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信じるという愚行

2010-04-13 08:38:00 | 時事/金融危機


■ 預金保険機構の貸借対照表 ■

金融危機が発生しても我々庶民が安心していられるのは、私達の僅かばかりの預金は「預金保険機構」によて1000万円まで保護されているからです。

実際、アメリカでは昨年150行を越える中小の金融機関が破綻し、今年に入ってからも40を越える破綻が発生しましたが、アメリカの預金保険機構であるFDICの基金から資金を銀行に拠出し、預金者を保護してきました。アメリカでも日本のペイオフに相当するシステムが在り(こちらが本家)、預金が10万ドル(約1000万円)まで保護されています。

上の表はFDICの基金の残高を示すものです。最新のデータが見つからなかったので、昨年の8月時点のものですが、中小の銀行が破綻する度に、SDICの資金が拠出され、基金が減少している事が分かります。

http://jp.reuters.com/article/domesticEquities2/idJPnTK857779520091125
<ロイターの昨年11月25日の記事から引用>

 [ワシントン 24日 ロイター] 米連邦預金保険公社(FDIC)の発表によると、国内銀行の預金者を保護するための預金保険基金の残高は、第3・四半期末時点で82億ドルのマイナスとなった。第3・四半期に問題を抱える金融機関が急増したことが響いた。
 米国の銀行システムのぜい弱さに加え、商業用不動産ローンおよび住宅ローンの焦げ付きが銀行のバランスシートを引き続き圧迫していることが浮き彫りとなった。

 基金の財源が不足したのは1992年以来。


 発表では、FDICが「問題がある」とする金融機関は552機関と、第2・四半期から33%増加し、1993年以来の大きな数となった。

 FDICは、国内銀行による3年分の預金保険料の前払い措置で近く450億ドルを受け取る予定だが、この前払い分の全額を基金のバランスシートに組み込むことは会計ルール上認められない

<引用終わり>

アメリカでは商業不動産不況が深刻化しており、中小の金融機関の破綻が止まりません。破綻した金融機関が保有していた不動産が市場で処理される為に、商業不動産の下落が加速するという負のスパイラルに陥っています。

3年分の保険料の前借で急場を凌いだFDICですが、今後金融破綻が深刻化すれば、ペイオフによる預金者の保護もままなりません。

■ 日本の預金保険機構は大丈夫なのか? ■


http://www.dic.go.jp/newzaimu/zaimu/renketsu02.pdf  より

一方、金融危機の影響が比較的小さかった日本の預金保険機構はどうなっているのでしょうか?

ネットに21年度の預金保険機構の貸借対照表(民間形式)があったので、転載します。現状預金保険機構の資産は7兆6687億円となっております。単純に1000万のペイオフを実行したとして、76万以上の口座を救済する事が出来ます。

■ 金融機関が連鎖倒産するという危機 ■

預金保険機構の資産は7兆6687億円は日本の2009年の全預金金額559兆円の1.37%に当たります。

極論になりますが、第二の金融危機が発生して日本の金融機関が全て経営危機に瀕した場合、全ての預金は当然救う事は出来ないという事になります。

破綻は中小の金融機関から始まり、メガバンクなどは最後になりますから、中小の金融機関の預金の方が、確実に救済されるかもしれません。

■ メガバンクの破綻 ■

メガバンクが相次いで破綻する程、金融危機が進んだ場合はどうでしょう?

そんな事は起こらないとお思いかと思いますが、リーマンショック後、最初に経営破綻したのはアメリカの巨大銀行です。この際、アメリカ政府と国民は、これらの金融機関を"too big to fail"と言って、政府が事実上国有化する事で危機を乗り切りました。

商用銀行のみならず、ゴールドマンなどの投資銀行も見かけだけ商用銀行にお色直しして救済しています。

これら巨大銀行の破綻は、FDICの基金を一瞬に消滅させるだけで無く、経済に壊滅的なダメージを与える為、潰せなかったのです。

日本の金融機関は金融危機後、自己資本比率を高め、貸し出しを減らして、破綻引当金を上積みしています。ある程度までは自分達で凌ぎ、最後は国家救済となるのでしょう。

■ ペイオフは有名無実か? ■

結局ペイオフは巨大連鎖破綻には効力を発揮せず、中小の金融機関の破綻処理にしか実行力を持たないシステムの様です。

メガバンクや「ゆうちょ」の預金者は、国家の救済を期待するしか無いようです。最も民間の借金を国家に付け替えるわけですから、将来の税金として支払いは国民に圧し掛かってきます。

「金持ちの預金を守る為に、貧乏人の税金を使うのか!!」という議論は、かつてバブル後の金融危機の通った道のりです。

ちなみに日本の年代別の世帯預金の2006年データは下記の通りです。

1世帯あたり貯蓄保有高の年代別平均の分布
20歳代 : 278万円
30歳代 : 692万円
40歳代 : 1091万円
50歳代 : 1557万円
60歳代 : 1860万円
70歳以上 : 1787万円

どうやら、老人の資産を若者が守るという図式が現れそうです。これで納得する程若者もバカでは無いでしょう。

■ 預金保険機構の運用!! ■

さて、ここでもう一度預金保険機構の資産の内訳を見てみましょう。

6兆4583億円が有価証券で運用されています。

http://www.dic.go.jp/newzaimu/zaimu/meisai.html

を参照すると、諸々ある有価証券明細を合計すると1兆7400億円程の国債は記載されています。しかし、私の見方が悪いのか、有価証券明細にその他の金額と細目が記載されていません。その他の4兆7000億円余りは何で運用されているのでしょうか?

多分私の見方に問題たあるだけだとは思いますが、どなたかお分かりになりますか?

まさか米国債や米国株やインチキ債権なんて訳は無いとは思いますが・・・。

さて、ペイオフが実行される様な事態が再び訪れた時、預金保険機構の有価証券は現金化できるのでしょうか?