■ 向かい風の日は魔改造MTBでGO ■
大型連休となった今年のGWですが、自転車乗りにとっては拷問の様な日々をお送りかと思います。原因は「強風」。天気は良いのですが南からの台風並みの風にお悩みの方も多いのでは?自転車で出かけられないのも地獄、出掛けて向かい風と戦うのも地獄。尤も追い風ヒャッハーで北上して一泊したり輪行で帰る手も有りますが・・。
さて4月3日以来久しぶりの自転車の記事になりますが、この間、親戚に不幸があったり天気が悪かったりで1か月自転車に乗れませんでした。脚力も相当に落ちているのでGWはじっくり自転車に乗ろうと思いましたが・・・あいにくの「強風」。
5月3日も終始南風。午後からは強風の予報なので早めに出発して帰りは風に乗って楽をする事にします。朝5時から筍ご飯を炊いてリュックサックに積めます。娘へのお土産です。風の強い日は軽いバイクは進みません。進まないというよりもスピードに乗れないのでイライラすると言った方が正しいかもしれません。そこで、本日は重量級のクロモリMTBのラレー君で出発します。フレームもタイヤ周りも重たいMTBは、風による減速の効果が少ないのか向かい風でも楽しく乗れます。元々、スピードが出る訳では有りませんから巡航速度が30Km/hを切ってもイライラしません。
本日はせっかくのMTBですから房総半島の林道を攻めてみたい。そんなこんなで先ずは鹿野山を目指します。君津までの70kmをメーター読みAV24.5km/hで抑え目にして鹿野山のヒルクライムに取り掛かります。
フロントシングル、ドロップハンドル、クロモリ・ダブルバテットのメガチューブ、フルリジット・・・何から何まで所謂MTBからは外れた魔改造MTBのラレー君。ところが登りは結構得意で10%以下の斜度ならシッティングで余裕で登って行きます。フレームはガッチガッチですが、スクエアテーパードのBB周りが絶妙な柔らかさを生むのか脚に来ません。バス亭までをマイペースで登って28分でした。この先を考えて足は温存です。
■ 心霊スポット「奥米隧道」へGO!! ■
本日の第一の目的は、君津市の最奥部に在る三島湖畔の心霊スポット「奥米隧道」探検。鹿野山から410号線の交差点まで走り、「三島湖」という標識に従って湖畔に出ます。小糸川をせき止めて昭和30年に完成した灌漑用のアース式(主に土を盛り上げた)ダムです。ヘラ鮒釣りで有名らしく湖面には貸ボートが沢山浮かんでいます。
湖を囲む急峻な斜面は小糸川の浸食で出来たかつての谷です。
小糸川は「穿入蛇行」によって複雑に蛇行を繰り返していますので、そこをせき止めた三島湖も複雑な形をしています。
ダムの先を左折して集落の中をしばらく進むと橋が現れます。その橋の向こう側に見えるトンネルが本日のメインディッシュの「心霊スポット 奥米隧道」です。このトンネル、二つの長短のトンネルを合わせて「奥米隧道」と呼ばれますが、かつては一本のトンネルでした。ところが土砂崩れで寸断されてしまい、現在は二つのトンネルに。
1本目のトンネルは入口はコンクリートアーチですが内部は素掘りにコンクリート吹き付けです。ナトリウムランプが怪しい雰囲気を盛り上げます。
一本目の短いトンネルを抜けるとすぐに2本目のトンネルが有ります。ここには「扁額(へんがく)」は有りません。あくまでも隧道は1本なのです。「一人歩きキケン」の看板が恐怖を煽ります・・・何が危険なんだろう・・。
2本目のトンネルは1本目より長く、さらにカーブしているので出口が見えません。内部はゴツゴツのコンクリート吹き付けで、トンネルマニアの心を鷲掴みしそうです。
トンネルの中程には2か所の横坑が有ります。1本目は半ば土砂で埋もれていますが、2本目は底に水が溜まり、数十メートル先に出口の光が薄っすらと見えます。これ、水抜き用のい穴だと言われていますが、トンネルマニアの中にはここに入って行く猛者も居る様です。(「奥米隧道」でググるとそんなブログが出て来ます)
出口は湖と繋がっているらしく、「湖で自殺した人の霊がこの横坑を通ってトンネル内に入って来る」などという噂が・・・・。「貧相な身なりの霊」という目撃談?も有り、私としては美人の霊以外にはあまりお会いしたくないので、早々に出口を目指します。
トンネル出口から振り返ると、こちらには「おくごめずいどう」という扁額が掛っています。
■ 春の野辺の草を楽しみながら進む ■
トンネルを出た所で道端に野生のミツバを発見。数枚葉っぱを頂戴します。娘へのお土産です。
道はゆるやかにカーブしながら集落を抜けて行きます。道祖神でしょうか、小さな窪に納められています。
葉に紫の斑紋が有るのはホトトギス。秋に綺麗な花を咲かせます。花にも斑紋が有り、葉か花の斑紋を鳥のホトトギスの胸の斑模様になぞらえてこの名が付いたとか。
黄色の花はキンポウゲ科のウマノアシガタでしょうか?
