■ 1ドル60円? ■
ゴールドマンサックスのストラテジストが次に金融危機が発生すれば1ドル60円になると予測しています。
今は日銀が異次元緩和を継続し、アメリカが利上げをしているのでドル/円は円安のバイアスが掛かっています。しかし、リーマンショック後に75.54円まで円高が進んだ様に、大きな金融危機が発生すると為替は大きく円高に振れます。
現在のドル/円は111.4円ですが、実質実効為替レートは77.5円。この差が大きい程、歪も大きい。そして、危機が発生すると歪が一気に解消する。
金融危機が発生すると以下の要因で円高が発生します
1) 米国の金利低下でドル安になる
2) 円キャリートレードの巻き戻しで円高に振れる
3) 日本の金融機関などが米国投資を手じまいして資金を円で日本に持ち帰るのでドル安円高に
日本国内の金利がゼロに張り付く中で、日本の金融機関や生保各社、年金資金は大量のドル資産を保有しています。これが円売りドル買いの圧力になって、現在の為替レートには「円安」の歪が相当に溜まっています。大きな金融危機が発生すると、これが一気に解消され、勢い余って大きく円高に振れるのです。
■ 為替ヘッジをしているというゆうちょ銀行 ■
前出のゴールドマンサックスのストラテジストは、危機発生時に大きな損失を抱えるであろう金融機関の例とすいて、農林中金とゆうちょ銀行を挙げています。
ゆうちょ銀行の海外投資は為替ヘッジが掛けられているものがほとんどの様ですが、急激な為替市場の変動や、債券価格の低下(債券金利の上昇)に際しては、為替ヘッジをしていたとしても損失が発生する事には注意が必要です。
為替ヘッジの方法には2種類有ります。
例1)10年もののアメリカ国債を購入する為に10年先の為替を予約する
ヘッジコストは日米の長期金利差
米国債金利 2.5%
日米金利差(為替ヘッジコスト) 2.5%
この場合、10年後の受け取り利息は、そのまま為替ヘッジコストと同じになる。
米国債に投資するメリットは無くなる。
例2)3カ月先の為替ヘッジをロールする(更新し続ける)ケースが多い
為替ヘッジには反対取引の相手が必要です。10年先の為替相場は予測しにくいので
多くの場合は3カ月など短期の取引が主流となる様です。
仮に金利2.5%の米10年国債を保有していて、金融危機が発生したとします
1) 米国債金利は上昇(価格低下)・・・含み損が発生
2) 米国債を売る・・・損失が確定
3) 3カ月前に確定した円の価格より円高(ドル安)が進行
4) ヘッジコストが2.5%を超えて上昇
リスクが発生した時には債券は価格が下がり、債券の保有者は売却するか、保有し続けるかの選択を迫られますが、大方の投資家は売却を選択せざるを得ません。
異次元緩和による円安は一時125円程度まで進行しますが、2015年末頃から円高基調に変化していますが、これはFRBの利上げによってヘッジコストが上昇した為で、生保などが米国債投資を一部手じまいしたり、円キャリートレードの巻き戻しが発生した事が原因。
ゆうちょ銀行や農林中金などは、保守的な金融機関ですから、外国債券の取引は当然為替ヘッジを掛けていますが、大きな危機が発生すると、ヘッジし切れずに損失が拡大します。
■ 高格付けと言えども棄損する ■
ゆうちょ銀行や農林中金は大量のアメリカのCLO(ローン債務担保証券)を保有していますが、格付けは投資適格なものを厳選しているハズです。これらは、大きな金融危機が発生しない限りは安全性が高い。
しかし、リーマンショックの様な危機が発生すると、安全と思われていた企業の中にも経営破綻する企業が増えて来ます。サブプライムローン同様に、多くの債権をまとめているCLOの様な金融商品では、どれだけ損失が発生したのか切り分けが難しく、実際の損失以上に金融商品の価格が暴落します。
平時の格付けなどは〇〇ショックと呼ばれる様な大規模な金融危機に際しては何ら意味を持たないのです。
ただ、投資は「〇〇ショックは起こらない」事を前提としていますから、ゆうちょ銀行も農林中金も「リスクは無い」と主張する事が出来るのです。
■ リスクを取らざるを得ない高コスト体質 ■
ゆうちょ銀行や農林中金、経営規模の小さな地銀などが海外証券のリスクを積み上げています。
これらの金融機関に共通しているのは「高コスト体質」。安定した収益基盤を持たない一方で、リストラも限界に達していてコスト削減が進まない。そこで、ある程度のリスクを承知で、海外のリスク投資の割合を増やすしか、利益を上がる事が出来ない。
■ ゆうちょ銀行に1000万円以上預けるのは危険 ■
4月からゆうちょ銀行の貯金限度額が2600万円までに一気に倍増しますが、貯金の保証額は民間銀行と同様に1000万円までです。
「ゆうちょは政府の金融機関だから、貯金は全額保証されるだろう」というのは全くの妄想に過ぎず、もし政府がゆうちょ銀行の預金者を救済するならば、破綻した中小の金融機関も同様に救済しなくは成りません。
世界の趨勢は、「預金者もリスクを負う」という方向で一致していますから、ゆうちょ銀行だけが例外となる訳は在りません。
ゆうちょ銀行は「預金」では無く「貯金」である・・・そう閣議決定する可能性は否定しませんが・・・。安倍政権は何でもアリの政権ですから・・。