から4年以内にフレディーマックとファニーメイを清算するという法案が提出されそうですが、金融危機の火に油を注ぐこの法案が可決される可能性はゼロでしょう。
しかし、政府この2社をいつまでも放置する事は出来ません。
ガイトナー財務長官が次ぎの様に発現しています。
<ロイターから引用>
3月23日(ブルームバーグ):ガイトナー米財務長官は23日、ファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)への政府関与をめぐる「あいまいさ」を解消するよう求めた。
ガイトナー長官は23日に実施された下院金融委員会公聴会で、「民間の利益は、もはや公的保護の傘によっては支援され得ないし、資本基準は引き上げられるべきで過度のリスクテークは適切に抑制されるべきだ」と証言した。
同長官は財務省と住宅都市開発省が、米住宅金融制度と規制構造の改革に関するコメントを求める要請を4月15日までに出す意向を明らかにした。また、政府は「政府の支援や保護を受ける民間の事業体については、その立場や認められる活動をめぐり、あいまいさがないことを確認する必要がある」と証言で述べた。
ガイトナー長官はまた、オバマ政権はファニーメイとフレディマックの債券や住宅ローン担保証券(MBS)市場への混乱を回避するよう努めると約束した。同長官は、「政府は、政府支援機関(GSE)が既存および将来の保証を抱えながら業務を遂行するに十分な資本や債務返済能力を有するよう積極的にかかわっていく姿勢を明確にすべきだ」とした上で、「政府はこうした証券の機能と流動性やGSEの債務返済能力を脅かしたり混乱させたりするような政策や改革を行わないよう注意する」との方針を示した。
解体や完全国有化は間違い
同長官は議員からの質疑に応じ、ファニーとフレディを解体もしくは完全国有化するのは間違っていると述べ、政府はむしろ「良いところを残し、リスクの高過ぎる部分を取り除いた」新たな住宅金融システムを必要としていると続けた。
ガイトナー長官は、議会通過に必要な支援が得られる内容の改革案をまとめるには数カ月間を要するだろうが、数年間という長さではないと述べた。さらに同長官は、監視を厳しくし、リスクテークを抑えた上で何らかの政府保証や支援を与えるのは「有効」と判断されることもありえると述べた。
<引用終わり>
今後2社の事業を整理し、リストラを敢行するという意味合いの発現です。
■ 切り捨てられるにはどの債権・証券か?■
さて、所謂グッドバンクとバットバンクに2社を整理した場合、日本が所有する2社の債権や証券はどちらに分類されるのでしょうか?
この2社のMBSを日本や世界の金融機関は大量に保有しています。
<http://blog.h-h.jp/investnews/2008/08/21/%E8%8B%A6%E5%A2%83%E3%81%8C%E7%B6%9A%E3%81%8F%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%81%A8%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%9E%E3%83%83%E3%82%AF%EF%BC%8D%E3%81%BE%E3%81%A0/ から引用 >
日本全体 保有額 24兆2000億円
メガバンク 三菱UFJFG 3兆3000億円
みずほFG 1兆2000億円
三井住友FG 2198億円
政府系金融 農林中金 5兆5000億円
生命保険 日本生命 2兆5000億円
第一生命 9000億円
三井生命 943億円
明治安田生命 900億円
富国生命 22億円
損害保険 東京海上HD 530億円
損保ジャパン 740億円
三井住友海上HD 440億円
証券 野村證券 少額(撤退済)
大和証券 1811億円
保有額は機関債と住宅ローン担保証券(RMBS)の合計額。
日本の残高は07/06/30現在、各企業の残高は08/03/31現在。
なお、金額は明らかにしていませんが、日本政府も外貨準備の運用資産としてGSE関連債を保有しています。
世界各国(米国外)のGSE関連債の保有高
国・地域 保有額
中国 3760億ドル
日本 2290億ドル
ケイマン諸島 520億ドル
ルクセンブルグ 390億ドル
ベルギー 330億ドル
中東 300億ドル
英国 280億ドル
アイルランド 260億ドル
その他 4920億ドル
総 計 1兆3050億ドル
07/06/30現在
保有額は、中国と日本が圧倒的です。
<引用終わり>
資料が2007年と古いですが、その後の金融危機で市場は麻痺状態ですから、売り抜ける事は不可能でしょう。
これらのMBSが踏み倒されたらどうなるでしょう・・・・。
農林中金が無事であるとは思えません。
三菱東京UFJや日本生命は破綻こそしませんが、大打撃を被ります。
借りた金は返さない・・・・借金の基本です。
