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オバマが握る破滅のスイッチ

2010-04-12 05:52:00 | 時事/金融危機


■ 単純に比較すると ■

世界一醜いと言われる日本の国債と、AAA格付けのアメリカ国債を比べてみました。
国債の発行残高と、年金などの負担を含めた政府残高の両方を比較してみます。


<日本国債>         <日本の借金(政府債務残高)>
発行残高   650兆円     債務残高   1103兆円
一人当たり  511万円     一人当たり  868万円
GDP比     185 %
10年物利率  1.4 %

<アメリカ国債>       <アメリカの借金(政府債務残高)>
発行残高   1000兆円    債務残高   5500兆円
一人当たり  312万円    一人当たり  1762万円
GDP比     80 %
10年物利率  4.0 %

赤ん坊から老人まで含めた日本人一人当たりの借金(政府債務)868万円も驚異的ですが、アメリカの1762万円も返済可能な金額とは思えません。事実、アメリカの会計検査院は2007年にブッシュ政権に対して「アメリカの国債は既に返済可能でない」と勧告していますが、その後もアメリカ国債の発行は加速度的に増加しています。

http://www.im-sendai.jp/archives/2008/10/post_285.html

さらに日本の国債は96%が国内で消化されています。国民の貯蓄が国債で運用されている限り、海外のヘッジファンドに売り浴びせられる危険はありません。一方アメリカ国債はその多くを海外の資金でファイナンスしています。危機が高まれば一気に売り浴びせられます。

アメリカ国債は格付けこそAAAですが、既にジャンク債状態です。

■ 日本の保有するアメリカ国債 ■

日本が保有するアメリカ国債は100兆円と言われています。ところが実際には700兆円保有すているというウワサもあります。日本とアメリカの関係を考えた場合、100兆円という政府発表額は、最小の金額と考えた方が無難かもしれません。

アメリカの財政危機が肥大化する中で、「アメリカ国債を売却しろ」という声も高まって来ました。しかしこれは不可能な事です。日本がアメリカの属国だから不可能なのでは無く、日本の所有するアメリカ国債は、アメリカの金庫の中にあるから、物理的にアメリカの承諾無くして市場に流通させられないのです

仮に中国が米国債を大量売却して米国債危機になても、日本は米国債を売り抜ける事は出来ません。日本はみすみす100兆円(700兆円)の損失を被る事になります。

■ 元の切り上げ ■

4月8日、ガイトナー財務長官がわざわざ中国まで出向いたそうです。元の切り上げについて話合われたのでしょう。

アメリカ国内では元の切り上げ圧力が高まっていますが、製造業が空洞化しているアメリカにおいて、元の切り上げは経済の回復には繋がりません。

むしろ、ドルを買い支えている元が切りあがれば、ドルあらゆる通貨に対して下落する可能性が高くなります。多くの物資を輸入に頼るアメリカで、ドルの下落はインフレに直結します。これはアメリカ経済にとって致命的です。

■ 元切り上げの本気度 ■

中国はプライドの高い国ですから、アメリカの圧力に屈して元を切り上げる事には抵抗があります。さらにプラザ合意後の日本の惨状を見ていますから、容易に元の大幅な切り上げには応じないでしょう。(小幅な切り上げはありますが)

結局、元切り上げの大合唱は、中国に「元を切り上げないで下さい」と懇願している様にも見えます。

一方、中国はドルが危険となれば、独自判断で元のドルぺックを外す事は躊躇しないでしょう。同時に米国債の大量売却も行われます。この時点でドルはThe END です。アメリカの好むと好まざるとに係わらず、ドルの命綱は中国に握られています。

