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米国債金利上昇の理由・・・再び金利に反応し始めてた市場

2018-02-05 05:57:00 | 時事/金融危機
 

■ バブルに支えられる米国景気 ■

先週末にダウ平均株価が大幅下落した理由は「米国の賃金の大幅な伸び」によると報道されていますが、こんなのはウソ。

確かにアメリカの労働市場はほぼ完全雇用を実現しており、賃金の上昇が始まっているのでしょうが、日本より先行して「雇用の質」が低下したアメリカでの賃金の伸びには限界が在ります。そもそも、米国の景気回復の原動力が何かを考えれば、米経済の継続的回復などは妄想に過ぎない事に気付くはず。

アメリカではFRBの緩和的金融政策の影響で資産バブルが再び発生しています。トランプ政権発足後に顕著に上昇した株価に目を奪われがちですが、それ以前に住宅価格がリーマンショック以前の水津まで持ち直した地域も多い。

サブプライム危機以前の米経済の状況を思い返せば分かりますが、住宅などの資産価格が上昇すると新たな担保権が生まれるアメリカでは、住宅価格の上昇は消費の拡大に貢献し易い。同様に株価上昇も庶民の財布の紐を緩める要因となります。

この様な「無理な景気回復」に継続性が無い事は市場関係者なら誰でも理解しています。

■ 財政悪化予測による米国債金利の上昇 ■

企業や富裕層への減税、さらには公共事業の拡大による景気回復を予測する報道も多いのですが、財源が確保されていない以上、米国債の発行拡大によって財政赤字は拡大します。

昨今の米国債の金利上昇の理由の一つが、米国債の需給の変化による金利上昇を先取りしたものであり、さらに中国が米国債の購入を減らすのでは無いかという憶測も米国債の金利上昇を助長しています。

■ ドル安による米国債金利の上昇 ■

日銀は国債買い入れの限界を先延ばしする為に、国債の買い入れ額を年間80兆円から60兆円に減らし、さらに50兆円に減らします。これは明らかに「テーパリング」です。(黒田総裁がそう言わなくても市場はそう判断します。)

同様にECBも緩和縮小を表明しており、日欧の量的緩和縮小で明らかに「ドル安」のバイアスが掛かっています。

米国債の金利は為替市場に敏感に反応します。日本の金融機関や保険会社は大量の米国債を保有する状況になっていますが、過去のドル安の状況で損失を軽減する為に米国債売りを繰り返しています。これは日本に限った事では有りません。

本来、ドル安バイアスが掛かる状況で、米国政府は「強いドル」を支持する発言をする傾向が有りましたが、ダボス会議でのムニューチン財務長官やトランプ大統領の発言は「ドル安容認」で、これは為替相場を通して米国債売りを助長します。(米国債金利の上昇)

■ 「債権市場と株式市場はバブルだ」と指摘したグリーンスパン ■

リーマンショックの元となったバブルを作ったのは元FRB議長のグリーンスパンですが、その彼が「現在の債権市場と株式市場はバブルだ」と指摘しています。彼は在任中「バブルかどうかは、それが弾けてみなければ分からない」と発言していただけに、「どの口が言うのか!!」と突っ込みの一つも入れたくなります。

多くの市場関係者も「バブルだ」と認識しているので、とりわけ注目する様な発言では有りませんが、やはり気になる発言では在ります。

■ 金利上昇はやはり怖い ■

トランプラリー以降、FRBの利上げに鈍感になっていた市場ですが、ふと気付くと、とんでもないリスクを取っている事に気付き始めた様です。米国10年債金利がするすると上昇し、心理的な障壁となる3%を伺う状況になると、流石に「恐怖」が芽生えます。

集団で意図的に無視してきた利上げですが、皆がチラ見し始めると矢張り気になります。

■ どうやって米国債金利を抑制するのか ■

FRBはこれまで利上げを慎重に進めて来ましたが、米国債金利の上昇はその努力を無効化します。トランプ政権発足直後にも、似た様な米国債金利の上昇が有りましたが、「根拠の無い期待」に支えられたトランプラリーの発生によって、金利上昇は抑制されました。

しかし、今回はトランプ政権発足後の実績が乏しいだけに「期待」は生まれ難い状況です。

以前ならば有事のドル買い、米国債買いが発生しましたが、リーマンショック以降は有事のドル売り、米国債売り的な動きが見られる様になりました。簡単には「有事カード」も切れません。

■ 米10年債金利が3%にタッチするまでは、荒れた展開になる? ■

先週末のダウの大幅下落を受けて、週明けの東京市場では大幅下落が必至の状況ですが、外国人投資家は円高も絡めて売りを仕掛けて来るはずです。

これに対抗するのは日銀とGPIFですが、何故か初日は模様眺めを決める傾向が強い。売りの勢いが強い間は、これに対抗しても仕方ないので、利口とも言えますが、個人投資家にとっては死活問題となります。

■ 一瞬にして風景が変わってしまった ■

少し前までは、イールドカーブのフラット化、あるいは長短金利の逆転を警戒していた市場ですが、半月程で、随分と状況が変化するものです。

この様に金利の下がり過ぎた経済は、金利の変化が本格化すると混乱を生じます。多くは実体経済とはかけ離れた「資産市場というゲーム」の中でも出来事ですが、その影響は実体経済にも、私達の生活にとっても、あまりにも大きい。