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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

スプリントネクステルがジャンク債を発行・・・再建の道は長く険しい

2018-03-01 04:44:00 | 時事/金融危機
 

■ スプリントネクステルが15億ドルのジャンク債を発行 ■

ソフトバンクのお荷物となっている米携帯電話会社のスプリントネクステルが15億ドルのジャンク債を発行しました。金利は7.625%。

スプリントネクステルを買収するにあたり、孫社長はTモバイルとの合併によって、米携帯上位2社に追随する予定でしたが、米連邦通信委員会がこれを却下します。(通信事業の寡占を招くという理由)

これによって事業計画が大きく狂ってしまったスプリントネクステルの買収ですが、ソフトバンクの資金注入によって地道に通信設備を更新し、顧客を必死に引き留めて来ました。しかし、その間にTモバイルにもシェアで抜かれ、全米4位の座に甘んじています。

スプリントネクステルは再度TモバイルUSとの合併を試みていた様ですが、これも実現していません。トランプ大統領就任直後に、8兆円ファンドの資金をアメリカに投資するというお土産を持ってはせ参じた孫氏ですが、見えない壁に阻まれている様です。

スプリントネクステルの経営状態も良好とは言えない様で、携帯事業がお金を生み出せなず、フリーキャッシュフローが不足する中でのジャンク債の発行となった様です。

■ 通信とメディアが統合し始めたアメリカ ■

アメリカでは現在、携帯(通信)会社とメディア企業の統合が進んでいます。この背景は携帯電話通信の高速化と大容量化という技術革新を抜きに語る事は出来ません。

現在の携帯電話の通信規格は4Gと呼ばれる3.5Gbps(1秒間に最大3.5ギガバイトのデータ送信が可能)程度の通信速度を有していますが、5Gが普及すると10Gbpsまで拡大されます。さらに同時の利用できる回線数も大幅に増える為、携帯電話を使った通信のデータ容量が大幅に拡大します。

現在は「定額制」でチビチビと節約しながら使っている容量を、ほぼ無制限に利用出来る様になり、通信速度も現在の2倍以上になると、携帯電話やスマートフォンの役割自体が変わる可能性が指摘されています。

現在のスマートホンは「性能の低い小型ネット端末」に過ぎません。一方デスクトップに代表されるPCは、通信速度10Gbpsの高速光回線インターネットの恩恵によって、ストレスフリーでハイビジョン画質の映像をネットで観る事が出来ます。amazon primeビデオのサービスなどがこれに当たります。

仮に5Gのサービスが容量制限無く提供されるならば、現在の家庭で提供されている有線のネット環境が、携帯電話のサービスで受けられる事になります。これにより、「放送サービス」を丸々「通信サービス」に乗せる事も可能になります。「放送」が「配信」される時代が到来するのです。

この流れを受けて、アメリカではメディア企業と携帯電話会社の統合が始まっています。AT&Tはアイムワーナーを手に入れ、ベライゾンはAOLとヤフーを手に入れています。携帯電話各社は「メディア企業」へと進化を遂げようとしています。

■ サービスの質の向上の為には巨額の投資が必用とされる携帯電話 ■

但し、これには巨額な投資を必用とします。携帯電話の基地局は通信速度高速化の為に絶え間ざる設備投資を必要が必用です。

携帯電話会社を利用者が選択する場合、次の条件を満たす必要があります。

1) どこでも繋がる
2) 高速通信が安定して使える
3) 料金が安い
4) 豊富なコンテンツが楽しめる

2)~3)の条件を満たす為には、高速通信に対応した基地局を利用者の居る地域に「広範」に「くまなく」設置する必要が有ります。

この巨額の投資に見合う利益を得る為には、多くのユーザーを抱え込む必要に迫られます。携帯電話のサービスはスケールメリットの効果が高いのです。

アメリカでは首位のAT&Tとベライゾンの2強は投資効率が良く、3位のTモバイルUSや4位のスプリントネクステルでは、投資効率が低くなり「儲け」が少なくなります。

■ 経営再建がなかなか達成されないスプリントネクステル ■

孫社長のスプリントネクステル社買収計画には、最初からTモバイルUSとの合併によるスケールメリットの拡大が前提条件でした。これが実現しない以上、スプリントネクステル社への投資は砂にしみ込む水のごとく設備投資に消えて行き、利益を上げる事が出来ません。

昨年の合併交渉では、経営権を巡りTモバイルUSの親会社のドイツテレコムが難色を示した様ですが、経営が苦しいのはTモバイルUSも同様です。米政府や米連邦通信委員会が邪魔をしなければ、この2社は何れ合併して上位2社と共にメディア企業への道を歩むでしょう。

未だのソフトバンクのお荷物となっているスプリントネクステル社ですが、孫社長は将来の利益を確信しているのでしょう。それまでは、スプリントネクステル社はジャンク債を発行してでも、通信設備の更新を続ける必要があるのです。


