■ アメリカがサウジアラビアを抜いた ■
世界最大の産油国はどこか?
多くの人がサウジアラビアと答えるでしょう。しかし、2016年の統計では、アメリカの産油量がサウジアラビアを抜いて世界トップとなっています。
アメリカ 1370万バレル/日
サウジ 1190万バレル/日
ロシア 1100万バレル/日
中国 460万バレル/日
現在のアメリカの原油の日量産は900万バレル程度だそですが、その内の50%以上がシェールオイルになっているそうです。
■ 生産コストが下がったシェールオイル ■
私が「シェールオイル(ガス)は詐欺だ」といった記事を書いていた頃のシェールオイルの採算ラインは70ドル/バレル程度でした。
ところが現在は30ドル/バレルで生産出来ると言われています。その原因は採掘技術の進歩もありますが、シェール層が何層にも重なったバーミヤン鉱区の開発が進んだ事も影響しています。一か所の油井から何回かシェールオイル(ガス)を採掘出来るのです。
■ サウジアラビアよりも競争力が高いアメリカのシェールオイル? ■
サウジアラビアは原油価格が40ドル/バレルを下回る状況で、「原油価格は安すぎる」として産油国に生産調整を呼び掛けています。これをして、サウジアラビアの原油産油原価が40ドル/バレルを少し下回る程度だろうと予測すると大外れです。サウジアラビアの原油産出コストは極めて安く、4~10ドル/バレルです。
シェール油田の極めて採算性の良いもので25ドル/バレル程度ですから、産出コストだけを比較すると、サウジやその他の産油国にシェールオイルは太刀打ちできません。
しかし、産油国の多くが財政のほとんどを原油輸出に頼っているのに対して、多様な産業を有すアメリカ(ドル輸出が最大の産業ですが)は、原油価格の低下が財政を圧迫する事がありません。
だから、アメリカはシェールオイルの産出量を増やして、薄利でも産油国のシェアを奪う事が出来ます。サウジアラビアなどの産油国が減産調整してキープしている原油価格でシェール企業が利益を上げているのです。
■ そもそも自転車操業のシェール企業は一回の大きな危機で経営が破たんする ■
一昨年来の原油価格低下で、アメリカのシェール大手企業が経営破綻に陥りました。ウォール街でジャンク債を売って資金調達をしている多くのシェール企業は、ジャンク債の金利が上昇すると経営が難しくなります。
ジャンク債を発行する→その資金で油井を作る→シェールオイルを売る→その利益で金利を払う
こんな感じの自転車操業ですから、金利や原油価格の変動に大きな影響を受けます。サウジアラビアや他の産油国が減産協調して原油価格を下支えしているから生き延びている様なもので、もし産油国が本気になって原油価格の下落を仕掛けたら、シェール企業は一たまりありません。
■ エクソンモービルもシェール大手である ■
シェールビジネスに乗り遅れた感のある石油最大手のエクソンモービルですが、経営が行き詰ったシェール企業を買収して、いつの間にやらシェールオイル(ガス)においても大きなシェアを手にしています。
しかし、スケールメリットの出難いシェールビジネスでは、個々の油井の採算性が飛躍的に向上する事は有りません。ただ、資金調達が安定する程度の差です。
日産原油量の半分以上をシェールオイルが占め、さらに大手石油各社がシェールビジネスのプレーヤーになり、さらにジャンク債市場でシェール企業の存在感の大きなアメリカでは、シェールビジネスの先行きが、石油産業のみならず、債券、金融市場にも大きな影響を与えます。
■ 国務長官がエクソン・モービルの会長という意味 ■
「アメリカのシェールビジネスは拡大している」という表面的な事象の裏を少し覗いた上で、アメリカのトランプ政権に目を移してみましょう。
国務大臣のレックス・ティラーソン氏はエクソン・モービルのCEOでした。彼を国務大臣に推挙したのはキシンジャーだと言われています。そして、トランプ政権は政権発足後にシリアの空軍基地をトマホークで空爆しました。
「北朝鮮を威圧している」との論調が中心のシリア空爆ですが、私は「石油を巡る中東情勢」の一環と見ています。
イスラム・シーア派の反政府勢力を国内の湾岸油田地帯に抱えるサウジアラビアは、イランやシリアやヒズボラの台頭と、彼らがサウジ国内のシーア派勢力を支援する事を何より恐れています。
・・・原油価格を安定させる見返りのシリア空爆・・・こう考えるとトランプの決断はそれ程的外れでは無いでしょう。そして、絶好調を装うアメリカのシェールビジネスが、非常に危ういバランスの上に現在も在る事は、今後の世界情勢を占う上で重要です。
最後に、トランプ政権で世界を飛び回るティラーソン国務長官。
オバマ政権時のヒラリー国務長官と同様に、現政権においても大統領よりも国務長官の方が重要なポストになった様です。
世界最大の産油国はどこか?