■ アメリカの金融機関は売り抜けた? ■
ゴールドマンサックスの投資信託のポートフォリオをチェックすると、2ヶ月程前には上位にあったフレディーマックやファニーメイの名が見当たらなくなっています。既にFRBに売りつけてしまったという事でしょうか。
アメリカの金融機関、特にゴールドマンサックスの動きには要注意です。彼らが損をしなくなった時点で、フレディーマックとファニーメイ問題に再び火が付くでしょう。
今回の金融危機の「エンジン役」は、住宅金融です。
アメリカの住宅金融においては今回の金融危機で諸悪の元凶とされる「大数の理論」が1930年代から活用されてきました。個々人では信用にバラツキの生じる住宅ローンを、大口で束ねてしまえばリスクが分散されると考えられたのです。
今話題のフレディーマックとファニーメイはこうした住宅市場に潤沢な資金を提供する為に設立されました。この2社はローンの直接買い付けはせず、金融機関から住宅債券を買い上げて、それを直接保有したり、あるいは証券化したMBSとして市場に流通させていました。
これらの仕組みは、住宅債券の2次市場と呼ばれ、住宅な資金を住宅ローン市場に供給すると供に、住宅ローンのリスクを低減すると考えられていました。
フレディーマックとファニーメイは民間企業ですが公的な性格が強く、その債権、証券はアメリカ国債に次ぐ信用力があるとかつては喧伝されていました。
サブプライムローン問題を皮切りにしたアメリカの住宅ローンの信用不安によてって、この2社だけで2008年7月時点で500兆円の負債を抱える、事実上政府がこの2社を保有する事で住宅市場の崩壊を食い止めました。
次の資料が簡単で分かり易くアメリカの住宅ローン市場を解説しています。
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/3siryou/oogaki.pdf
■ 政府保証は無い!! ■
これまで2社が発行する債券や証券には、政府保証が付いていると信じている人が大多数でした。しかし、この2社は民間企業であり、政府保証の対象外であるという発現はかねてより繰り返されています。
<2004年3月のロイターからの引用>
ワシントン 9日 ロイター] スノー米財務長官は9日、米連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)<FNM>と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)<FRE>について、政府は財務保証を行ってはいないとして、投資家に対するこれまでの警告を繰り返した。同長官は、銀行業界の会合での演説原稿で、「われわれは、大きすぎてつぶせないという理論は信じない。しかし現実には、市場は両社の債券に政府保証がついているかのように扱っている。このような考え方には、強く抵抗する」との見解を示している。さらに同長官は、「そのような認識は、健全なものではない。そのような認識を持っている人の誤解を解かなければならない。ファニーメイとフレディマックへの投資は、保証されたものではない」と主張。両機関には、強力で信頼でき、十分な予算を持つ監督機関が必要、との見解を示した。
<引用終わり>
同様な発現はグリーンスパン前FRB議長も繰り返しています。
■ 解決しない金融危機 ■
金融危機で住宅債券が大きく員損した為、これらの2社は事実上経営破たんし、政府の管理下で存続しました。政府が2社の債務を保証するという名目で住宅市場の崩壊を食い止めたのです。
さらに2社の保有するMBSをFRBが買い上げ、負債を2社からFRBに付け替えて行きました。しかし、この買取プログラムはFRBのバランスシートを大きく損ね、FRB自身が債務超過となる為に、3月末で買取は終了します。
さて、この間に2社の経営状態が改善したかと言えば、全然改善していません。MBS市場はFRBによって買い支えられていた市場で、FRBが買い取りを中止した時点で再び暴落するか、長期金利を積み増したジャンク債のような市場になってしまうでしょう。
そこで、2社の債権や証券を政府保証するという強いメッセージが求められますが、これを行うと、財政状態が急速に悪化するアメリカ政府自身が、持続不可能な赤字に見舞われる事になります。
■ フレディーマックとファニーメイを切り捨てろ!! ■
共和党議員から4年以内にフレディーマックとファニーメイを清算するという法案が提出されそうですが、金融危機の火に油を注ぐこの法案が可決される可能性はゼロでしょう。
しかし、政府この2社をいつまでも放置する事は出来ません。
ガイトナー財務長官が次ぎの様に発現しています。
<ロイターから引用>
3月23日(ブルームバーグ):ガイトナー米財務長官は23日、ファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)への政府関与をめぐる「あいまいさ」を解消するよう求めた。