書いているうちに、めずらしく孫社長やスプリント社を応援したくなりました。

再掲載 サブカルチャーとしてのアニメ・・・「アベノ橋魔法☆商店街」

2018-03-01 04:37:00 | アニメ
 

ちょっと懐かしい作品の記事のコメントを頂いたので、再掲載します。

折しも『宇宙よりも遠い場所』で花田十輝が素晴らしい脚本を書いていますが、彼のキャリアの初期には、こんな作品にも参加していたのですね。

アニメなんて・・・と思われている良識的な大人の方でも、この作品の1話だけなら見れるのではないでしょうか。ただ、2話目からの逸脱具合は・・・アニメ史に残るアバンギャルドさ。それも含めてファンの多い作品です。



<ネタばれ在り>


再掲載 サブカルチャーとしてのアニメ・・・「アベノ橋魔法☆商店街」
 



■ 「1話だけ見たけど」とメディア大賞の審査員に前置きさせて受賞したアニメ ■

先日バンダイチャンネルに契約して一ヶ月1000円でアニメ見放題。
特に、私がアニメから離れていた時期の作品が見れるので、
ついつい、見てしまう・・・・。

このままでは、廃人になってしまうと気付き、解約しました・・・。

そのバンダイチャンネルで最後に見た作品が『アベノ橋魔法☆商店街』

『エヴァンゲリオン』で名を馳せたガイナックスの2002年の作品。

2002年度文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞受賞を受賞していますが、
審査員をして何故か、「一話しか見ていないが・・」と前置きさせる作品。

■ 商店街の再開発で離れ離れになる少年少女 ■

再開発の為の、古い商店が次々と取り壊されてゆく「アベノ橋商店街」。

取り壊された風呂屋の子供、小学校6年のサッシは、
未だ、営業を続ける洋食屋の娘、アルミとは幼馴染。

二人は赤ん坊の頃から一緒に育った仲。
何をするのも、何処に行くのもいつも一緒。

活発ながら、少しマニアックなオタク趣味のあるサッシと、
コロコロと良く動く瞳で、姉御肌のアルミ。

しかし、商店街の再開発で、アルミの父は北海道のホテルで働く事に。
幼馴染の二人は、当然、離れ離れ・・・。
ちょっと寂し気なサッシと、意外にアッケラカンとしているアルミ。

そんな二人は、ふとした事から、商店街の「守り神」の存在を知ります。
「亀の湯」のカメ、「グリルペリカン」のトリ、
「虎屋のきんか饅頭」のトラ、「たつ屋の下駄屋」のリュウ。
これらは、商店街の要として、東西南北を守っている。

今では残っているのは、アルミの家のトリだけ。
ところが、その大事なトリが大変な事に・・・・。
アルミの祖父、マサじいが「大事なおトリ様」の上で昼寝するネコを追い払おうとした所、
何と、物干しが壊れて、真っ逆さま・・・。
大事な「トリ」は、地面に落ちて粉々。

翌日、アルミとサッシが神社の境内で遊んでいると・・・
ラジオ体操をしているオッチャン、オバチャンがなんとキノコになってるーーーー!!

慌てて家に帰ろうと走る二人が、商店街の様子がオカシイ事に気付きます。
何と、商店街がカキワリの様に薄っぺらになっています。
そして、カキワリがバタンと倒れると、そこは・・・
何と、ドラクエさながらのゲームの世界になっていた。

■ 第一話だけで、ここ10年間のどのアニメよりも素晴らしい ■

このアニメ、1話の出来栄えが素晴らしい。

アルミと離れ離れになる事に感傷的になるサッシに対して、
アルミはアッケラカンとしています。

「住めば都、人間何よりも、達者が一番や」とか
「デモノ・ハレモノ所構わずや」とか
元気な大阪弁が、ぽんぽん飛び出してきます。

そんな二人を見守るのは、商店街の大人達。
頑固者のアルミの祖父「マサじい」、オカマバーのママ。
八百屋のオッチャン。

二人は行く先々で、大人達とポンポンとテンポの良い掛け合いを繰り広げます。
そして、そんな会話から、商店街の現状と、その人間関係が見事に説明されます。

30分かけて、商店街の成り立ちの謎と、
マサじいと、サッシの祖母の昔の恋物語が、
ちょっとしたミステリーの様に浮き上がってきて、興味をそそります。

この第一話、もう会話のテンポといい、話の展開といい、
もうホレボレする出来栄えです。
NHKの朝の連ドラだったら、高視聴率獲得間違い無しです。
少なくとも、名作「カーネーション」の20倍は面白い。

脚本、演出、作画、どれを取っても、最近10年間のアニメの最高水準です。

■ 2話目から、トンでも無い演出連発!! ■

さて、ゲームの世界に飛ばされたアルミとサッシ。

なんと、2話目からは作画が1話目と全然違う。
作画崩壊というのでは無く、話の内容に作画を合わせた感じ。
少し昔の、子供向けアニメの作画です。(ドクタースランプみたい)

