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バンカメは悪魔に魅入られた?・・・住宅差し押さえ問題の行方

2010-10-21 18:18:00 | 時事/金融危機


■ モゲージ債の買戻しを要求されるバンカメ ■

住宅差し押さえ問題で揺れるバンカメが、またもや苦境に立たされています。

<ロイターより引用>
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17739420101019

米バンカメ、モーゲージ債問題で争う姿勢示す

 米銀大手バンク・オブ・ アメリカ(バンカメ)(BAC.N: 株価, 企業情報, レポート)は19日、大口投資家グループが、同行が販売したモーゲージ債について、担保となる住宅ローンに問題があったとして対応を求めたことについて、同行に責任はないとして争う姿勢を示した。

 関係筋によると、大口投資家グループは、バンカメが、本来投資家に販売すべきではなかった住宅ローンをモーゲージ債に組み入れたと主張。同行に対し、60日以内に問題を解消するよう求めた。

 関係筋によると、この大口投資家グループは、約165億ドルのモーゲージ債を保有。投資家グループには、米連邦準備理事会(FRB)も含まれている。

 ブルームバーグは、債券運用大手パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)と資産運用会社ブラックロック(BLK.N: 株価, 企業情報, レポート)も、この投資家グループに含まれていると報じている。 

 バンカメはアナリストでの電話会議で、同行が販売したモーゲージ債について多くの投資家から根拠のない苦情が寄せられていると批判。

 モイニハン最高経営責任者(CEO)は「シボレー・ベガを買った人が、12気筒のメルセデスが欲しかったと言っているようなものだ」と述べた。

 ただ同行は、モーゲージ債の損失が潜在的にどの程度まで膨らむかはわからないとも表明。これを受け、同行の株価は4%以上急落した。 

 投資家グループは、バンカメ傘下のカントリーワイドに対し「契約不履行通知」を送付。60日以内に問題を解消するよう求めている。

 猶予期間の終了後は、同行を提訴することが可能になる。

 PIMCO、ブラックロック、ニューヨーク連銀はコメントを拒否している

<引用終わり>


■ 訪れない「出口」 ■

NY連銀までもがモゲージ債の買戻しを要求している事が引っかかります。

FRBはリーマンショック後に金融機関のMBSを大量に買い上げる事で、市場に大量のドルを供給しましたが、最近は金融機関にMBSの買戻しを要求している様です。

MBSの買い上げは住宅市場崩壊を防ぐ緊急処置でしたから、時間が経てばFRBがMBSを手放すのは当然の事と言えます。

しかし、当初MBSの売却は出口戦略の一環として捉えられていました。出口が見えない今、FRBがMBSを手放す事は住宅債権市場を不安定にする要因になります。

住宅ローン金利は長期国債の金利同様に、長期金利を左右します。リーマンショック後、米国政府とFRBが金融機関からMBSを買い上げた理由の一つには、長期金利抑制という目的がありました。政府の意図に反して長期金利が上昇すれば、住宅市場が崩壊するだけでなく、長期国債の発行コストが増大するというオマケが着いてくるからです。

市場はFRMのMBSの買い上げは一時的な物であり、MBS市場が正常化すればFRBはMBSを市場で売却すると考えていました。しかし、長期の景気低迷が避けられない現状では、MBS市場はデット・マーケットの状態から抜けられず、いつまでも出口は訪れません。

それどころか、今回の差し押さえ中止騒動によって、金融機関がほとんどいい加減な審査で住宅ローンを組成し、さらにそのローンをMBSに組み替えて売却していた事が白日も下に晒されてしまいました。



上のグラフは住宅ローンの貸し出し年度とデフォルト率のグラフです。2005年から2007年にかけて、如何に住宅ローンがずさんに貸し出されていたかが分かります。これは、バンカメ1社の問題ではありません。


■ MBSとは? ■

MBS(住宅ローン担保証券)の成り立ちは複雑です。

住宅購入者は金融機関のローン審査を経て、住宅ローンを組みますが、金融機関はローンの貸し倒れリスクを軽減する為に、住宅ローン(モーゲージ)を、政府系住宅金融機関であるファニーメイやフレディーマックに売却します。

ファニーメイやフレディーマックは住宅ローンのリスクを金融機関から肩代わりして、住宅市場の円滑化を図る組織と言えます。

フレディーマックやファニーメイはこれらの住宅ローン債権を多数寄せ集めて、証券化して販売します。これがMBS(住宅ローン担保証券=モーゲージ債)です。ファニーメイやフレディーマックは民間の金融機関ですが、政府がバックアップしている事から、これらのMBSは国債に次ぐ高い信用力があると思われていました。

