■ アメリカはいつ元安容認に方向転換したのか? ■
アメリカは自国製造業保護の理由から以前は中国を為替操作国として非難し、元高にする様に中国に要求していました。しかし、昨今の中国の元安誘導をアメリカは黙認しています。
ロイターなどでは米利上げを前にしてドル高が進行し、元が割高になったと説明していますが、アメリカが為替操作国として中国を非難していた時期に比べ、中国は格段に豊になり、インフラや製造設備の蓄積も進んだので、元は対ドルで高くなりこそすれ、安くなるというのはどうにも釈然としません。
■ 「元安=ドル高」による消費の拡大 ■
既にアメリカの製造業の多くが中国に生産拠点を移転したので、現在はAppleを始めとするアメリカのグローバル企業の利益は「元安」によって拡大します。アメリカの巨大なGDPの大半は内需なので、ドル高元安になれば、アメリカ国内の物価は下がり、消費が拡大すると共に、生活に余裕が生まれれば住宅を購入しようとする人も増えて来るはずです。
アメリカの経済における住宅建設の影響は非常に高く、リーマンショック後に低迷している住宅建設に火が付けば、アメリカ経済は本格的な回復軌道に乗ります。
中国は元安誘導を始めていますが、これに対してアメリカは一切文句を言っていませ。G20では中国を非難した日本だけが浮いていました。
■ 強いドルの時期が到来する ■
アメリカは強いドルと弱いドルを使い分けて世界経済をコントロールして来ましたが、FRBが利上げに成功すれば「強いドル」の時期が再び到来します。
世界から米国内に資金が還流して、米経済が拡大するフェーズとなれば、当然米国の巨大な消費の歯車が回り出し、中国の対米輸出も拡大します。これはアメリカにとっても中国にとっても(日本にとっても)好ましい事と思えます。
■ アメリカ経済はバブル化していない? ■
リーマンショックはサブプライム層への無謀なローンの貸し出しと言う、米住宅バブルの末期症状が発端となりました。
米国のバブル崩壊はほぼ10年周期に発生していますが、その原因はFRBの利上げです。不景気対策としてFRBが利下げを行い10年程度経つと、商業不動産市場や、IT市場などでバブルが生まれました。そして利上げでそれが崩壊する事を繰り返して来ました。
ところが今回のアメリカでは「バブル」と言うほどの好景気は生まれていません。だから多くの方が、「アメリカ経済はバブルでは無いから大丈夫だろう」と安心しています。
■ 既にバブル化している市場 ■
現在の世界は量的緩和による過剰流動性によって、既にバブル化しているというのが私の考え方です。
ここがサブプライムショックと今後訪れるであろう経済危機の大きな違いで、サブプライムショックは米経済の好調フェースの最後に訪れましたが、次回の危機は米経済の回復そのものが引き金になって発生します。
米の実体経済が回復して金利上昇が発生した時に、金利が下がり過ぎたジャンク債市場などで一斉に破綻が始まるからです。
■ 成長と破綻のジレンマ ■
アメリカが強いドルに転じてFRBが利上げを進めれば、世界経済の破綻が早まります。世界経済は成長と破綻のジレンマを既に抱え込んでいますのです。
だからこそ、FRBの利上げ予測でこんなにも世界経済が動揺しているのです。
ジム・ロージャースは「FRBの利上げは遅すぎた」「早ければ2016年には世界経済は崩壊し始めるかも知れない」と発言しています。
私は米経済の変調は利上げ後2年程度でバブルが膨らんだ後かと予測していましたが、既に世界がバブルを目いっぱい膨らめているのであれば、FRBが有る程度金利を上げた時点で、「量的緩和バブル」は限界を迎えるのでしょう。
延命の手段は、ドル高と金利差によって円キャリートレードやユーロキャリートレードが発生する事ですが・・・はたして「強いドル」政策は上手く行くのでしょうか・・・。