■ 行ってきました聖地巡礼 ■
先週の土曜日に飛騨高山で親戚の結婚式があったので、ついでにちょっと足を延ばして来ました。
上の写真で「〇〇だ!!」と思われた方も多いかと思いますが・・・「上は名古屋駅の11番線だけど、下は飛騨古川駅の2番線じゃないか!!」と見抜かれた方は、アニメファンというよりは鉄道ファン。
そう、本日お送りする聖地巡礼は、1184万2864人の方がご覧になり、興行収入154億1448万8300円(10月16日時点)という空前の大ヒットとなっているアニメ映画『君の名は。』の聖地、
行ってまいりました。
ところで、「200億円は達成確実」とか「社会現象」とまで言われていますが、現時点の興行収入は邦画歴代5位の『崖の上のポニョ』を抜くのは確実で、196億の邦画歴代2位の『ハウルの動く城』も抜きそうです。さすがに『千と千尋の神隠し』の304億には届かないとは思いますが・・。
ジブリ無き後?!、映画会社やTV局は、ジブリ難民を如何に掴むかでしのぎを削っていましたが、大方の予想に反して新海誠の『君の名は。』が、大金鉱を掘り当てました。それは、ジブリが『おもひでぽろぽろ』や『耳をすませば』で挑戦しながらも大ヒットに繋がらなかった「青春映画」というジャンルから生まれた事には大きな意味が在ります。
アニメを見て育ち、「オタク」という言葉をポジティブに受け止める30代半ば以下の世代は「良作」であれば、アニメと実写映画を区別することはありません。生活の中に漫画やアニメが普通に存在し、友達との会話も「昨日の〇〇見た?」なんて感じでアニメの話題が自然で出てくる世代が中心になって作り上げた大ヒットですが潜在的な需要は小さくは無かった。
『時をかける少女』『サマーウォーズ』で細田守が一番近いポジションに居たはずですが、『おおかみこどもの雨と雪』や、『バケモノの子』を作っている間に「トンビに油揚げをさらわれた」感じになってしまいました。新海誠って、決してメジャー受けする作風では無かったですから・・・。
『君の名は。』の影響は大きく、今までジブリ以外の作品でアニメ映画に足を運ぶことの無かった中高年の方にも、「アニメでもこんな作品が作れるんだ」と認識させた功績は絶大です。この勢いで『この世界の片隅に』に中高年の方が足を運んで下さると、日本のアニメ文化の深みが一気に増すのでしょうが・・・どうなるか・・・。
おっと、話が聖地巡礼から大きく逸れてしまいました。
■ 小さな観光地に若者が大勢やって来た ■
『君の名は。』で三葉と入れ替わった時の風景の記憶を頼りに瀧君が訪れたのは「飛騨古川」。ここから程遠く無い処に彗星の欠片の落下で消滅した架空の町「糸守町」があります。
飛騨古川は高山本線で高山から4番目の駅です。名古屋から特急飛騨号で2時間40分以上掛かりますから、決して行きやすい場所ではありません。
白壁の土蔵が並ぶ街並みの中を清らかな堀が流れ、錦鯉が悠々と泳ぐ素敵な観光地ですが、高山市街や白川郷に比べると地味でマイナーな観光地です。以前、NHKの朝の連ドラの舞台になっていたのを覚えている方もいるでしょう。
そんな古川に若者達がチラホラと聖地巡礼に訪れますが、高山市内にも飛騨市内にも映画館は1軒もありませんから、地元の方の多くは何故急に若者が増えたのか首を傾げた事でしょう。
彼らは電車を降りると、なぜな待合室にある飛騨牛のマスコットを大喜びでカメラに収めます。
そして、駅前で古川タクシーを見つけると「本当にあるんだ!!」と驚いて、これまたカメラに収めます。
さらに不思議な事に駅前から古い町並みに向かうと思いきや、線路にそって進み、木造の渡線橋を一目散に目指します。
渡線橋の中央、線路の真上でカメラを構えると、喜々として、今しがた自分が乗って来た列車をカメラに収めようとしますが、だいたいは、列車は発車した後の空っぽのホームを見て落胆します。しかし、彼らは何と、次の列車を根気強く待ち続け、特急ひだ号が1番線(左側のホーム)に入線すると、大喜びでシャッターを切ります。
こんな不思議な若者達のために、いつしか足台のベンチが設置され、高山線の時刻表が張られ、撮影のガイドになる様に映画のカットのカラーコピーが備え付けられました。
線路に降り立った乗客は、なぜか渡線橋の上からホームを狙うカメラの列を見てビックリします。有名人でも乗り合わせていたのかと・・・。
