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節度を守った財政ファイナンス・・・異次元緩和第二形態

2016-10-05 10:12:00 | 時事/金融危機
 
■ 日本の財政の現状 ■ 




財務省のホームページより

<歳入>

1) 日本の2016年度の国税の税収は57兆円。
2) 歳入における国債費は34兆円。
3) 建設国債も含めると国債費は39兆円。

<歳出>

1) 国債費は23兆円。
2) その内、利払い費は約10兆円。

<国債発行額>

1) 2016年度の国債発行額162兆円
2) 新規国債34兆4000億円
   復興債2兆2000億円
   財投債16兆5000億円
   借換債109兆1000億円

■ 国債償還60年ルールと借換債 ■

国債の償還ルールには「60年以内に償還する」というルールが在ります。赤字国債(特例国債)や建築国債は10年毎に借り換えをしながら、60年を掛けて償還すれば良い決まりになっています。

例えば500億円の国債を発行し、10年後に100億円を償還し、400億円を借換債を発行して借換えます。次の10年で又100億円償還し、残りの300億円を借換えます。こうして60年を掛けて償還し続ける。


「借換」は本来は建設国債にしか認められておらす、1973年に初めて借換債が発行されました。その後。1985年から赤字国債(特例国債)にもこのルールが適用されます。

日本は1970年代以降、建設国債や赤字国債を発行し続けていますが、これらの初期の国債の償還は現在も続いています。そして赤字国債や建設国債も増え続けていますから、とうとう借換えだけで100兆円以上の国債を毎年発行しています。

借換債の発行は特別会計となっており国会の審議の対象外となっています。過去の国債の発行に対して機械的に処理されるので審議の対象外なのです。

しかし、借換債の10年国債にも金利は発生します。

■ 10年債までの金利をゼロにペッグする異次元緩和の第二形態 ■

借換債も含めた国債の金利は、歳出の利払費として計上されます。現在は10兆円ですが、国債金利がゼロ近傍に固定されている事で利払費の増大を防いでいます。

これ、民間の債務圧縮と同じで、過去に発行した金利の高い借入を、金利の低い資金で借り換える事で利払いを圧縮しているのです。

先日発表された日銀の異次元緩和の第二形態では10年債までの金利をゼロ以下にコントロールすると発表されています。これは、借換債の金利をゼロにする事に他なりません。

■ 長期国債は民間に、10年以下の国債は日銀に ■

10年債以下の国債の利払い費がゼロなので、日本政府は赤字国債を増発しても、利払いを気にする必要が無いというのが現在の日本の状況です。

さらに、日銀が年80兆円のペースで国債を市場から買い入れていますから、市場で流通する国債は減り続けています。日銀は国債残高の35%超を保有するに至り、このままのペースで買い入れを続けると、2018年度中に日銀の国債保有残高の比率は50%を超えてしまいます。

生保など、プラスの国債運用を必要とする金融機関は、国債金利がゼロ以下では安定した運用に支障が出ます。年金もゆうちょ銀行も、地方銀行も長期国債の金利までもがゼロ近くになってしまうと経営の継続性が保てません。

そこで、異次元緩和の第二形態では、日銀は10より長い償還期限の国債の金利をプラスに誘導し、イールドカーブをスティーブ化させる事を新たな目標としています。

10年債以下の金利の付かない国債は日銀が引き受け、10年より長い償還期限の国債を民間に残すという政策変更でしょう。

■ 国債発行額は借換債が膨らんで行くから、国債市場は枯渇しない ■

日銀の年80兆円という買い入れペースは鈍化するとの予測もあります。事実上のテーパリングです。

しかし、バブル崩壊以降、赤字国債の発行ペースは拡大し続けていますから、借換債の額も年々雪だるま式に膨らんで行きます。借換債だけでも毎年100兆円以上の発行がある訳ですから、日銀の買い入れによって国債市場が枯渇する事は在りません。

異次元緩和の第二形態はテーパリングでは無いと私は考えます。むしろ、金利の付かない10年債がどんどん発行されて行くのですから、むしろ日銀は買い入れ規模を拡大する可能性も高いと思います。追加緩和の余地は残されているのです。

■ 無限国債 ■

1) 10年債までの国債の発行コストはゼロ以下
2) 借換えによって、利払い費も圧縮されるい
3) 日銀に支払われた償還代金は、国庫に返納される(日銀は政府の子会社)
4) 日銀が償還金額分の国債を新たに購入すればロールオーバーとなる

以上の様に考えると、政府と日銀の間で循環する国債は「無限国債」の様相を呈しており、10年債金利がゼロ以下に抑えられている限り、利払い費の拡大が財政を圧迫する事も有りません。

■ 日銀と銀行の間でキャッチボールされていた資金の流れは変わるのか ■

日銀が国債購入に利用している資金は新たに発行した資金の他に、金融機関が日銀に国債を売却した資金を日銀当座預金にブタ積にしていた物も使われてきました。

しかし、新規の増える日銀当座預金に関しては0.1%金利は付かず、逆にマイナス金利が掛ります。銀行が日銀の当座預金に資金を積み上げる意味は次第に失われて行きます。

日銀当座預金から炙り出された資金は、国内や海外への投資で運用されると思われますが、国内の金利が低いので、海外に流れ出し易くなります。円安がこれに拍車を掛けますが、現在は円高が進行しているので、海外への資金流出は限定的です。