こちらはノアザミでしょう。
ちょっと萎れていますがキク科のジシバリ。
農家の庭先で白い毬の様な花を咲かせるのはオオデマリ。良く似たコデマリはバラ科ですが、こちらはガマスミの仲間。レンプクソウ科です。
■ 房総の秘境へGO!!■
集落を抜けて少し進むと「奥米台隧道」が現れます。このトンネルのすぐ左側には旧道の短い素掘りトンネルが残っています。ここもトンネルマニアが好むスポットです。
奥米台隧道から先はアップダウンを繰り返しながら道は山奥へと分け入って行きます。所々にヤマツツジのオレンジが際立ちます。
カエデも新緑の季節です。
こんな山奥の道なのに「通学路」の標識が。多分、子供は既に居ないはずです・・・。私の母は小学生時代は4里の山道を毎日歩いて通ったそうです。今ならスクールバスの距離ですね。
所々に唐突に数軒の集落が現れますが・・・周辺の田畑は耕作放棄されています。電気ネットの名残で、そこがかつて耕地だった事が分かります。こんな山奥に人が住んでいる事に驚かされますが、一番近いスーパーにも車で1時間以上掛りそうですし、台風などで道が崩落したら孤立します。人口の縮小する日本で、この様な限界集落から順番に人が住まなくなり、田畑が放置されて行くのでしょう。
さらにしばらく進むとコンクリートアーチの新しいトンネルが現れます。かなり短いトンネルですが、痩せ尾根を貫通しているらしく、トンネルの向こう側は樹木の植生が異なります。
■ 電波が来ない・・・道に迷った ■
しばらく進むと二股の分かれ道が現れます。どちらに進めば良いか全く分からないのでスマホの地図アプリを起動。・・・アレ、現在位置の点滅は有れど、地図が出て来ません。アンテナを確認すると「圏外」・・・。ダヨねぇーーーー山奥だし。左の道は侵入禁止のゲートが道の片側を塞いでいたので、とりあえず右を選択します。
ゆるやかな登り基調の道は整備が行き届いています。「関東ふれあいの道」の標識が有り、崖側にはガードも設置されています。ブナかミズナラの樹林の下は、軽井沢の様な爽やかな空気に包まれています。
周囲は深い谷が幾重にも重なる房総独特の複雑な地形。「九十九谷(くじゅうくたに)」などと呼ばれたりもします。こんな複雑な山に足を踏み入れたら、突然目の前が断崖絶壁なんて事も良くある訳で、房総の山は低山ながら侮れません。実際の清澄山系では中高年の集団遭難で一夜のビバーグなんて事件も過去には起きていますし、ここ「清和の森」では、2005年に遊歩道から子供が40mの崖下に転落して亡くなっています。
先ほどの分岐点からかなり登って来ました。ヤマフジが盛りなので写真を撮る為に停車します。
ここでスマホを起動すると・・・おおー地図が復帰しています。高い所に来たので電波が入るのでしょう。・・・アレアレ、どうやら道を間違えたらしい。鴨川有料道路に出たいのに、このままでは県道410号線の君鴨トンネルに出てしまいます。ここでUターン。100m以上登って来た道を一気に下ります。
■ ブロックタイヤは未舗装林道の為に有る!! ■
分岐を右側に進むと、いきなり切り通しの急坂が始まります。斜度は10%に近い。ジメジメした切通しの斜面にはシダ類が数多く生えています。本当は観察して行きたいのですが・・・急坂で足を付きたく無いのは自転車乗りの性。
坂の上にはやはりトンネル。
そしてしばらく走ると直ぐに又トンネル。ところがトンネルの手前に再び分岐が現れます。今度は直進が正解と分かっていますが、右の急坂の上にチラリとトンネルが見えて・・・思わずそちらに進んでしまいます。ここから先は「三間林道」を進みます。
急坂を上ると直ぐに表れるトンネルは真新しい感じがしますが、トンネル前の道は小規模な崩落で石と土砂がゴロゴロしています。
トンネルを抜けると・・・・そこは「砂利道」だった。「ヤッター」と心の中で喝采を挙げます。ここまで走って来て初めてのダート走行です。MTBで来た甲斐があったと言う物です。
そして直ぐに又トンネル。
トンネルから先は砂利道の下り坂。ちょっとのハンドル操作やブレーキングでフルリジットのMTBはタイヤがズリズリと滑ります。転ばない様に慎重に下ります。これ、スピードとは違いスリルがあって面白い。下手に滑ると谷底へGO!!
