■ ネットB層 ■
インターネットには様々な情報が溢れています。ネットを日常的に活用する人は、陰謀論も含め「世界の裏側」に触れる事も出来ます。
そうしたネット利用者の多くは「新聞やTVニュースは嘘ばかり」と考える様になり、さらにはそうした媒体に情報源を頼る人達(多くは高齢者)を「情報弱者」と蔑む様になります。
では、そうした人達が優れているのでしょうか?いえ、大方は所謂「B層」に分類されてしまうでしょう。
「B層」とは、郵政改革において小泉政権が戦略的に支持基盤とした具体的なことはわからないが、小泉総理のキャラクターを支持する層、内閣閣僚を何となく支持する層」に由来する言葉で、「B層=情報操作に対して免疫を持たない人たち」と解釈する事も出来ます。
当時は「子供や主婦やシルバー層」がB層の主要な構成要員でした。ネットなどの多様な意見に触れる事無く、メディアが垂れ流す「イメージ」に支配され易い人達であっとも言えます。
さて、20年が経過した現在、多くの人達がネットを通じて多様な情報に触れる事が出来る様になりました。それではB層と分類される人達は減ったのでしょうか・・・。答えは否です。トランプを大統領に選んだアメリカを例に取るまでも無く、「ネットB層」とも呼べる「情報操作に弱い人達」が大量に発生していると私は考えます。
「支配者達は子供を生贄にした儀式をしている」という情報に踊らされた「ピザゲート事件」に始まり、ネットにはセンセーショナルな情報が溢れています。「ネットB層」は、ワイドショーのネタに飛びつくのと同様に、ネットに散らばる「煽情的」な情報を収集し、「本当の世界は・・・」という妄想に取りつかれていきます。私も例外ではありません。
■ ネットB層を手玉に取ったトランプ ■
トランプの登場は「ポピュリズムの台頭」などと評価されていますが、私は「世界の闇の勢力と戦うトランプ」というイメージ戦略も彼を大統領に押し上げた要因と見ています。
ネットでは「イルミナティーを中心とする勢力がアメリカを利用して世界を支配している」というイメージが出来上がっています。そして、何故か「プーチンはイルミナティーに対抗する正義の味方」というイメージも広がっています。
実際にはプーチンは派遣国家であるアメリアに対する対立軸としてのロシアの代表であり、ソビエト崩壊後に西側勢力と結託して国家の財産である資源利権を私有化しようとしたオルガリヒと呼ばれるユダヤ勢力を駆逐して、国家権力を自分に集中させたに過ぎません。ただ、その結果、アメリカや一部のユダヤ勢力と対立している様に見えるだけです。
その様なネットB層の妄想である「イルミナティーと戦うプーチン」というイメージを、トランプを担ぎ挙げた人たちは選挙戦に上手に取り込みます。
選挙戦中はトランプはプーチンと親密さをアピールし、プーチン政権と対立を深めていたオバマやヒラリーこそ、「悪のイルミナティーの手先」だというネットB層の妄想を利用したのです。
ところが、当選後のトランプは手のひらを反す様に政権中枢を反ロシア勢力で固めてゆきます。
■ ロシアや中国を挑発するトランプ ■
今回のシリア攻撃は明らかに習近平のアメリカ訪問にタイミングを合わせて行われました。北朝鮮に対する中国の決断を迫る為だと解釈している人も多いでしょう。しかし、中国もロシアも今回のシリア攻撃によって、トランプ政権と距離を取らざるを得ません。なぜなら、中東における両国の利権は、シリアやイランによって担保されており、それらの勢力の崩壊を目論むアメリカとは決定的に対立するからです。
ロシアはアサド政権の後ろ盾となっていますが、それは地中海に面したロシアの軍港をシリア国内に構えているだけでも、アサド政権を支える十分な理由になります。さらに、シリアは中東からヨーロッパへのパイプラインの要の位置にあります。ウクライナと同様に、ロシアが絶対に影響力を低下させたく無い地域なのです。
■ ISISを援護するシリア空軍への攻撃 ■
トランプはCIAの演説で「ISISを殲滅する」とぶち上げました。ネットB層はISISの後ろにCIAやアメリカの軍需産業が居る事を知っていますから、「トランプがCIAを敵に回した」として、トランプを英雄視しました。
しかし、実際にはどうでしょう?シリアの空軍基地爆撃によってISISを援護しています。現在ISISはシリア軍やロシア軍の空爆によって支配地域を縮小しています。シリア空軍への直接攻撃によって、ISISは再び勢力を拡大する可能性が有ります。
■ シリア政府が化学兵器を使うはずが無い ■
シリア政府軍の化学兵器使用はアメリカやNATOの介入の原因になります。前回の化学兵器使用疑惑の際も、オバマが空爆に踏み切ろうとしますが、ロシアの圧力でこれを見送っています。
後日、国連の調査で、シリア軍が化学兵器を使ったという証拠は判明しませんでした。むしろISIS側の使用が疑われました。
シリア政府が化学兵器を保有していたとしても、その使用はアメリカやNATOの介入を呼ぶだけですから、アサド大統領がその使用を認めるはずはありません。仮にシリア軍が化学兵器を使用したとしても、その決断にアサドは関与していないはずです。むしろ、シリア軍が化学兵器を使用したならば、その決断を下した軍人はアメリカのスパイの可能性高い。
尤も、シリア軍にアメリカが化学兵器を使用する様に工作するよりも、ISISに化学兵器を使用させて、「シリア軍が化学兵器を使った!!」と触れ回る方が余程簡単です。
■ 合理的に考えれば、アメリカの奥の院に逆らう大統領が誕生するはずが無い ■
ネットB層はトランプがアメリカの「支配者」に対抗しているという幻想を膨らめて来ました。しかし、選挙が不正に操作されているなどの主張は、ネットB層が主張していた事です。
もし、仮に選挙が不正の操作されていたならば、その操作権を持つアメリカの奥の院が自分達に敵対する大統領を容認する訳が無い。そう考えれば、トランプが当選した時点で、ネットB層の理論に従うならば、トランプは「アメリカの奥の院が選んだ大統領」という事になります。
ネットB層の私は、そう解釈しています。
■ トランプだから容認されるシリア攻撃 ■
今回のシリア攻撃に対して、いつもはトランプを批判しているアメリカのマスコミも肯定的です。むしろトランプの行動力を評価している。
そして、トランプを支持したネットB層は、態度を決めかねている様に感じます。まさかこんなにも早くトランプが自分達の期待を裏切って、プーチンと敵対するとは思ってもみなかったからです。ただ、ネットB層も含め、「トランプだから仕方ない」という空気が蔓延している事も確かです
「トランプは何をするか分からない」「ビジネスマンのトランプの思考は普通の政治家とは違う」「トランプは初めにガツンとインパクトを与える。今回は習近平に対する先制攻撃だ}
だいたい、こんな理由を付けて、トランプのシリア攻撃を正当化しようとします。
「トランプもヒラリーと同じ穴のムジナだった」と彼らが気付くのには、まだ時間が掛かりそうです。