こうして、運が良ければ映画のカット同様に特急ひだ号が1番線に入線した写真をカメラに収め、若者の一団はようやく渡線橋を後にするのでした。
次の聖地巡礼地に赴く予定の私は、空っぽのホームをカメラに収め、それでも満足してこの場を離れました。
謎の一団は、駅前も戻ると、「ほんと、そのまんまダワーーー。」などと感嘆しながら、ひとしきり記念撮影に没頭します。
さあ、ようやく駅前を離れ市内観光かと、お土産屋のじいちゃんや、蕎麦屋のばあちゃんがニヤリとした時、あろうことか、若者達は古い町並みを目指さずに、道路を右折してずんずんと確信を持った足取りで進んで行きます。
彼らの目指したのは、なんと「飛騨市立図書館」。小さな町とは思えない立派な図書館ですが、彼らは受付で「すみません、写真を撮らせていただいて宜しいですか?」と丁寧に尋ねます。すると、不思議なことに図書館のおねえさんは笑顔で「どうぞ」と言ってくれるそうな。さらに、図書館の中には特設コーナーまで在るらしい・・・。
こんな不思議な光景が続くうちに、町の人々は、自分達の町がアニメ映画の舞台になっているという噂を耳にする。『君の名は。』という作品らしい。しかし、市内には映画館は一つも無い。隣の高山市には以前3つも映画館があったが、今では全部潰れてしまった・・・。そのうちに町の若者達が富山まで映画が見に出かけて行って、興奮して帰って来た。
「大変だ、古川が映画に出とるさぁ・・・」
「そら、こわいさぁー」
「いやー、じいちゃん、あれは見ないとだしかんなぁ」
「でも、富山まではいけんなぁ」
「そーやなぁ・・。市民会館で上映会やってくれんやろか?」
「市にわしらで嘆願したらどやろぅ」
「あーれ、こわいさぁー、本当に見れんのやろうか・・・」
(飛騨弁の監修:カミサン)
こうして、市に沢山の要望が寄せられ、11月6日に1日だけの上映会が決まったそーな。
■ 高山市・飛騨市では聖地巡礼にビックリ ■
まあ、上の話は地元の人の話を大げさにアレンジしていますが、実際に高山市や飛騨市では『君の名は。』の話題で持ち切りです。
上の写真は家内の知り合いから携帯に送られて来ましたが、角川の駅の近くにある小さなバス停の周辺で車が渋滞しているらしい。聖地巡礼って普通は「都会の若者がアニメの聖地を訪ねる」ものですが、高山市や飛騨市では地元の人たちが一躍有名になった町のスポットに押しかけているらしい・・・。
そういえば、新宿発の高山行の高速バスは、以前は高山終点でしたが、金曜日に乗ったら「飛騨古川行き」になっていました。これも聖地巡礼効果なのでしょうか。
地元の濃飛タクシーは聖地巡礼タクシーを運行しています。聖地が散在していて、バスや鉄道を乗り継いで行くと聖地を巡るのに時間が掛かってしまうから、それなりの需要が見込めるのかも知れません。
■ 飛騨古川はとっても良い街でした ■
私が気になるのは、聖地巡礼に来た若者が、地元経済に貢献しているかどうか・・・。聖地だけ駆け足で見て、さっさと電車に乗って帰ってしまうだけでは、経済効果も限定的です。
そこで、これから飛騨古川を訪れる方に街のご案内など少し。
飛騨古川は高山の奥座敷とも呼ばれ、瀬戸川添いに白壁土蔵の古い町並みが残されています。瀬戸川の流れの中を錦鯉が悠々と泳ぐ姿は、平成という時間を一時忘れさせてくれます。
お土産にお勧めは日本酒です。町中には3軒の酒蔵があり、様々な趣向を凝らした日本酒を醸造しています。
こちらはの「蒲酒造」さんは家内の高校の同級生の実家。時間が早かったので、お店が開く前でした。(残念)
すぐ近くで軒を並べる渡辺酒造さんは「蓬莱」で有名です。端麗辛口とは正反対の、重辛口。しかりとした飲み心地で、地元のタケノコの煮物などに良く合います。私は「どぶの上澄み」なるものを買ってみました。文字通り、どぶろくの上澄みですが、ねっとりと甘さが口に広がった後、ピリっと辛みの刺激がやって来ます。飲みすぎに注意のアルコール度17%。飲みごたえのいある甘口酒でした。今時の日本酒ですから当然香りもふくよか。
街の名物は「起こし太鼓」。
ネットに動画が紹介されていました。
軒先に唐辛子が吊るしてあるのは、何かの魔除けでしょうか・・・。
お土産屋さんや、飲食店にはポスターが張られていて、聖地巡礼者を大歓迎してくれる事間違い無し。
是非、皆さんも秋の飛騨路にお出かけになられては。ここの所の冷え込みで紅葉も見ごろを迎える事でしょう。(高山市の最低気温は2℃でした)