■ 「安全資産の円が買われる」のウソ・ホント ■
リーマンショック後や最近の円高局面でよく聞かれる「安全資産の円が買われ・・・」と言うフレーズ、日本の景気が後退するのに何で円が買われるのか不思議に思われている方の多いでしょう。
実は「安全資産の円」と言うフレーズに実に舌足らずで大切な点が抜け落ちています。
1) 日銀の金融緩和で円が大量に供給される
2) 日銀の金融緩和で円安が進行する
3) 円を調達通貨とした「円キャリートレード」が発生する
4) 邦銀なども国内の金利が低いので円を売ってドルを買い海外投資を加速させる
5) 海外市場の先行きに不安が生じる
6) 邦銀などが海外のポジションを縮小してドル売り円買いで資産を国内に戻し始める
7) 為替相場に円高圧力が生じる
8) 円高傾向が予測されると円キャリートレードのリワインドが起きる
9) 為替市場の参加者も円高を意識するので円買いの動きが強まる
「海外市場のリスク拡大」を切っ掛けとして「円買い」が進むので、「安全資産としての円が買われ」るのでは無く、「危険なドル資産が売られ」と表現した方が適格かと思います。
■ 行き過ぎた円安の是正 ■
昨年後半から市場関係者は今年の円高を予測していました。理由の一つには「行き過ぎた円安」が有るかと思われます。
<過剰な円高期 2008後半~2012後半>
1) リーマンショックによって巨大な円キャリートレードのリワインドが発生
2) アメリカがQEを発動する
3) ユーロ危機が発生してヨーロッパも大規模な金融緩和に突入する
4) 緩和規模の小さかった円が買われ円高が進行する
<円高の修正期 2012後半~2013後半>
5) ユーロ危機が落ち着いてユーロ高・円安になり始める
6) 安倍政権が発足し日銀が異次元緩和を発表する
<過剰な円安期 2013後半~2015後半>
7) 日本国債の金利が低下して資金が国債から炙り出される
8) GPIFが運用比率を変更して米株、米国債投資を拡大する
9) 日銀が追加緩和を発表して円安に拍車を掛ける
10) アメリカがテーパリング、利上げ期に入りドル高・円安が強く意識される
<円安の修正期 2016前半~2016.6月>
11) 米利上が実行され、予測で買われ過ぎていたドルが売られる
12) 過剰な円安の修正が始まる
13) 円高に驚いて日本の海外投資が一気に国内に回帰しし始めドルが売られ円が買われる
<過剰な円高期 2016.6月~ >
14) イギリスのEU離脱問題から世界の市場が不安定に
15) ヨーロッパの銀行の経営危機が表面化
16) イギリスの不動産ファンドの取付騒ぎでヨーロッパの不動産バブルが弾ける
17) 不動産投資の多かったヨーロッパの銀行がさらに損失を拡大
現在は17)まで来ており、100円/ドルの攻防となっています。
■ 第二のリーマンショック ■
イギリスのEU離脱という「自爆攻撃」はヨーロッパの金融セクターを直撃しています。イギリス国内では不動産ファンドの多くが解約停止に陥っており、ロンドンを始めとした不動産バブルが本格的に崩壊し始めました。(ロシアマネーが多く流入していたので間接的なロシア攻撃にもなっています)
イギリスに限らず金融緩和バブルで世界の不動産市場はバブル状態でしたから、ヨーロッパでもアジアでも不動産バブルが終焉を迎えます。(当然日本でも)
金融機関の多くは金利確保の為に不動産市場に巨大な投資をしていましたから、日本の平成バブル崩壊時と同様に世界の多くの銀行の経営が怪しくなります。既にイタリアの銀行が経営危機の陥り始めています。
こうして「イギリスの自爆攻撃」はどうやら第二のリーマンショックの引き金を引いた様で、日本はこれから再び「行き過ぎた円高」の時期を迎える事になるのでしょう。庶民にとっては物価が下がるので嬉しいのでうすが・・・・景気悪化で仕事が減るのが悩みの種。リストラも始まるでしょう。皆さんご注意を。