どうにかダンジョンをクリアーした二人の前に小鬼が出現します。
その小鬼は二人を元の世界に戻せると言う。
魔方陣の中心で二人は、呪文を唱えます。
このシーンの作画が素晴らしい。(樋口慎二、エヴァンゲリオン、平成ガメラ)

さて二人が戻った世界は・・・・エーエーエー!!
何とスペースコロニーの中。
それも、メッチャクチャいい加減な作画。
アルミもサッシもムチャクチャデフォルメされて、
さらに、画面から飛び出すくらいに動き回る。
サッシは宇宙に向って立ちションするし、
アルミは茂みでオシッコするし、オイオイって、
おーーーと、アルミのパンツが小鬼に盗まれた!!

・・・おいおい、どうしちゃったんだよ、このアニメ。
もう、アヴァンギャルドを通り越してます。

この先、二人は『初め人間ギャートルズ風』の恐竜の世界、
『カサブランカ』みたいなハードボイルドな世界、
『美少女オタクアニメ』さながらの世界へと彷徨います。

そのいずれも、過去のアニメや実写作品のパロディーと言うかオマージュで溢れています。
でも、ムチャクチャ・・・。

「作画崩壊」なんて気にする軟弱オタクにはとても付いて行けないトンデモ展開です。

■ 安倍 晴明の道ならぬ恋と友情の物語だった ■

ところが『美少女オタクアニメ』の世界からサッシだけが平安時代の京都に連れて行かれます。
彼を導いたのは『安倍 晴明』。

これまでのハチャメチャな世界でも「魔導師」やらなにやら
怪しいキャラで登場していた人物でした。

彼は「アベノ橋商店街」と、自分の過去にまつわる重要な事実を告げます。
平安時代の彼と親友、そしてその妻の物語が、
現代の「アベノ橋商店街」の物語に繋がっているのだと。

自分とマサじいと、サッシの祖母の関係こそが、
「アベノ橋商店街」を作るきっかけだったのだと・・・。

■ ある重大な事実を回避する為に、元の世界に戻れないサッシ ■

サッシは晴明に付いて陰陽道を学びます。
って、「誰でも成れる、陰陽道養成ビデオ」をぽんと渡されただけですが・・・。

さて、陰陽道を身につけたサッシは、
元の世界に戻るべく、アルミと合流します。

そして、二人が辿り付いた世界は・・・エー、又別の世界・・・。

どうやら、サッシは元の世界に返りたくないのだとアルミは気付きます。
それは何故か・・・アルミが北海道に引っ越すからなのか・・。

実は最終話に向けて、意外な事実が明らかになります。
その事実をアルミから隠す為に、サッシは世界を彷徨っていた。
そして、その事実と向き合う事こそが、サッシの成長を意味しているのです。

はたして、サッシはアルミに事実を告げられるのか・・・。
ハチャメチャだと思っていた世界の背後は、意外にシリアスで、
最終話で、見事に世界は円環します。
アルミもサッシもちょっとだけ成長して。

■ サブカルチャーとしての自意識 ■

監督の山賀博之はGINAXの社長。

『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(1987年)という硬派なSF劇場作品を制作する為に
山賀博之が作った会社がGINAXです。

その後、『ふしぎの海のナディア』や『トップをねらえ!』など庵野作品で脚光を浴び、
『新世紀エヴァンゲリオン』でその名声を不動の物とします。

ところがGINAXは変な会社です。
サンライズの様に、エヴァの路線をひたすら繰り返す事も無く、
『アベノ橋魔法☆商店街』の様な作品や
『天元突破グレンラガン』(2007年)の様な野心的作品を発表してゆきます。

近年は『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』(2010年)のハチャメチャさで
ファンの度肝を抜きました。

近年は『ダンタリアンの書架』(2011年)や 『めだかボックス』(2012年)を
製作したりしていますが、これはあくまでも経営上理由からでしょう。

基本的に、トンデモ作品で日本アニメを変革し続けるのがGINAXという会社です。

彼らの作品を見ていると、アニメが「サブカルチャー」であると痛感します。

決して「売れる為」に作るのでは無く、
「文化」を気取るアニメに、カウンターパンチを喰らわす為にアニメを作る。
(勝手な想像ですが)

だから『アベノ橋魔法☆商店街』にしても1話に見られる完成度を有しながら、
あえて、それを自ら壊す快感に、抵抗できずにズタズタにしてしまう。

このある意味、ダダイスト的な攻撃が、評価の分かれる所ですが、
私は現代のコジンマリとまとまったアニメより、
私達が育った時代のアニメの自由な雰囲気を継承するGINAX作品は好きです。


山賀博之、佐藤竜雄、樋口真嗣、花田十輝、庵野秀明など、
今をときめくビックネームがちょこちょこと顔を出すクレジットを見るだけでも
この作品を見る価値は充分あるかと思います。



<再掲載 終わり>