■ 三菱だけが燃費偽装って何かの冗談でしょ? ■
三菱自動車の燃費偽装問題は、軽自動車を三菱からOEM提供受けている提携先の日産自動車の告発で発覚しました。この時点でこの事件には「胡散臭さ」がプンプン匂っていました。
日本の自動車メーカーの燃費がカタログスペックと実走行で大きく隔たりが存在する事はユーザーの常識ですが、燃費測定の方法に問題が在るるとされて来ました。
燃費測定はローラー台の上で行いますが、1991年に定められあた測定方法の「10.15モード」と2011年から採用されている「JC08モード」という測定法が有ります。JC08モードの測定では、実走行に近い細かな速度変化が設定され、路面抵抗や空気抵抗の影響を鑑みてデータが補正されるので、10.15モードに比べ燃費は1割程度低くなります。
要素 C08モード 10・15モード
平均速度 24.4km/h 22.7km/h
最高速度 81.6km/h 70km/h
所要時間 1204秒 660秒
走行距離 8.172km 4.165km
トヨタ自動車のホームページより
上の図はトヨタのホームページに載っている08モードの測定条件です。実際の市街地走行に近い複雑な速度の増減が繰り返されています。平均速度が24.km/hと低めなのは、停止している時間が多い為で、市街地の信号待ちに相当します。
この様に燃費の測定方法は時代と共に実走行に近づいていますが、雑誌やネットの燃費サイトなどに記載される実燃費はデータの50%から70%にしか達していません。これは測定方法が実走行と乖離している為と言われており、特にハイブリット車などは高速走行の割合が増えると燃費はカタログ値から大きく低下します。
ただ、日本車の燃費が実走行で低くなり原因は測定方法だけに留まりません。三菱の様な「明らかな偽装」で無くとも、「合法的な偽装」は各社日常的に行われている様です。
■ 実際には実用に耐えない測定用の車種のデータを提出したスズキ ■
最近話題になた「偽装?」にスズキ・アルト・エコが有ります。ライバルのダイハツ・ミラと過激な燃費争いをしていたアルトですが、数値上の燃費を叩き出す為に、20Lしか入らないガソリンタンク(通常40L)を装備し、内装もペコペコに軽量化し、タイヤも抵抗を減らす為に実用に耐えない細さにし、さらに燃費を稼ぐ為にギアー比を高めた「測定用車種」を開発します。この車を実際に走らせるとエンストを頻繁にお越して実用に耐えない様です。スズキは車種で得られた不自然に良い燃費のデータを宣伝に使っていました。ライバルのダイハツとて似たり寄ったりの事をしていると思われます。
■ アメリカの市販車の燃費データが実情に近い ■
日本と異なり「訴訟社会」のアメリカでは燃費データはユーザーの側に立った測定が行われています。
全工程 70.65km、95分
平均 44.62km/h
最高 128.75km/h
平均速度が日本より早いのはアメリカの道路事情を反映していると言えますが、日本でも地方都市近郊では平均速度はこの程度では無いでしょうか?
