皆さま明けましておめでとうございます。
本年も「妄想」にお付き合いいただきたく、新年最初のネタは陰謀論から・・。
■ 陰謀論とトランプ ■
昨年の最大の話題はトランプが大統領に選出された事でしょう。彼は中流から没落した貧困白人層にアピールして当選したと言われています。
彼の選挙戦中の言動で気になるのは、度々「陰謀論」を口にしたり、twitterで発信していた事ではないでしょうか。選挙選直前にも「票操作が行われる」と警告しています。
私も含め、社会に不満を持つ人達は「陰謀論」が好きです。「世の中が上手くいかないのは誰かが良い思いをしているせいだ」という「陰謀論」はネット時代にあっては貧困白人層にも広がっています。
そこでトランプは発言に巧妙に「陰謀論」を混ぜ込んで、「オレが戦っているのは陰謀を企てるヤツらだ」という「救世主」を演出して見せたのです。実にチープな演出ですが、トランプのキャラクターと相まって、これは高い効果を発揮しました。
多くの陰謀論者達、例えば副島隆彦氏らがそれをして「トランプは世界の支配者と戦っている」といった評価を下しています。
しかし、トランプ新政権の顔ぶれは、結局はユダ金や軍の対中強硬派が名を連ねています。
■ オバマからトランプの転換 ■
オバマの政策は「平和主義」或いは「協調主義」でした。これは表向きは平和的に見えますが、実際には中東での米軍のプレゼンスを低下させる事でISの増長を裏から支援しました。「協調主義」は裏を返せば「強い指導力の欠如」と同義で、アメリカの影響力が低下した地域では、トルコを始めとして不安定要素が拡大しています。
ではトランプが強くアメリカ復活の為に、再び中東地域の軍事的な影響力を強化するでしょうか?答えはNOです。国民もそれを望んでいません。トランプ支持者はアメリカが世界の警察の座から降りるべきだと考えています。
「各国は自分の国は自分で守るべきだ、アメリカを頼るな」というのがトランプ支持者のスタンスです。これはオバマの安全保障政策をさらに進めたものとも言えます。
当然米軍の影響力が低下すれば、その地域は不安定化します。(争いの種を撒いて撤退しているのですから当然です)
こう考えると、トランプは彼の言動の勇ましさとは反対に、オバマよりも安全保障で弱腰なのかも知れません。ただ、「てめえら、オレに手を出してみろよ。ケツに穴が一つ増える事になるぜ!!」って捨て台詞を吐いて逃げていく姿を、何故だか周囲が「勇ましい」と勘違いしているだけ。
■ 対ロ融和路線と対中強硬路線 ■
トランプはロシアのプーチン大統領と良好な関係を築きつつあります。一方では中国とは距離を置いています。しかし、中露は結束が深いので、アメリカが中露を分断する事は出来ません。
ただし、ロシアとの関係改善によって、シリアの戦後処理は中露イラン主体(トルコも一枚噛みたがっていますが)で進むと思われます。ウクライナ問題もロシアに有利な状況になるでしょう。こうして中東やロシア周辺の軍事的なバランスはロシアの影響力が強まります。これはヨーロッパ諸国には脅威ですが、アメリカは海の向こうから高見の見物です。
同様に、東アジアで中国を強くけん制する一方で、実利的な所はしっかりと中国と協調すると主われます。小泉時代同様に政治と経済は別みたいなスタンスになるのでは。但し、中国にはそれなりの譲歩を要求するでしょう。
これで困るのは日本を始めとする東アジア諸国です。政治的に中国と距離を取らされ、経済の美味しい所はアメリカに持って行かれる可能性が高い。
■ 実にシタタカなトランプとその背後 ■
ネット時代に人々は大メディアを容易には信用しなくなりました。低学歴の人達は「ネットの噂」を鵜呑みにする事で、高学歴の人達は「ネットの真実」を邪推する事で「陰謀論的なもの」がだんだんと幅を利かせています。アメリカのオルタナティブ・メディアの台頭もこの一環です。
これは為政者や世界を動かす者にとっては都合の悪い事です。メディアで人々をコントロール出来なくなるのですから。
そこで彼らは作戦を変えたのでしょう。「陰謀論」を少し匂わせるだけで、人々は「正義」と勘違いする事に気付いたのです。
アメリカの安全保障政策も、外交政策も、経済政策もオバマ政権からトランプ政権で連続性が確保されているはずです。国内の利権配分にこそ差はあれど、国際的なアメリカの利益の構造は、そう変わるものではありません。ただ、同じ事をやるのにも「言い方」を少し変えると国民の支持は維持される・・・。
トランプ政権はきっとまっとうな政策を展開して行くと思われますが、トランプがそれを「トリック」の様に演出する事で、アメリカ人を熱狂させるのかも知れません。その「イカサマ」が通用している間は、アメリカはバブルを拡大する事でしょう。