多くの人がサウジアラビアと答えるでしょう。しかし、2016年の統計では、アメリカの産油量がサウジアラビアを抜いて世界トップとなっています。
アメリカ 1370万バレル/日
サウジ 1190万バレル/日
ロシア 1100万バレル/日
中国 460万バレル/日
現在のアメリカの原油の日量産は900万バレル程度だそですが、その内の50%以上がシェールオイルになっているそうです。
■ 生産コストが下がったシェールオイル ■
私が「シェールオイル(ガス)は詐欺だ」といった記事を書いていた頃のシェールオイルの採算ラインは70ドル/バレル程度でした。
ところが現在は30ドル/バレルで生産出来ると言われています。その原因は採掘技術の進歩もありますが、シェール層が何層にも重なったバーミヤン鉱区の開発が進んだ事も影響しています。一か所の油井から何回かシェールオイル(ガス)を採掘出来るのです。
■ サウジアラビアよりも競争力が高いアメリカのシェールオイル? ■
サウジアラビアは原油価格が40ドル/バレルを下回る状況で、「原油価格は安すぎる」として産油国に生産調整を呼び掛けています。これをして、サウジアラビアの原油産油原価が40ドル/バレルを少し下回る程度だろうと予測すると大外れです。サウジアラビアの原油産出コストは極めて安く、4~10ドル/バレルです。
シェール油田の極めて採算性の良いもので25ドル/バレル程度ですから、産出コストだけを比較すると、サウジやその他の産油国にシェールオイルは太刀打ちできません。
しかし、産油国の多くが財政のほとんどを原油輸出に頼っているのに対して、多様な産業を有すアメリカ(ドル輸出が最大の産業ですが)は、原油価格の低下が財政を圧迫する事がありません。
だから、アメリカはシェールオイルの産出量を増やして、薄利でも産油国のシェアを奪う事が出来ます。サウジアラビアなどの産油国が減産調整してキープしている原油価格でシェール企業が利益を上げているのです。
■ そもそも自転車操業のシェール企業は一回の大きな危機で経営が破たんする ■
一昨年来の原油価格低下で、アメリカのシェール大手企業が経営破綻に陥りました。ウォール街でジャンク債を売って資金調達をしている多くのシェール企業は、ジャンク債の金利が上昇すると経営が難しくなります。
ジャンク債を発行する→その資金で油井を作る→シェールオイルを売る→その利益で金利を払う
こんな感じの自転車操業ですから、金利や原油価格の変動に大きな影響を受けます。サウジアラビアや他の産油国が減産協調して原油価格を下支えしているから生き延びている様なもので、もし産油国が本気になって原油価格の下落を仕掛けたら、シェール企業は一たまりありません。
■ エクソンモービルもシェール大手である ■
シェールビジネスに乗り遅れた感のある石油最大手のエクソンモービルですが、経営が行き詰ったシェール企業を買収して、いつの間にやらシェールオイル(ガス)においても大きなシェアを手にしています。
しかし、スケールメリットの出難いシェールビジネスでは、個々の油井の採算性が飛躍的に向上する事は有りません。ただ、資金調達が安定する程度の差です。
日産原油量の半分以上をシェールオイルが占め、さらに大手石油各社がシェールビジネスのプレーヤーになり、さらにジャンク債市場でシェール企業の存在感の大きなアメリカでは、シェールビジネスの先行きが、石油産業のみならず、債券、金融市場にも大きな影響を与えます。
■ 国務長官がエクソン・モービルの会長という意味 ■
「アメリカのシェールビジネスは拡大している」という表面的な事象の裏を少し覗いた上で、アメリカのトランプ政権に目を移してみましょう。
国務大臣のレックス・ティラーソン氏はエクソン・モービルのCEOでした。彼を国務大臣に推挙したのはキシンジャーだと言われています。そして、トランプ政権は政権発足後にシリアの空軍基地をトマホークで空爆しました。
「北朝鮮を威圧している」との論調が中心のシリア空爆ですが、私は「石油を巡る中東情勢」の一環と見ています。
イスラム・シーア派の反政府勢力を国内の湾岸油田地帯に抱えるサウジアラビアは、イランやシリアやヒズボラの台頭と、彼らがサウジ国内のシーア派勢力を支援する事を何より恐れています。
・・・原油価格を安定させる見返りのシリア空爆・・・こう考えるとトランプの決断はそれ程的外れでは無いでしょう。そして、絶好調を装うアメリカのシェールビジネスが、非常に危ういバランスの上に現在も在る事は、今後の世界情勢を占う上で重要です。
最後に、トランプ政権で世界を飛び回るティラーソン国務長官。
オバマ政権時のヒラリー国務長官と同様に、現政権においても大統領よりも国務長官の方が重要なポストになった様です。