■ 議場に誰も来なかったギリシャ国債の交渉現場 ■
年末が期限になっていた、ギリシャ国債を廻る交渉ですが、
実は協議会場に誰も現れなかったという情報があります。
http://blog.livedoor.jp/nevada_report-investment/archives/4063504.html
民間金融機関は75%のヘアカットを求められており、
ヘッジファンドなどは早期に交渉のテーブルを離れていたそうです。
■ ヨーロッパのCDSで荒稼ぎするヘッジファンド ■
現在へヘッジファンド勢はヨーロッパのCDSで荒稼ぎしている様です。
1) ギリシャやイタリアの国債は中古市場で売買される
2) デフォルトリスクが高まれば、国債価格が下落する
3) 国債価格が下落すれば、償還時の利率は高まる
4) ギシリャの国債金利が25%などという状況は、国債価格の下落で生じている
5) 国債の購入者は国債のデフォルトリスクが高まればCDSを購入してリスクヘッジを図る
6) 中古国債の発行時に掛られたCDSは、金融機関の間で売買される
7) 国債のデフォルトリスクに応じて、これらのCDSの価値が上昇する
8) 国債危機に先だってCDSを購入する
9) 国債を売り浴びせてCDSの価値を上昇させる
10)CDSを売り抜けて、利益を挙げる
だいたいこの様な仕掛けで、ヘッジファンドが荒稼ぎすると同時に
ユーロ圏のPIGSやイタリアの国債市場が攻撃され、
国債金利が上昇している側面もある様です。
■ ユーロ圏はギリシャのデフォルト・イベントを発生させるのか ■
PIGSやイタリアの国債を大量に保有いているのはヨーロッパの銀行です。
単純に考えれば、これらの国のデフォルトはヨーロッパの金融機関に打撃を与えます。
一方でこれらの国の国債のCDSを発行しているのはアメリカの投資銀行です。
ギシシャを例に取るならば、27兆円の国債発行額に対して、
100兆円のCDSが発行されています。
単純に計算して良いのかは分かりませんが、
ギリシャがデフォルトしてCDSが決済されるならば、
ヨーロッパは投資金額の4倍の利益を得る事が出来ます。
ですから、ヨーロッパは世界の大手銀行26行を指定して、
国を挙げて自己資本比率の充実を求めているのです。
さらには、本来対象外である野村證券もこの規定の適用を求めました。
■ DSCが決済されても、されなくても地獄の一丁目 ■
もしギシシャがデフォルトしたらどうなるでしょう。
シナリオは二つ考えられます。
(A) CDSが決済される場合
1) ヨーロッパは一時パニック状態になり、ユーロが一時暴落する
2) CDSが決済されれば、ヨーロッパの銀行はむしろ利益を上げる
3) CDSが機能する事が分かれば、ユーロは安定する
4) 一方でCDSを発行したアメリカの金融機関はFRBか政府の資本注入で生き延びる
5) ドルの大量発行によってドルの信認が揺らぐ
6) 米国政府の債務が急拡大して、米国のデフォルトリスクに注目が移る
(B) CDSが決済されない場合
1) ヨーロッパはパニック状態になり、ユーロが暴落する
2) CDSを発行したアメリカの金融機関はCDSを決済しなければ
デフォルトと見なされる
3) アメリカの大手銀行が軒並み経営破たんする
4) アメリカ発の経済危機が一気に世界を駆け巡り、世界恐慌が始まる
どちらにしても、危機はアメリカに波及する構造です。
ヨーロッパがギリシャ問題を解決しないのは、
ギリシャ問題はアメリカに突き付けられた銃口だからです。
CDSが決済されるなら、ヨーロッパは自らの懐を痛める事はありません。
尤も、ユーロの信認は揺らぎますが、
デフォルトした国は、ユーロから切り離して行けば、
デフォルトした側は通貨安政策で債務を圧縮出来、
ユーロは健全な加盟国に収斂してゆくので、むしろ健全性が向上します。
■ 結局CDSも実際の国債発行額程度にヘアカットされるのでは? ■
いずれにしてもギシシャは試金石とされている訳で
デフォルト状態でありながら、CDSの決済の準備が出来るまで
「まな板の上のコイ」状態が続くのでしょう。
落とし所は、CDSのヘアカットで、
例えば、国債発行額と同等水準までヘアカットされるかも知れません。
この場合は、ギシシャ国債を所有する金融機関が
CDSを国債購入額以上所有していなければ、75%の損失が発生します。
現在交渉が暗礁に乗り上げているギシシャ国債ですが、
国債所有者がCDSを所有していれば、
デフォルトイベントが発生しても
ヘアカットに応じた水準の利益は最低でも得られる可能性があります。
■ アメリカの銀行は25兆円の損失に耐えられるか ■
ギシシャのCDSが75%のヘアカットされたとして、
アメリカの銀行はその支払いに耐えられるでしょうか?
投資銀行やAIGなどの保険会社がギシシャのCDSを発行していたとして、
単純に考えれば、一行当たり数兆円の支払い義務が生じます。
多分、バーセルⅢを満たす程度まで自己資本比率を高めても、
少し危ない様に気がします。
不足分はFRBか連邦政府が資本注入するのでしょう。
ギシシャ一国のデフォルトなら、アメリカも一時的には凌げそうです。
しかし、アメリカの実態経済は統計の数字以上に酷い状態です。
その上、銀行が再び国有化という事態に陥れば、
ドルや米国債にとって、良い材料とは言えません。
ギシシャのデフォルトは、ヨーロッパとアメリカの立場を反転させる
きっかけとなるのかも知れません。
今年一番の妄想を書き綴ってみました。