■ 政治任用が忖度を生む? ■
森友問題の本質は、役人の人事を「内閣人事局」が決定する「政治任用」にある事は明らかです。人は誰でも出世を望み、その為には人事決定権を持つ者に「忖度」します。
池田信夫氏が「政治任用は先進国では当たり前で、政権交代で役人も大きく入れ替わる」と書かれていますが、当然、これらの先進国でも「忖度」は発生します。ただ、雇用が流動的なので「無理な要求」に対して退職で抵抗する事が可能です。
日本の役人は「〇〇年入省組」などと呼ばれる様に横並び意識が高く、同期の出世頭が事務次官になると、その同期は退職して天下るという慣習が長らく続いていました。要は、退職後まで面倒を見てもらう為には、政府に逆らえない。これが「忖度」を生む下地になっているのでしょう。
■ 公務員の雇用が固定的な日本では「政治任用」は適さない ■
「忖度」は法的に責任を問えるものではありませんから、これを法律で縛る事は出来ません。欧米の様に「気に入らなければ辞めればよい」という社会システムとなっていない以上、日本における公務員の政治任用は「忖度」を生み続ける温床となります。
ですから、私は内閣人事局の権限をある程度抑制するシステムが必用だと考えます。例えば、内閣が指名出来るのは事務次官のみにするとか・・・。
そうすれば、政治家の無理な要求には組織で抵抗出来ます。事務次官が部下に命令しても、部下がそれを骨抜きにしてしまえば良い。
かつての日本の官僚制度はこうして政治に対抗していましたが、政治の指導力が及ばないとして現在の内閣人事局が作られました。ところが、その結果が「忖度」どころか「改竄」まで生み出してしまった。
問題がどこに在るかは一目瞭然です。
■ 「改竄問題」と「忖度」は別に考えるべき ■
メディアでは「安倍首相に忖度して改竄した」という表現が使われたりしていますが、「改竄」と「忖度」は別問題と考えるべきです。
1) 公務員は国民の税金を付託されている
2) 税金が正しく使われたかチェックが必用
3) チェックは行政文書の公開によって可能
4) 情報公開制度を法制化する
従来は役人のモラルが行政文書の改竄を許しませんでしたが、政治任官の元ではモラルで抵抗できない事態も発生します。それを防ぐ為に情報公開制度が整備され、行政文書の保管が法律的に義務付けられました。
「法治国家」では「法律を守らせるシステム」が設計されます。行政文書の管理に関しても、アメリカでは多くのスタッフがこれに関わっています。それに比して日本はスタッフが圧倒的に足らず、チェックが行き届きません。
今回、財務省が「改竄」を実行した背景には、「法律を守らせるシステム」の脆弱性があったと私は考えます。従来は「役人のモラル」がこれを補っていましたが、モラルで抵抗出来ない圧力を受けるとシステムの問題点が露呈します。
■ 「のり弁」は情報公開とは言えない ■
今回の「改竄」で行政文書の管理とその公開の在り方が注目されていますが、そもそも国会や各地の議会で行政文章の公開を要求すると「のり弁」が提出される事が野放しされている方が問題です。
加計学園の問題に絡んで今治市でされた出張記録の情報公開でも、一回目に提出された資料は「のり弁」でほとんど「公開」の意味を成していませんでした。さらに2回目に提出された資料は、明らかに削除された箇所が有り「改竄」されていた・・・。
二回目の「改竄」は内閣府の「問い合わせ=指示」によるもので、悪質性が高い。しかい、一回目の公開が「のり弁」で済まされてしまうから起きた「改竄」とも言えます。
「のり弁=黒塗り」の理由は個人のプライバシーに関わるなど様々ですが、現状は「都合の悪い箇所は塗りつぶせば良い」となっており、「隠蔽」がおおっぴらに横行しています。
これは情報公開法がザル法だから起きる事で、議会にもっと強い権限を持たせて黒塗を許さない様な法改正をすれば問題が解決します。