この他に、
シティーモード、
ハイウェイモモードの測定結果
平均的な走行をした場合の予想燃費
燃費の悪い走行をした場合の予想燃費
燃費の良い走行をした場合の予想燃費
などが記載されており、ユーザーの仕様環境に在った燃費データを参照する事が可能です。
ちなみに3代目プリウスの燃費データを日米で比較してみます。
【日本の基準】
JC08モード32.6km/L
10.15モード38km/L
【アメリカの基準】
シティモード / 21.68km/L
ハイウェイモード / 20.4km/L
新EPA予想燃費
平均的な走行をした場合の予想燃費 / 21.04km/L
燃費の悪い走行をした場合の予想燃費 / 14.88km/L
燃費の良い走行をした場合の予想燃費 / 25.93km/L
JC08モードとアメリカのEPA燃費(シティーモード)の間には3割以上の乖離が存在します。ネットなどで実際のユーザーが報告している実燃費の平均は18-19km程度ですから、いかに日本の燃費テストが現実と乖離しているかが分かります。
■ 暗黙の了解だった「偽装」をチクッた日産 ■
「他者の燃費テストの偽装」を告発すると日本の自動車メーカーはどこも「後ろめたい」事の一つや二つあるでしょうから、ブーメランとなって自分の元に帰って来る可能性が有ります。
今回、日産はOEM提供を受けている三菱の軽自動車の燃費に「虚偽」の可能性が有ると三菱側に伝えましたが、これが発覚すれば販売元の日産にも明らかに火の粉が降りかかります。本来はメーカーのトップ同時で内々に手打ちにしてもおかしく無い事件です。仮に三菱側に日産が抗議した場合、三菱は社内調査をするでしょうが、公表は控える様に日産を説得するはずです。
しかし、実際には三菱は社内調査の内容を公表せざるを得ませんでした。これは日産が国交省に訴えたり、マスコミに情報を公開すると脅したのでは無いかと思われます。(妄想です)三菱はこの恫喝に屈しざるを得なかった・・・。
■ 三菱に2000億円を融資して筆頭株主となる日産 ■
私はどこかの時点で日産が「三菱自動車の救済」に乗り出すと確信していましたが、案の定、日産は2000億円を出資して三菱自動車の3割の株式を取得し、筆頭株主になる様です。
「日産だから国産メーカーによる救済だから良かった」などと思うかも知れませんが、日産はかつて同じ様な手口でフランスのルーノーに乗っ取られています。現在、日産自動車の筆頭株主はルノーです。
当時の日産は過去の負の遺産によって経営危機でしたが、ゴーン体制で合理化を進めた結果、現在では生産量も販売額もルーノーを遥かに凌ぎます。現状はルーノーが日産に救済されている様な状況です。日産がルーノ株を買い増せばルノーを傘下に収める事も可能な状況ですが、日産の経営陣はゴーン社長のイエスマンなのでこの決断を下せません。
一方、ルノーの大株主であるフランス政府はルノーを半ば国営にする経営改革案を提出するなど、ルノーへの支配力の拡大を試みています。これにはゴーン社長を始めとするルノー経営陣が反発しています。
この様に、日産は既に「外資に乗っ取られた会社」ですが、その日産が三菱自動車の燃費偽装を告発して「正義」を遂行した後に、今度は「ホワイトナイト」として日産を救済するというのは実に「汚い手口」としか言いようが有りません。
三菱自動車は東南アジアなどで大きなシェアを有していますから、これを安く手に入れられるならば、いかに三菱自動車がダメダメな会社でも「安い買い物」と言えるでしょう。
■ グローバル時代のコンプライアンスの重要性 ■
「コンプライアンス」と叫ばれる様になってから、社内の手続きが肥大化したり、業務がスムーズに流れなくなったと感じている方は多いでしょう。
日々な些末な「コンプライアンス」に神経を使う一方で、日本の多くの企業では東芝は三菱自動車を例に取るまでも無く、トップ包みの「不正」が後を絶ちません。経営者が交代しても、代々引き継がれて来た不正を是正する事は、自分を引き立ててくれた先輩経営者を告発する事になるので難しい・・・。
こうして、現在の日本企業の多くが多かれ少なかれ脛に傷を持っていますが・・・これを外資は見逃しません。
日本国内の企業同士の間のあった「暗黙の了解」は、外資にとっては恰好の餌食なのかも知れません。なにせ彼らは「肉食の文化」ですから、弱った獲物は見逃しません。
・・・まあ、結論から言えば「不正を働いた三菱自動車」の自業自得でしか無いのですが・・・。尤も、トラックの脱輪事件の頃から何故か三菱自動車ばかりがターゲットになるのかは「陰謀論的な謎」の一つでは有りますが・・・。