(ロイター)
■ ペルシャ湾周辺に米空母が3隻終結? ■
1月3日にペルシャ湾入り口を米空母通過して
アラビア海方面へ出て行きました。
これは米軍最大級の航空母艦、ジョン・C・ステニス。
http://www.afpbb.com/article/politics/2848446/8243862
さらに2隻の米空母がアラビア海に向かっている様です。http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE80A05U20120111
これで合計3隻の米空母がアラビア海に終結します。
空母の単独行動は考えられないので、
駆逐艦などを含む艦船群が3セット、
アラビア海に展開するといいう事になります。
■ 海に浮かぶ飛行場 ■
空母はまさに海に浮かぶ飛行場です。
戦闘機や爆撃機には航続距離の限界があります。
日本の自衛隊機は、北朝鮮を空爆しても、
片道の航続距離しか持たないので、国内に帰還出来ません。
ですから、戦闘地域周辺に飛行場を移動する手段として、
航空母艦が運用されます。
イランは米空母がペルシャ湾内に戻らないように警告しています。
現在の戦争では、戦争初期に航空戦力で対空防衛を無力化する事が定石です。
1) 誘導ミサイル、相手国の対空ミサイルやレーダーなどの軍事拠点を攻撃
2) 対空防衛をある程度無力化した後、戦闘爆撃機でピンポイント爆撃
3) 敵の航空戦力と防空網を無力化した後、地上軍が上陸
4) ヘリコプターなどの航空戦力がこれを上空から支援
一般的にはこの様な作戦が取られるはずです。
初段の遠隔攻撃で相手国の航空戦力は滑走路を初め
運用不可能な程破壊されえうので、
航空機が爆撃する状況では、相手国の航空戦力との交戦はほぼ無いでしょう。
追撃される機体は、地対空ミサイルか、高射砲によるもので、
攻撃側の航空戦力の損害は軽微です。
これが湾岸戦争以降の現代の戦闘で、
リビアでも同様の作戦が遂行されています。
米空母3隻がアラビア海に終結する事は、
あからさまなアメリカのイランに対する挑発です。
■ それらしい「演出」なのか、「本気」なのか? ■
イラン戦争が勃発するかどうかは不透明です。
アメリカがドルと自国経済に見切りを付けたならば、
イランとの開戦もあるでしょう。
しかし、今は未だその時期では無い様に思われます。
アメリカのイランに対する強硬姿勢は
ヨーロッパに対する牽制では無いかと私は考えます。
ギリシャ問題で揺れるユーロ圏ですが、
ユーロの財政統合などの合意とギシシャ救済の道筋が立つまでは
ユーロは不安定な状態に置かれています。
そこにイラン戦争が勃発すれば、「有事のドル買い」が発生します。
ユーロ圏の資金は一気にアメリカに流れ込み、
ユーロはコーナーに追い詰められます。
ユーロ圏がギリシ破綻によるCDSでアメリカを脅すなら、
アメリカは中東有事で、ユーロ圏を脅すという構図ではないでしょうか。
■ 3月までは開戦は無い? ■
湾岸戦争やイラク戦争で最大の問題は地上軍の移動でした。
湾岸戦争ではヨーロッパの地上軍を、
どうやってクウェートまで海上輸送するかが大問題でした。
イラク戦争ではラムズフェルドは地上軍を軽視しましたが、
それでも多国籍軍を組織して、主要な都市と輸送兵站路は確保しました。
イラクから撤退したアメリカ海兵隊が
現在、どこに居るのかが気になります。
米本国のニュースにイラク帰還兵のニュースが見られません。
イスラエルで待機しているという情報もあります。
何れにしても、米軍の展開が可能だとしても
開戦に向けた国際的コンセンサスが出来上がっていないので、
3か月以内の開戦は不可能とだと思います。
■ 中期的には、イラン戦争は在り得る ■
アメリカは日韓とEUにイランからの原油輸入を止める様に強要しています。
これおそが、イラン戦争を本気で開戦するというサインだと私は思います。
いきなり開戦されたのでは、
石油供給の1割程度をイランに依存する国は、
混乱をきたします。
日本も外相がアラブ首長国連邦に石油買い付け交渉に出向いたり、
本格的にイランからの石油禁輸に備えた動きを見せています。
ヨーロッパはリビアを既に押さえています。
6月以降であれば、イラン戦争が勃発する可能性は低くはありません。
ユーロもその頃までには安定してNATO軍を戦闘に参加させる事が可能になります。
■ 戦闘継続能力を欠く欧米 ■
今の欧米の財政状況で、イランとの長期戦を戦う事は不可能です。
中露はイラン側に付くでしょうから、戦闘が長期化すれば
欧米の経済が破綻する結果を招きます。
そこで、早期に停戦が合意され、
アメリカとヨーロッパの中東での支配力は大幅に低下します。
■ 中東で孤立するイスラエル ■
その煽りを受けるのがイスラエルです。
イスラエルがイラン戦争に参戦すれば、
中東戦争に発展するので、
今回もイスラエルは蚊帳の外かも知れません。
結果、アメリカとNATOが撤退した中東にイスラエルが取り残されます。
アメリカの後ろ盾を失ったイスラエルは
中東の国家と共存を選ぶしか道は無くなります。
周囲をアラブ国家に囲まれて、
まさか国家の滅亡を選択するとは思えません。
■ ヨーロッパは中東よりもアフリカを重視する ■
リビアの政変にフランスやイギリスが熱心に肩入れしていた様に、
ヨーロッパはアフリカの利権に興味がある様です。
兼ねてから、イギリスもアフリカを重視しています。
ユーロッパは「中東に春」を利用して、
巧みにアメリカの影響を中東やアフリカから排除しています。
どうやら、アメリカは中東とアフリカから締め出される様です。
その代わり、環太平洋地域での覇権を約束されているのでしょう。
アメリカ + 環太平洋 + (南米)
ヨーロッパ + アフリカ
中国 + ソビエト + インド + 中央アジア + 中東 (緩やかな協調)
何かこんな形に世界が再編されそうです。
それぞれのブロックで統一通貨に向けた動きが発生し、
そしてそれらを束ねる形で、公平な基軸通貨が採用されるでしょう。
新しい世界で、ドルの基軸体制が存続する理由は見当たりません。