■ 米10年債金利に注目 ■
ダウが大きく下落しましたが、「調整だ。まだまだ上昇する」との市場関係者のコメントを流すマスコミは無責任ですよね。
米10年債金利は心理的な壁の2.6%を超え、2.8%も越えて3%を目指していますが、そろそろ金利の上昇が投資マネーに影響を与え始めます。
■ 債権市場が真っ先に崩壊する ■
ハイイールド債 値動き 3年
基本的には一番バブル化していた市場から崩壊しますが、それは債権市場。特にジャンク債市場がヤバイのは何度も書いていますし、多くの方も指摘する所。
FRBが利上げに踏み切ったのは2015年12月ですが、そこからジャンク債(ハイイールド債)の下落(金利は上昇)が2016年半ばまで続きます。ただ、FRBの利上げペースがゆっくりだった事、そして日欧の中央銀行が量的緩和を継続していた事で、世界的な金余りは継続し、ジャンク債子市場も値を戻していました。
しかし、トランプラリー以降の株式市場の狂騒的上昇とは異なり、ジャンク債市場は値崩れこそしていませんが、値上がりもしていませんでした。
要は、ジャンク債市場やその他の債権市場、国債市場は株式より先に「バブル化」していると市場は観ているのでしょう。「債権市場の金利は低すぎる(価格が高すぎる)」のです。
■ ジャンク債市場の値動きより出来高に注目を ■
上のグラフで注目すべきは、ジャンク債市場の出来買高です。FRBの利上げ後の下落局面よりも最近の出来高が大きい。
ジャンク債価格だけ見ると最近の値動きは少ないのですが、誰かが大きく打って、そして誰かがそれを穴埋めしている様に見えます。市場は「泡立っている」。
■ ジャンク債市場に投入されている日本の年金資金 ■
GPIFは2015年10月にジャンク債市場への投資を発表していますが、これは明らかにFRBの利上げによって下落する市場を支えるアメリカの意図が見えます。利上げで真っ先に崩壊が予想される市場に敢えて遅れて参加するのですから、まさに「カモネギ」です。
■ ゆうちょ銀行もジャンク債を増やしている? ■
ゆうちょ銀行決算資料 1217年3月期
ゆうちょ銀行決算資料 1217年9月期
ゆうちょ銀行は国債のゼロ金利、マイナス金利の煽りを受けて、国債一辺倒の資産を大きく組み替えています。その多くは米国債投資ですが、ジャンク債にも投資している事が上のグラフからも分かります。
ゆうちょ銀行は、海外債権投資などのノウハウを持っていませんでしたから、GPIFやゴールドマンサックスのOBを引き抜いてこれらの分野に参入しています。国内のオルタナティブ投資にまで手を広げるなど、これまでの保守的な運用からリスクを取る運用に代わっています。
ジャンク債の内容が国内なのか、海外なのかは分かりませんが、昨年3月期よりも9月期の方がジャンク債の保有割合が増えています。為替の影響も有るかと思いますが、少なくともジャンク債を売ってはいません。195億円の3.64%ですから約7兆円の資金をジャンク債市場に投入しています。
GPIFと合わせるとそれなりの資金になるでしょう。
■ 投資信託にもシコタマ含まれるジャンク債(予備軍) ■
ゴールドマンサックス 毎月分配型債権ファンド「妖精物語」 2017.12月
銀行やゆうちょ銀行などで販売される「ハイイールド債ファンド」などは、まさにジャンク債に投資して高金利を得る投資信託ですが、そんなのを買う人は無知な人か、捨てる程お金が有る人でしょう。
問題なのは、一見健全なファンドを装っている投資信託。上のグラフは私が定点観測している(理由はリーマンショック前に母親が銀行で買わされたから)ゴールドマンサックスの毎月分配型債権ファンド「妖精物語」の債権の格付けです。
ジャンク債はBB以下の格付けですから、BBB格以上で構成されるこのファンドは一見健全に見えます。しかし、一旦債権市場の下落が始まれば、BBB格の多くがBB格以下に格下げされるであろう事はリーマンショックで経験済み。
現在の債権市場は国債市場までも含めて「バブル」ですから、こんな金融商品は一旦危機が始めればボロボロになります。ただ、「妖精物語」はリーマンショックの時にも結構頑張って値を戻しましたが、各国中央銀行の狂った様な金融緩和に救われただけ・・・。それを言ったら金融市場全体が救われたのですが・・。
日本に限らず、世界的な低金利で、人々のお金は年金やファンドに投資される事によって債権市場に流入しています。これらの資金が債権市場を支えていますが、金利上昇は現在の景色を一変させるハズです。
株式市場の派手な値動きに目が奪われがちですが、次なる危機も、リーマンショック同様に債権市場から始まる・・・。次のポイントは米10年債金利3%越え。