■ 借金をチャラにする方法 ■

日本にしてもアメリカにしても、借金はチャラにしたものです。国家による借金の減らし方には3つの方法があります。

1) 増税によって返済する
2) インフレによって借金を減額する
3) デフォルトによって借金をチャラにする

アメリカ国債は既に債務不履行の状態です。ですから増税による国債に返済はアメリカ国民の生活を破綻させる為、選択肢には入りません。

デフォルトは、国家の信用を損なうので、その後の国債のファイナンスが不可能になります。さらに機軸通貨としてのドルの立場も失います。これは最悪の事態まで避けたいはずです。

それではインフレはどうかと言えば、10%や20%のインフレでは焼け石に水です。債務を1/10にする為には1000%のインフレが必要です。これでは国民生活が破綻してしまします。かつてのワイマールがこの方法を用いました。結果は皆さんご存知かと思います。

アメリカ国債を取り巻く状況は、まさに八方塞がりです。

■ アメロという核爆弾 ■

かねてから、アメリカはメキシコとカナダを統合した北米共通通貨「アメロ」を発行すると囁かれていました。

アメロ発行に際しては、旧ドルは1:10のレートで交換され、アメロは金兌換制によってその価値が担保されるというウワサです。当初、アメロの導入時期は2010年とされてきました。

アメリカ国内の交換レートと、国外の交換レートに差を設ければ、国内のインフレを抑制しながら、借金を1/10に圧縮できるという荒業も可能です。さらに、アメロを金兌換とする事で、ドル危機によってペーパーマネーが世界的に信用を失う中で、アメロが国際決済通貨としての地位を獲得する可能性も大です。

これはアメリカにとっては良いこと尽くめです。

■ 金は誰が持っているのか ■

ここで問題になるのは、アメリカが金を保有しているかどうかです。アメロを発行した所で、単なるペーパーマネーでは誰も見向きもしません。

一説によればアメリカの保有する金は、先物市場の空売り用に貸し出され、金庫にはタングステンに金メッキした偽者のインゴットが積みあがっているという話も聞かれます。

一方、IMFが手持ちの金を中国やインドに売却するなど、新興国の金の備蓄量が増えています。通貨危機に対してある程度の備えをしている様に見えます。

さらに、田中宇氏によれば、市場に出回る金はペーパー金(証書)で、実際に金に交換しようとした場合は、実物の金が大幅に不足するとの事です。先物市場などは100倍のペーパー金が流通している様です。JPモルガンが主役となって、金の空売りを仕掛け金相場を抑制している事がGATAの主張によって明らかになっています。

金相場の抑制は、ドルの延命に繋がります。金相場が跳ね上がれば、一気にドル離れが加速するでしょう。

いずれにしても、アメリカ政府が金を保有していなければアメロは機能しません。

■ オバマに握られた破滅のスイッチ ■

アメロについては様々な憶測が飛び交っています。4月20日に発行される新100ドル紙幣がアメロでは無いか・・そんなウワサもあります。

財政状態だけを注視すると、アメリカという国家は既に「継続可能」な状態を逸しています。それだけを考えれば、オバマがいつアメロを発行しても不思議では無い状態です。

「大国アメリカが国際社会に対して、そんな事を単独でするはずが無い」と思い込むのは危険です。現にニクソンショックは一人の大統領が世界経済の根幹を成す通貨制度を根底から覆してしまいました・・・それも何の予告も無しに・・・。


世界の命運は、オバマが握る「アメロのスイッチ」に委ねられているのかも知れません。

■ 世界同時インフレ ■

デフレの時代にインフレの話は笑われてしまいそうですが、各国の財政状態を鑑みれば、世界各国がインフレの誘惑に晒されているはずです。

金融資本家達は、国家を謝金漬けにする事で、現在は存在しないお金を、国家の借金として一時的に現出させ、それを金などの価値の減らない資産に交換します。国家の借金が継続不能な状態になればインフレが訪れ金を始めとする資源価格は暴騰し、彼らは無から有を得る事が出来ます。

さて、私達の預金は、年金は大丈夫でしょうか?現物の金しか信用出来ない時代の足音が聞こえています。