アメリカの利上げが遅れているので、金利差が付かず、ドル/円相場も円高傾向です。これでは本格的な円キャリートレードは起こり難い。

■ 財政拡大は難しい ■

一見、「無限国債」の環境が整い、「政府は国債を発行し放題」の状況が生まれています。だから「積極財政論」や「ヘリコプターマネー論」が台頭する。

しかし、日銀の買い入れる国債の額は、現状は年間80兆円なのだから、これを拡大しない限りは、市中で金利の付かない国債を買う金融機関は居ません。現にメガバンクは国債の保有額も残存年限も極端に圧縮しています。

日銀が買い入れ限度を年間90兆円、100兆円と増やさない限り、財政拡大は難しい状況です。

■ 「財政ファイナンス」の限度 ■

日銀の異次元緩和は明らかに財政ファイナンスですが、世界は今の所、これを見逃してくれています。アメリカもEUも脛に傷在る身ですから、日銀を攻めると、ブーメランの様に自分達に跳ね返って来るからです。

しかし、それ以上に、円が国際通貨体制の一角を占める現状で、「円危機」などが発生すると、リーマンショック以上の危機が世界経済を襲いますから、財務省と日銀が「景気回復の為の異次元緩和」という体裁を保っている間は、円が攻撃される様な事はありません。

しかし、流石に日銀が借換債の総額の年間100兆円以上の国債を購入するとなると、「日本政府はもう国債を税金で償還する努力を放棄した」と取られかねない。要は「お前らばかりズルい!!」という反感で、為替市場で円が売られ、円安が急激に進行します。一気の150円/ドル程度までは暴落する。

日本は輸入依存度の高い国ですから、ドル建てで輸入している資源や輸入品が極端に値上がりすれば、コストプッシュインフレが市中金利を引き上げ兼ねない。

こうなると10年債金利にも影響を与えますから、国債金利のコントロールに失敗して、10円台金利が上昇し始めると、誰でもハッピーの時間は終了を迎えるでしょう。

■ 異次元緩和の第一形態と、第二形態の役割 ■

財務省も日銀も自分達の目的が財政ファイナンスだとは口が裂けても言いませんが、市場はだいたいお見通しでしょう。ただ、今は揺すれば日銀がお金を出してくれるので、誰も大声では「王様は裸だ!!」とは言いません。

異次元緩和の第一形態(マイナス金利導入まで)の目的は、デフレ脱却を口実に、年間90兆円の事実上の財政ファイナンスを実施し、なおかつ10年国債までの金利をゼロ以下に抑制する事だった。

そして、第二形態の目標は。10年国債金利のゼロ金利の固定化。これは借換債の利払費をゼロにする事を目的としています。

イールドカーブのスティーブ化は銀行や生保への配慮と、低すぎる金利はバブルを誘発するので、不動産関連のバブル化抑制の目的も有るでしょう。


非常に巧妙な修正ですが・・・。


■ 長期的衰退 ■

日銀の異次元緩和の目的が財政ファイナンスである以上、日銀はテーパリングには踏み切れません。少子高齢化で成長力が低下し続ける日本で2%のインフレが達成される事は、極端な円安が進行しない限り起こらないでしょう。

しかし、労働人口が減り、高齢者が増え続け、年1兆円ずつ社会保障コストが増大する日本で、税収が飛躍的に拡大する事は在りません。むしろ税収は減って行く。

利払い費が抑制されているので、危機が急激に訪れる事は在りませんが、経済の成長力低下は国家を芯から蝕んで行きます。

新たな産業のイノベーションが起きて、人口に依らない経済拡大が達成されなければ、日本を待っているのは「緩慢な死」です。

多分地方財政から破綻が始まります。夕張市の様に行政サービスが極端に制限され、人口過疎地のインフラ整備が放棄される事から、人口流出が加速します。この様に地方の過疎地から国家が蚕食された様に衰退しますが、東京の近郊や東京市部の高齢化もかなりのペースで進むはずです。「介護難民」の話題が出始めていますが、公的サービスもいずれは破綻します。

衰退の進行を出来るだけ遅らせる為の財政ファイナンスですが、お金はあっても働き手が居ない・・・そんな時代が近づいています。

■ 海外発の危機 ■

絶妙なバランス感覚で財政ファイナンスを進行中の日銀と財務省ですが、一番怖いのが海外発の危機。

例えば金融危機が海外で再発した場合、金利の下がり過ぎた債権の信用が失われます。国債とて例外ではありません。

「QEや緩和的金融政策が金融崩壊を止める事が出来ずに、むしろ破壊を拡大した」という認識が生まれれば、現在の信用通貨システム自体の信用問題にも発展します。

「通貨と国債は表裏一体の関係」ですから、通貨の価値が失われても、国債の価値が失われても、現在の信用通貨制度は崩壊の危機を迎えます。

■ リセット祭り ■

仮にドルの信用不安に歯止めが掛らなくなれば・・・・もう「リセット祭り」しか有りません。

良く使われる手は「戦争」ですが・・・シリアでアメリカとロシアが直接やり合う一歩手前の状況が作られれています。

フィリピン大統領もオバマに「地獄へ落ちろ」と・・・・・。

何だか、最近、世界のタガが外れ掛けていますが、一番「オカシイ」のはアメリカの大統領選挙。国民は「腐ったミカンと、腐ったリンゴのどちらが好きか」と聴かれている訳で・・・茶番を通り越してギャグのレベルですが・・・。

どちらが大統領になったと所でロクな事が無い。ただ、トランプが大統領になりそうな場合は、就任前に金融危機が起きる可能性も高まります。前政権の膿は、政権交代の前に出してしまおうという意識が働きます。

オバマ就任前にリーマンショックが起きた事を思い出します。


・・・・あれあれ、真面目な記事にしようと思ったのに、途中から妄想が暴走してしまいました。オオカミ中年の戯言と思って後半は読み飛ばして下さい。