そしてマタマタ・・・トンネル。このトンネル、何気に長くてさらに途中でカーブしています。しかし、車もほとんど通らない三間林道ですが路面も良く整備されており、トンネルも新しいコンクリートアーチ。いったい誰得なんだろう。オレ得?
この辺りから道の右手には川が並走します。平な岩の川床の房総の山間部に在りがちな沢筋です。ここら辺も調子に乗ってスピードを出すと砂利で滑って川へダイブしそうなので慎重に走ります。
所々、ヌタ(泥、ぬかるみ)が有ったりして、ダート感がUPして来ました。
「清和の森」のハイキングコースの案内板が出現します。「ヘビ、ダニ、ヤマビルに注意下さい」ってソフトに怖いんだけど・・・意外にマダニが怖い。皮膚の中に頭を突っ込まれたら取れないからね。ヤマビルなんて可愛いもんさ・・・。
しばらく進むと林道は唐突に終点になります。「ピストン林道」だったのですね。
でも、川の中を飛び石が続いています。ここから先は清和の森のハイキングコースなのでは?
MTBの行けない場所は無い。何故なら「担げ」ば良いのだから。と言う訳でラレー君を担いて飛び石を進みます。しかし飛び石もすぐに終わり、山への登り口が始まりますが・・・これ、何年も人が通っていませんね。水が滴り落ちてコケで覆われています。もう『天空の城ラピタ』状態で、コケに覆われたロボットを探しちゃいました。
ラレー君はフラットペダルなので、本日の靴はトレイルランですが、ここ登ったら流石に滑るだろう。
一方、沢筋は河原が無いので水中行軍必死。コケでツルンツルンの滑り台状態の川床なので、こちらは沢登用のワラジでも無ければ無理。まして自転車を担いでですから・・。
ここで「勇気ある撤退」を決意。・・・いや、その前にMTBで沢に入んなよ・・・って問題だけど。おかげ様でキレになりましたが・・・戻り道のヌタで結局ドロドロは必至だけどね。
■ バイバイ林道、未だ今度 ■
三間線を分岐まで戻ると、そこからは「香木線」が始まります。
トンネルを抜けると、その先は又トンネルだった・・・・。
そして又トンネル。房総の山は岩の質が柔らかいので、小さな沢でも深い谷を刻みます。必然的に尾根は痩せて、そこを貫通する道路はトンネルだらけになります。
しばらく進むと東山線と分岐。こちらも興味在りますが、とりあえず直進。
登り様を登り切った所にトンネルが・・・これが最後でしょう・・・きっと。
道は下りに転じ、ヒャッハー状態で一気に下ります。
植林された杉林が人里が近い事を知らせます。
とうとう「香木原線」の起点に到着です。車の音が間近に聞こえるので鴨川有料道路はすぐそこでしょう。
100m程走ると鴨川有料道路の料金所手前にポンと出ます。ああ、人間界に帰って来たんだな・・・なんて思ったりします。
ここから鴨川へは料金所先から一気の下ります。娘に筍ご飯と、野生のミツバを届けたら・・・これや一杯飲んで輪行だな・・・・。