ガイトナー長官は23日に実施された下院金融委員会公聴会で、「民間の利益は、もはや公的保護の傘によっては支援され得ないし、資本基準は引き上げられるべきで過度のリスクテークは適切に抑制されるべきだ」と証言した。
同長官は財務省と住宅都市開発省が、米住宅金融制度と規制構造の改革に関するコメントを求める要請を4月15日までに出す意向を明らかにした。また、政府は「政府の支援や保護を受ける民間の事業体については、その立場や認められる活動をめぐり、あいまいさがないことを確認する必要がある」と証言で述べた。
ガイトナー長官はまた、オバマ政権はファニーメイとフレディマックの債券や住宅ローン担保証券(MBS)市場への混乱を回避するよう努めると約束した。同長官は、「政府は、政府支援機関(GSE)が既存および将来の保証を抱えながら業務を遂行するに十分な資本や債務返済能力を有するよう積極的にかかわっていく姿勢を明確にすべきだ」とした上で、「政府はこうした証券の機能と流動性やGSEの債務返済能力を脅かしたり混乱させたりするような政策や改革を行わないよう注意する」との方針を示した。
解体や完全国有化は間違い
同長官は議員からの質疑に応じ、ファニーとフレディを解体もしくは完全国有化するのは間違っていると述べ、政府はむしろ「良いところを残し、リスクの高過ぎる部分を取り除いた」新たな住宅金融システムを必要としていると続けた。
ガイトナー長官は、議会通過に必要な支援が得られる内容の改革案をまとめるには数カ月間を要するだろうが、数年間という長さではないと述べた。さらに同長官は、監視を厳しくし、リスクテークを抑えた上で何らかの政府保証や支援を与えるのは「有効」と判断されることもありえると述べた。
<引用終わり>
今後2社の事業を整理し、リストラを敢行するという意味合いの発現です。
■ 切り捨てられるにはどの債権・証券か?■
さて、所謂グッドバンクとバットバンクに2社を整理した場合、日本が所有する2社の債権や証券はどちらに分類されるのでしょうか?
この2社のMBSを日本や世界の金融機関は大量に保有しています。
<http://blog.h-h.jp/investnews/2008/08/21/%E8%8B%A6%E5%A2%83%E3%81%8C%E7%B6%9A%E3%81%8F%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%81%A8%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%9E%E3%83%83%E3%82%AF%EF%BC%8D%E3%81%BE%E3%81%A0/ から引用 >
日本全体 保有額 24兆2000億円
メガバンク 三菱UFJFG 3兆3000億円
みずほFG 1兆2000億円
三井住友FG 2198億円
政府系金融 農林中金 5兆5000億円
生命保険 日本生命 2兆5000億円
第一生命 9000億円
三井生命 943億円
明治安田生命 900億円
富国生命 22億円
損害保険 東京海上HD 530億円
損保ジャパン 740億円
三井住友海上HD 440億円
証券 野村證券 少額(撤退済)
大和証券 1811億円
保有額は機関債と住宅ローン担保証券(RMBS)の合計額。
日本の残高は07/06/30現在、各企業の残高は08/03/31現在。
なお、金額は明らかにしていませんが、日本政府も外貨準備の運用資産としてGSE関連債を保有しています。
世界各国(米国外)のGSE関連債の保有高
国・地域 保有額
中国 3760億ドル
日本 2290億ドル
ケイマン諸島 520億ドル
ルクセンブルグ 390億ドル
ベルギー 330億ドル
中東 300億ドル
英国 280億ドル
アイルランド 260億ドル
その他 4920億ドル
総 計 1兆3050億ドル
07/06/30現在
保有額は、中国と日本が圧倒的です。
<引用終わり>
資料が2007年と古いですが、その後の金融危機で市場は麻痺状態ですから、売り抜ける事は不可能でしょう。
これらのMBSが踏み倒されたらどうなるでしょう・・・・。
農林中金が無事であるとは思えません。
三菱東京UFJや日本生命は破綻こそしませんが、大打撃を被ります。
借りた金は返さない・・・・借金の基本です。
■ アメリカの金融機関は売り抜けた? ■
ゴールドマンサックスの投資信託のポートフォリオをチェックすると、2ヶ月程前には上位にあったフレディーマックやファニーメイの名が見当たらなくなっています。既にFRBに売りつけてしまったという事でしょうか。
アメリカの金融機関、特にゴールドマンサックスの動きには要注意です。彼らが損をしなくなった時点で、フレディーマックとファニーメイ問題に再び火が付くでしょう。