これとは別に民間の金融機関もMBSを発行しています。今回のバンカメで問題になっているのは、リーマンショックの際にバンカメが傘下に収めたカントリーワイドの発行したモゲージが、ずさんな審査によって貸し出されたローンを元にしていた事に端を発しています。そのモゲージを元にして組成されたMBSの信用が揺らいでいるのです。NY連銀はベアスターンやAIGの救済の過程で、その様なMBSを大量に抱え込んでしまいました。


■ 差し押さえの急増に事務処理が追いつかない ■

アメリカではリーマンショック後、多くの失業者が発生し、多くの住宅ローンが焦げ付いています。債権者はこれらの住宅を差し押さえて競売に掛け、債権を回収します。

今回の「差し押さえ中止問題」の始まりは、債権の回収を焦る金融機関が、それぞれに住宅を差し押さえようとして、混乱が発生した事もある様です。

バンカメだけで10万件の差し押さえを処理する為に、半ば「メクラ判」、あるいは「債務者のサインの捏造」などのムチャクチャな事務処理が行われ、裁判所もオーバーワークに陥った為、書類の手続きがずさんになった・・・。そんな背景があります。

■ MBSは担保が取れるのか? ■

ローンの直接的な貸し手である銀行は、契約が明確ですから、住宅を差し押さえる事が出来ます。

しかし住宅ローンを細分化して組成したMBSでは、債権の回収は絶望的です。仮に、MBSに含まれるローンを確実にトレース出来たとしても、一つのMBSに含まれる1件のローンが細分化の結果1万円になっていたら、担保を差し押さえに行く交通費にも満たなくなります。

ローンの債権者である金融機関は、モゲージ債を発行する際に、貸し出した元本を取り戻していますから、銀行が担保物件を競売に掛ければその売却益は見かけ上銀行の利益になります。

尤も、モゲージ債やMBSに金利を払い続ける訳ですから、長期的には銀行が回収した資金はこれらの債権や証券の買い手の元に移動して行きます。

■ 30年後までの利払いを誰が当てにするのか ■

約束上では満期までモゲージ債やMBSを持ち続ければ、元本に金利を足した金額が手元に戻って来ます。

しかし、モゲージ債もMBSもローンの流動性を高める為に開発された商品です。
誰も始めから長期保有を目的に購入はしていません。

ですから、モゲージ債やMBSの流動性が損なわれた時点で、商品としての価値は損なわれています。流通しなければ、「紙切れ」も同然です。

■ ババを引かされるバンカメ ■

MBSやモゲージ債はババ抜きのババ同然です。
誰もが手放せるものなら手放したい。

最近の「差し押さえ問題」はババを手放したい金融機関に恰好の口実を与えました。
元々インチキ商品なんだから、買い戻せ!!

しかし、バンカメ傘下のカントリーワイドに限らず、アメリカの金融期間は何処も似たり寄ったりのインチキMBSやインチキ・モゲージ債を発行しています。では何故バンカメなのか?

■ アメリカの国民銀行としてのバンカメ ■

アメリカ最大の銀行であるバンカメは、、カリフォルニアに端を発する土着の銀行が、同様の金融機関を合併する形で成長した、アメリカの国民銀行です。

NYの大手銀行はユダヤ資本によって作られ、その利益の少なからぬ額が大陸ヨーロッパに還流している事とは対象的です。

リーマンショック後、バンカメはメリルリンチを傘下に収めます。バンカメとしては弱かった投資銀行部門を格安で手に入れたつもりでしたが、蓋を開けてみるとメリルリンチは不良債権の溜り場でした。

そもそもバンカメのメリル買収劇は、バーナンキがバンカメに圧力を掛けて実現したとも言われています。議会もこの問題で公聴会を開いています。

・・・どうもアメリカの国民銀行であるバンカメは、ユダヤ資本に不当に貶められている感があります。

■ 大きくても潰す ■

アメリカの金融改革法案の最初の餌食はバンカメかもしれません。

アメリカ人の地域経済に密着したバンカメを潰し、そこから溢れた富を、ユダヤ系の銀行が美味しく頂くという狙いがチラホラと透けて見えます。

尤も、バンカメの破綻はリーマンブラザーズの破綻以上の影響を金融市場に与えるでしょう。ロスチャルドとしては敵の本丸であるシティーバンクを敢えて攻めなくても、バンカメの破綻の連鎖反応でシティーも共倒れしてくれれば言うこと無しと思っているのかもしれません。

どうやらバンカメは悪魔に魅入られてしまった様です